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戦力過多で挑むSt10

 あの後は特に苦戦する戦闘もなく、5回ほど接敵して終わった。

 月曜日に入り、いつものように出勤し、今は取引先との今後の事業についての説明を俺たちの部署と取引先で会議を行っている。

「───そのため、弊社としては御社との提携を行うことでこの分野に大きく貢献することができ、利益の大幅な上昇を見込めます。」

 最近になって部下たちのやる気も上がりより一層仕事の効率が上がった。それに加え、取引先と行っている事業が成功し、大きな利益を得たことで周りの部署からの評価が大きく上がっている。


 それに今回の事業でのMVPが部下たちなのだ。部下たちが休憩している時に話していたプレコロの話題が取引先にも聞こえてきたようでそこから親密度が一気に増し、情報交換がスムーズになったのだとか。俺はプレコロの話題については社内で話したこともないし、部下もそのことを知らないため、今回の件にはそこまで関われていない。

 協力できるのならしたかったけども、部下たちと取引先でワイワイやっているところに突然俺が入ってきたらせっかくのいい雰囲気を壊しかねないし……という理由で少し距離を置いてしまっていたわけだが……


「皆さんは、プレコロをやっていますか?」

 取引先からそんな言葉が飛び出してきたのである。理由を尋ねる人がいたが、その理由としてはゲームをしているとどうしても本音とか素の自分が出やすいからそれで配慮が出来るかどうかとかを見極めたり、緊迫した場面を少なくしてお互いがスムーズに動けるようにしたいという意図の元、発言したらしい。実際に取引先の1人と部下たちは一歩先に進んでやってるわけだし、俺としてもその輪の中に入りたかったから入ることにしたのだ。

「では早速、今日の夜からやりませんか?」

 取引先からの言葉にプレコロがやっている人全員が賛成し、今日の夜集合することになったのだ。


                      +++


 準備を終えて「はちみつレモンミルク」のアカウントで集合場所へと向かう。

 今日は全員が強いという訳ではないが人数が多いということでSt10(ステージテン)へ行くと言っていたのだが、そこには明らかに戦力過多と言えるであろうメンバーがいた。

 そこにいたメンバーは4人。部下たちは3人いるのと、取引先に2人、プレコロをやると言っていた人がいるからあと1人足りないはずだ。

 とにかく、そこで目立っているのは俺がこの前戦った時にユウトといた軍人のような迷彩柄のズボンとタンクトップを装備した女性が1人と白いローブを身に纏った女性……「マリー」だっけか。イベント中に戦闘したからSt11(ステージイレブン)にいられる実力を持っているかは分からないけども、俺と戦った時に結構な実力を持っていたのは確かなことだしなぁ……

「一応設定変えとこ……」

 そう1人ボソッと呟き、設定で頭上の名前が見えるように変更する。

 マリーの頭上には「マリー」という名前が。軍人のような服装の女性の頭上には「カトリー」の名前があった。残りの2人はというと、剣を装備した男性の頭上には「鶏むね肉」という名前があり、もう1人の斧を持った男性の頭上には「時給三銭」という名前がある。名前は別に何でもいいんだけども、同じ働いている身としては少し心配になる名前だな……


「遅れました!すみません……」

 最後に来た女性のプレイヤーはいかにも戦闘向きではない普段向けの服装だ。服装に詳しくないから正式名称とかはよく知らないけども、上半身が白いTシャツのようなものに灰色の羽織る服、下半身は絶対に動くことに向いていない明るい青の長めのスカート。頭上には「ミユ」の名前があり、装備している盾は青と黒が彩っており、盾の上部には立体的でとてもリアルな髑髏がでかでかくっついている。あの時戦った「ミユ」と同じだと思っていいだろう。イベントの時も普段着みたいな感じだったし。


「では早速、フィールドへ行きますか。」

 マリーの言葉から早速St10(ステージテン)へと向かうことになった。

 移動中、分かったことはミユとマリーが取引先の相手であり、カトリー、鶏むね肉、時給三銭は部下であるということだ。誰が誰とかは詳しく聞いていないから分からないけれども。

 やっぱり6人でSt10(ステージテン)を歩き回ってただでさえ上位勢に入っているであろう3人がいると敵が寄り付かない。全員が暇になってしまい、談笑が始まる。今日新たに入ったメンバーは俺とミユだけだったので中身が誰なのか知られているため、部下たちは俺に質問を始める。

「先輩はどうしてこのゲーム始めたんすか?」

「ストレートに言うならお前たちにストレス溜まりすぎてさ……今は大丈夫だけども」

「え。そこまで俺たち酷かったっすか?」

「うん。セクハラで訴える!とか、言われなくてもできるよー!とか。結構辛かった。」

「それは本当にスンマセン!俺達、今頑張ってるんで!」

「いや、前向きになってくれるなら別に問題ないんだけども、突然態度が180度変わったからどうしたのかなー?とは思っているんだが……そこはどうしてなんだ?」


 とりあえず部下たちと打ち解けた雰囲気の中、態度が急変したことについて聞いてみる。

「いやー、実は部長に癒されることの快感を知ってしまって……」

「あー。分かった。」

 内容を詳しく聞けば彼らは仕事=辛いのイメージがついていたためそこに上司という負の要素が加わることがストレスの原因だったようなのだが、嫌々やっていたその「辛い」ことを超えた先に見る「癒し(部長)」が劇薬となったらしい。そのままその沼にはまって抜け出せなくなってしまいいつしか仕事が辛くなくなったのだとか。

「それと先輩、どうして結構前からプレイしているはずなのに武器以外初心者装備なんですか?」

「あーこれ?だって攻撃当たんないようにしてれば装備ない方がいいでしょ。あとこれサブ垢だし。メインでやってるのはソロプレイ専用なの。」

「まぁ、別にプレイスタイルは人それぞれって言うし詮索はしないけど、足引っ張らないでくださいよ?先輩だからって引っ張るなら容赦しませんから。」

「はいはい。分かってるよ……」


 ストレスの元は無くなったと分かっていても、やっぱり部下の態度は直り切っていないな……しっかり教えとかないと他の取引とかで痛い目見そうだし後々教えとくか……

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