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【ハイファンタジー】異世界で芽吹く航空力学の萌芽

 獣人族の少年は、今日も草原で空を見上げる。

 青く透き通った空は地平線の向こうまで続いていて。

 城壁にも、海にも、山にも縛られず、どこまでも自由な空間が広がっていた。


 その中を泳ぐように、小さな点の群れが横切る。

 鳥獣族の“渡り”だ。


「おぅい、キミ達どこに向かうんだい?」


 まるで隣の友人にでも話しかけるように、少年はぼんやりと呟く。


 腕を高く伸ばせば、彼らに手が届く気がして。

 けれども、実際はあまりに遠い存在だ。


 吹き抜ける風が心地よい。

 このまま風に乗って、彼らとともに旅に出れたらいいのに、なんて思う。


 自分の背中に翼はない。

 魔法も使えなければ、運動能力も乏しい。

 それでも、彼の中に諦めるという選択肢はなかった。

 少年の夢は、いつしか抑えようもないほど大きく膨らんでいたのだ。


「待っててよね!」


 少年は立ち上がって叫ぶ。己の夢を言葉に乗せて。


「ボクもいつかそっちに行くから!」


 鳥獣族の群れが見えなくなるまで、少年はずっと手を振り続けた。



 地球ではライト兄弟が初めて有人動力飛行を成し遂げた西暦1903年から数百年後のこと。

 遠く離れた異世界で、少年は夢を抱いて進み出す。

 地上の者が空に抱く憧れは、時空を超えても色褪せない。

【お題:旅、鳥 テーマ:技術の収斂進化 文字数:500文字】

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