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【コメディー】詭弁論者の宿題

「睡眠欲は人間の三大欲求にも数えられるほど強力な欲望だ。人間、いや生物である以上、この強固な生理現象に抗うのは不可能なこと。すなわちこれを完璧に制御できる者はもはや生命体とは呼べないだろう」


 頬に机と涎の跡をつけたまま、姉が雄弁に語る。

 先程までの居眠りが嘘のような威勢の良さだ。


「いわば寝ずに宿題をせよと命ずることは、『生命活動を止めろ』という命令に等しいのだ!

 当然、生命活動を停止してなお存続する手法は存在せず、その命令は『死』をもってしか成し得ない!」


 捲し立てる彼女は、最後に「それとも」と私に語りかける。


「美優、あなたは実の姉に「死ね」と言うつもりなの? 宿題を終わらせるという欲望を満たすためだけに」


 弁明が終わり、部屋が静寂に満たされる。 

 当の姉は何故か誇らしげに胸を張っていた。


 時計を見る。深夜3時46分、か。


 うん、………………限界だ。


 私は姉の頭を鷲掴みして、寝不足の目でギョロリと睨む。


「誰がアンタの宿題手伝っていると思ってんの? シバくぞ」

「アッハイ、すみません」


 結局、姉は泣きながら自らの宿題を再開するのだった。


 てか妹に宿題手伝ってもらうとか、恥ずかしくないのかコイツ。さっさとやれ、タコが。

【お題:特になし テーマ:ガチギレ 文字数:500文字】


美優と姉 その5


※その1~4は姉妹作『徒然なるままに500文字小説』に掲載されています。ぜひこちらもどうぞ。

https://ncode.syosetu.com/n8803ez/

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