12.B級昇級
王都の冒険者ギルド本部に足を踏み入れたカナトは、オルトとナナとともに受付へ向かった。B級への昇級試験について説明を受けるためだ。
副ギルドマスターの執務室へ案内されると、中には壮年の男性が待っていた。彼は厳しい表情でカナトを見据え、口を開いた。
「B級冒険者への昇級試験には二種類ある。一つは指定されたモンスターを単独で討伐すること。もう一つはギルドが定めた模擬戦で実力を示すことだ。どちらを選ぶ?」
カナトは即答した。
「指定されたモンスターを討伐します」
副ギルドマスターは小さく頷き、書類をめくった。
「では、お前に課せられる試練は『血の大狼』の討伐だ。こいつは相手の血を吸い取り、その力を自らのものとする特性を持っている。本来ならB級パーティーで挑むべきモンスターだが、単独で挑むか?」
「もちろんです」
カナトの迷いのない返答に、オルトとナナが驚いた顔をする。
「カナト、本当に大丈夫?」
「油断するなよ、俺達も戦ったけどあいつはヤバいぞ」
彼らの忠告を受けながらも、カナトは決意を変えなかった。
そして翌朝、カナトは指定された森へと向かった。
静寂に包まれた森の奥で、カナトはブラッディ・ウルフを発見した。赤黒い毛並みの巨大な狼がこちらを睨みつける。その瞳には獲物を見極める鋭い光が宿っていた。
カナトは剣を構える。
「さあ、やろうか」
次の瞬間、ブラッディ・ウルフが一瞬で距離を詰めてきた。鋭い爪がカナトの腕をかすめ、浅い傷を負わせる。しかし、その傷口から血が滴ると、ウルフの体が微かに膨張した。
「なるほど、こうやって強くなるのか……」
カナトは剣を構え、ウルフへ斬りかかる。だが、一撃を与えた瞬間、反撃をもらってしまいウルフの動きが一気に速くなった。血を吸ったことで、さらなる強化が施されたのだ。
「このままじゃ埒が明かないな」
カナトは剣を金属変形で新たな形にする。
「大盾……!」
考える時間を作るため盾の形にして攻撃を耐える。
「どうしようか、小技で少しずつ削ろうとしても反撃されてしまうしな、、、」
考えている間にもブラッディ・ウルフの猛攻は続く。
「やはり一撃で倒す他無いか。金属変形!」
巨大な刃を持つ戦斧がカナトの手に生まれた。重厚な一撃を振り下ろせば、ウルフを叩き潰すことができるはずだ。
「くらえ!」
カナトの大斧が唸りを上げて振り下ろされる。ウルフはそれを回避しようとするが、大地が割れるほどの衝撃が地面を揺るがした。その余波を受け、ウルフがバランスを崩す。
「今だ!」
カナトはすかさず金属変形で鎖を作り、ウルフの脚に絡みつかせる。動きを封じたその瞬間、渾身の大斧を叩き込んだ。
ウルフの頭蓋が砕け、地面に沈む。
カナトは荒い息をつきながら立ち上がった。
「……やった」
見事、討伐成功である。
ギルドへ戻ると、副ギルドマスターがカナトを迎えた。
「無事戻ったか。結果は?」
「討伐しました」
そう言って、カナトはウルフの証拠となる牙を机に置いた。
副ギルドマスターは満足げに頷いた。
「見事だ。これにより、お前を正式にB級冒険者へ昇級させる」
オルトとナナが歓声を上げる。
「やったな、カナト!」
カナトは笑みを浮かべながら拳を握った。
(ここからが本当の始まりだ……!)
こうして、カナトはB級冒険者として新たな一歩を踏み出した。




