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15.竜人の再来

オルトとナナは、カナトが鍛冶場に戻っている間もギルドでの業務をこなしていた。ギルド本部は日々多くの冒険者たちが行き交う活気に満ちていたが、その平和は突如として破られることになる。


その日、王都の冒険者ギルド本部の外が不穏な空気に包まれた。遠方から地響きのような振動が伝わり、ギルドの周囲が一気に緊張感を帯びる。オルトとナナが外に出て様子を見ようとした瞬間、巨大な影が街の上空を飛び、ギルド本部の壁を破壊しながら降り立った。


「っ……! まさか、あいつが……!」


ナナが驚きの声を上げる。目の前に現れたのは、人型でありながら龍のような特徴を持つ異形の存在——すなわち、S級脅威と断定された「竜人」だった。鋭い爪を持ち、強靭な鱗に覆われたその姿は、まさに脅威そのもの。周囲の冒険者たちは武器を構えたが、その威圧感に足をすくませる者も少なくなかった。


「……最悪だな。こんなところに現れるなんてよ。」


オルトは剣を抜きながら舌打ちする。しかし、自分たちの力では勝てる相手ではないことも理解していた。竜人はギルド本部の壁を引き裂きながら、咆哮を上げる。


「ギルド本部が……!」


ナナが焦燥の色を浮かべる。ギルド職員やB級以下の冒険者たちは避難を開始したが、逃げ遅れた者も多かった。そんな中、突如として空気が変わる。竜人がギルドの奥へと進もうとした瞬間、鋭い光がその進行を遮った。


「——おっと、ここから先は通さないぜ。」


軽快な声と共に現れたのは、S級パーティ「五色」のメンバー、リーダーである紅のリュウガと蒼のヴァイス、碧のリンカだった。


「随分と派手にやってくれるじゃねえか。俺たちのギルドを壊すのは、さすがに気に食わねぇな。」


三人は剣や杖などそれぞれの武器を構え、竜人を包囲する。


「五色が……動いた!」


ギルドの冒険者たちが歓声を上げる。S級冒険者たちは、まさに絶望の中に差し込む光だった。


「——いくぜ、ヴァイス!」


「おう!」


真っ先に動いたのはリュウガとヴァイスの二人だった。二人は同時に地面を蹴り、竜人に向かって攻撃を仕掛ける。ヴァイスの剣が水流のように滑らかな軌跡を描きながら竜人の腕を狙い、リュウガの大剣が炎を纏いながら荒々しく打ち込まれる。しかし——


「……硬い!」


ヴァイスの剣が竜人の鱗を弾き、リュウガの大剣でも大きなダメージを与えられない。竜人は二人の攻撃を受けながらも反撃に出た。鋭い爪がヴァイスを狙い、尾がリュウガへと襲い掛かる。


「——甘い!」


ヴァイスは見切ったように一瞬で後退し、リュウガは尾を大剣で受け止めようとした。

が、リュウガはその瞬間に吹き飛ばされた。


「こいつ、触れるよりも先に衝撃が来るぞ!」


リュウガは竜人のおかしさに気がついたようだ。


後退りして竜人と距離を取る。


「リンカ!見てて気がついたことは無いか!?」


「能力はおそらく反発力を高める力。実際にあなた達の攻撃もこいつの攻撃もお互いに接触してない!止めるには拘束するしかないわ。二人でどうにか動きを制限しておいてくれたら私が樹魔法で拘束するわ!」


「了解!」


リュウガとヴァイスの二人はうまくヘイトを分散して竜人の動きを最小限にとどめた。そして...


「木々の監獄フォレスト・プリズン!」


五色の連携によって、竜人は完全に動きを封じられた。


五色に向かって拍手と歓声が飛ぶ。


「とりあえず一件落着だな!」


ヴァイスが剣を収めながらそう言って笑った。




「五色」の活躍によって、ギルド本部は壊滅的な被害を免れた。しかし、竜人の存在がもたらす脅威は消えていない。オルトとナナは、逃げた竜人が再び現れる可能性に備えながら、今後の対策を練るのだった。

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