【恋愛】メイドと執事の立ち話
庶民も集う広い公園で、幼いお嬢様が無邪気に遊んでいます。
奥様と旦那様も一緒になって笑っていて、私達使用人は遠くから見守るだけ。
「よろしいのでしょうか? 奥様や旦那様のお手を煩わせてしまって」
「お二人のご意向ですから。たまの休みくらい一家団欒と過ごされたいとのことで」
普段はお嬢様の生活を支える私と執事長ですが、今日ばかりはお邪魔虫。
でも、お嬢様が幸せなら何よりです。
……少しだけ寂しくもなりますが。
「憧れますね、家族って」
ポツリと零れた私の言葉に、執事長は「おや?」と首を傾げます。
「ご結婚の予定はないんですか?」
「まさか。そもそも仕事漬けで相手もいませんよ」
「そうですか。それは良かっーー」
と、言いかけて、視線を反らす執事長。
聞きようによっては大変失礼な言葉のように捉えられるでしょう。
ですが、彼が優しい方だと知っている私はその真意を……分かってしまいます。
「……すみません、今の言葉は忘れてください」
普段は凛々しい表情を崩さない執事長なのに、耳まで真っ赤にして。
ですが、私も咄嗟のことでどう反応していいのか分からず。
「何か言いました?」
「……いえ、何も」
気づけば私も少しだけ頬が熱くなっていました。
【お題:家主 テーマ:使用人同士の恋 文字数:500文字】




