【コメディー】エルフと秋の日本文化
鮮やかな秋色に染まる山道。
視界いっぱいに広がる紅葉の絨毯に、また一枚、ヒラヒラともみじの葉が舞い落ちて――
その横を一本の矢が掠め、地面に突き刺さった。
「……くッ、外したか! だがコツは掴んだ。次こそは」
「バカバカバカ! 何やってんだバカエルフ!」
次弾の矢を番える自称異世界人を、俺は全力で羽交い締めして止める。
油断した! この脳筋女、まさかハイキングに武器を持ち込んでいたとは!
「離せ! 貴様に森の狩人の実力を見せてやるというのに、なぜ止める!」
「ここは日本だぞ! 誰かに当たったらどうする気だ!」
「そんなヘマするか! いいから私の腕を信じろ!」
俺の拘束を振り切った彼女はすばやく弓矢を構え直して放った。
そして今度は見事獲物に命中!
と同時、遠くから届くパトカーのサイレン音。
しまった、まさか誰かに通報された?! いや別の事件の可能性も……。
とにかくこの場を離れないと!
「見たか! 言ったろう、私に狩れぬ獲物はないと!」
「マズイマズイ! 警察が来る前にさっさと逃げるぞ!」
「何を慌てる? 遊猟はこの国の文化なのだろう?」
「『もみじ狩り』は狩猟の一種じゃねえ!」
その後、自称エルフに日本文化を叩き込むのに1時間以上を要した。
【お題:秋 テーマ:狩猟民族によるもみじ狩り 文字数:500文字】




