5.旅立ちの一歩
陽の光が森の木々を照らし、風が葉を揺らす。ここに来て数ヶ月、カナトはバルの下で地獄のような修行を積んでいた。
朝は日の出と共に始まる。バルは様々な武器を持ち出し、カナトに叩き込んだ。「剣だけじゃない、斧も槍も、敵の武器すらも扱えるようになれ」そう言われ、カナトは何度も何度も倒されながらも起き上がり、武器を振るった。木剣は何本も折れ、手はマメだらけになった。だが、それでもカナトは前へ進んだ。
昼は森での実践。魔物と戦い、罠を仕掛け、追跡し、狩る。最初は何度も失敗し、バルに助けられた。しかし、次第に獲物の動きが読めるようになり、少しずつだが独り立ちできるようになっていった。
夜は学びの時間だった。バルは焚火を囲んで魔物の生態、植物の効能、毒の見極め方、さらには地図の読み方まで徹底的に教えた。カナトは眠気に襲われながらも、知識を吸収し続けた。
こうして、鍛冶の修行と戦闘の修行をこなしたカナトはあらゆる武器を作り出し、それを完璧に扱うことができるようになっていた。
そして今——
「お前の修行は、これで一区切りだな」
バルがそう言いながら、一枚の黒いマントを差し出した。
「これは……?」
「俺が昔使っていたやつだ。今はお前のほうが似合うだろ」
カナトはそのマントを受け取った。少しほつれがあるが、丈夫な布地で、まるでバルの意思が宿っているかのように思えた。
「……ありがとう、バルさん」
バルは微笑み、「さあ、行け。お前の道を歩け」と言った。
カナトは黒マントを翻し、森を出る。目的地は、冒険者ギルド。ここからが本当の始まりだ。