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9.昇級

カナトたちはギルドへと戻る道を歩いていた。戦いを終えた後の疲労はあったものの、特にカナトは驚くほど平然としていた。オルトとナナは、そんな彼を興味深そうに見つめながら歩いていた。


「それにしても……とんでもない戦いだったな。B級冒険者でも逃げ出す相手と、あんな風に戦えるなんて」


オルトが腕を組みながら呟く。ナナも大きく頷いた。


「普通ならあんなのに立ち向かおうなんて思わないよ。カナト、本当に新人なの?」


「まぁ、バルさん...師匠に鍛えられたんでな」


カナトが肩をすくめて答えると、オルトとナナは納得したように頷いた。もしかするとバルさんは有名な冒険者なのかもしれない。


ギルドへと戻ると、受付の冒険者たちが彼らを見てざわついた。特にB級の冒険者たちは、地竜との遭遇について周囲に語っていたため、カナトたちの活躍がすでに広まりつつあった。


「オルトさん、ナナさん、お帰りなさい。報告をお願いします」


ギルドの受付嬢が書類を準備しながら彼らを迎えた。オルトが簡潔に状況を説明し、地竜との戦いの詳細を報告すると、受付嬢は目を丸くした。


「A級モンスターが出現したなんて……ギルドマスターに報告しなければなりませんね」


「そういうことなら、カナトの昇級もすぐに考えてくれよ。今回はこいつが居なければ死んでたかもしれない。少なくともこいつがF級なのはおかしいだろ?」


オルトがそう言うと、ナナも即座に頷いた。


「うん、私も推薦するよ。実力がF級の範疇じゃないのは明らかだし、カナトはA級に上がってもいいくらい強いと思うよ」


「……マジか?」


カナトは少し驚いた。まさか、ギルドに入ったばかりで昇級の話が出るとは思っていなかったのだ。


「推薦が二人もいるなら、問題ないと思います。ただ、自分以上のランクに推薦することはできないのでC級までの昇級となります。処理には時間がかかりますので、休憩してお待ち下さい。」


受付嬢が微笑みながら言った。


それからしばらくして、カナトは正式にC級冒険者として登録された。


「おめでとう、カナト!」


「これでようやく正式な冒険者らしくなったな」


オルトとナナが嬉しそうに声をかける。カナトはまだ実感が湧いていなかったが、それでも少し嬉しかった。


「それでカナト、今泊まってる宿ってどこだ?」


オルトが尋ねると、カナトは簡素な旅人宿の名を挙げた。オルトはため息をつき、ナナは眉をひそめた。


「なんでそんな安宿に泊まってるんだよ。C級になったんだし、もう少しまともな宿に泊まってもいいんじゃないか?」


「そうそう、それに王都にはいい宿がたくさんあるのに」


「でも金が……」


「そんな心配いらないって。ちょうどいい宿を知ってるから案内するよ」


オルトとナナに押し切られる形で、カナトは彼らが勧める宿へと向かうことになった。


案内された宿は、外観こそ普通の建物だったが、中に入ると清潔感があり、落ち着いた雰囲気が漂っていた。


「ここなら、C級の稼ぎでも十分やっていけるし、何よりご飯が美味しいぞ」


オルトが胸を張って言う。


「それなら、しばらくここを拠点にするか……」


カナトはそう呟き、新たな拠点に落ち着くことを決めた。


こうして、新たな環境での冒険者生活が本格的に始まるのだった。



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