【ローファンタジー】ジャッジメント・オブ・ザ・キューピッド
「正気ですか天使長!? 人の運命を何だと思っーー」
私の訴えも虚しく、天界との通信は無情にも途絶えてしまった。
私達キューピッドの仕事は人々を幸せな恋路へ導くことだったはず。
なのに、上司からの命令は『ノルマ優先』の一点張りだった。
「なによ! 結局、カップルさえできれば後はどうでもいいんじゃない!」
イラつく気持ちを吐き出しながら、今日のターゲットに視線を戻す。
無垢で愛らしい女性が爽やかな美男子と会話している。
私に課せられた任務は彼女のハートを魔法の矢で射止め、恋に落とすことだ。
けど私は知っている。
あの男が結婚詐欺の常習犯であることを。
それでも私は矢を放たねばならない。上司にはそう言われた。
……だったら、
『ごめんね、実は今借金で困っ――っぐ!』
『え? 陽一君どうしたの!?』
私の放った魔法の矢は彼女のハートの横を抜け、
男の心臓を貫いた。
途端、男が胸を押さえて倒れ、周囲が慌てて救急車を呼ぶ。
人間には心臓発作に見えるようだ。
悪いけど、今の私は恋の天使じゃない。
あなたを裁き、天国へ導く天使となるわ。
「あとは生きるか死ぬか、あなたの運命力次第よ」
どうせなら生きて改心してよね。
私の天界での評価が落ちないように。
【お題:天使 テーマ:キューピッドの堕天 文字数:500字】




