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人に戻れる……のかな

 グロ表現多めです。というか今後グロめな表現増えるかも……やり過ぎ始めたらR15指定すると思います

 槍を振り始めていたため、無理に止めてしまうと、振られた剣が体に直撃してしまい絶対にデスしてしまうので、元々の槍の軌道をずらして剣にぶつけることで攻撃を防ぐ。だが、オーラが纏われており、明らかに強力になっている剣の威力と、バフをかけた程度の槍では力の差は火を見るよりも明らかだ。勿論、俺の方が力負けし、大きく距離を離される。

 離されたタイミングに合わせて矢が数本放たれたが、体勢を整えながら足場を生成することでその場で停止したため、落下地点に合わせて放たれた矢は通り過ぎ、保険として落下地点より上に放たれたであろう矢は槍で左右に弾いた。

 足場を蹴り、再度距離を詰める。[狂乱(フィーストオ)の宴(ブフランジー)]と[空舞(くうぶ)]を使用したことで多くのTPが減り、残りのTPは5割程。他のプレイヤーと違い、TPの消費量を抑えるようなスキルや、TPの自動回復速度を上昇させるようなスキルもない。ただ、()()()()()1つを除いて。


 直線的に動いていると、矢がバンバン撃たれそうなので、わざと不規則に動く。今のペースでTPを消費していくのなら、ものの2、3分でTP切れを起こすだろう。それでもさっき言った通り回復する手段があるのなら、変に節約して臆病に戦うよりも、そのスキルに頼って強気に挑むだけだ。それを実現できるだけのプレイヤースキルはあるのだから!

 放たれる矢を右へ左へ、上へ下へとスーパーボールが壁に弾かれる様に素早く移動・方向転換を行い回避する。

「当たらねぇ!」

 弓を持ったプレイヤーがそう叫んだのも束の間、槍の射程圏内に届いたことで俺は槍を持っている利き腕を上げる。剣を持ったプレイヤーがすぐに反応し弓を持ったプレイヤーの前に立ち、防御の態勢に移る。振り上げた腕を構えられた剣に向けて垂直に振り下ろす。だが、それは攻撃のためではなく、移動のためだ。剣を支えにして槍を押し、前へと進む推進力を得る。

 後ろで隠れている弓を持ったプレイヤー目掛けて進み、攻撃しようと構える。プレイヤーは弓を構え、反撃しようと狙いを定めるが、それをさせまいと槍をプレイヤーの右肩目掛けて投げ、弓を持つ力を弱め、ロスタイムを作る。

「痛ぇ!!」

 プレイヤーは痛みに耐えるようにそう叫んだが、そんなことも構わず俺は目の前のプレイヤーの肩を鷲掴みにする。


「お前何して……」

 何かを言おうと口を開けていたが、俺もそれに負けじと口を大きく開け、首根っこを噛む。肉を千切るように首を動かし、口を首元から離す。プレイヤーは声を上げることが出来ず、話していた内容がプツッと途切れた。

 今まで見えていた血のエフェクトが鮮血のように鮮やかな色を付け、生々しい感覚を俺の目に焼き付けさせる。歯で咥えるようにしている肉塊は生暖かく、ゴムのようでありながら牛タンのように固い、変な感覚が歯を通して伝わってくる。


 スキルの発動にはその動作に加えて「飲み込む」動作───つまり「食べる」ことが必要だ。人としての常識を失うんじゃないか。そんなことを考え、躊躇いながらも思いっきり飲み込む。変な感覚が喉を刺激し、今にも嘔吐しそうになったが、この時に限ってNPCらしさを考えてしまい、必死に我慢して飲み込み切った。その感覚は喉を過ぎれば無くなったが、気持ち悪さは残っている。


「相棒ーー!!!」

 剣を持ったプレイヤーがそう叫ぶ。視界の端に映った弓を持ったプレイヤーは俺が噛み付いたことが致命傷となったのか、その場で「DEAD」の表示を出して倒れている。


 今発動したスキルは[人共喰(カニバリズム)]。プレイヤーの血や肉を食べることで発動するスキル。自分の血を舐めたことで発動したのだから「プレイヤー」の範囲に自分自身も含まれるため、いつでも発動できてかなり使い勝手がいいと言えるだろう。自傷するのは少し嫌だしセルフで強化するのにも抵抗があるから今後するつもりはないけども。


 効果は発動したときに量に応じてHPとTPを回復するというもの。一時的にステータス強化の恩恵を受けるんだけども、効果が切れると移動速度低下、視界不良といったデバフがかかる。文面だけ見れば継戦能力はあまり高くなさそうだけども、プレイヤーの血や肉を摂取し直せばデバフを受けていても効果が切れるし、発動中ならステータス強化の効果時間も伸びる。そういう点を含めて見れば継戦能力に長けているだろう判断した。

 仮にデバフを受けていても、攻撃を受けられるくらいならそのまま噛み付いてデバフを解除することだって出来るはず。そう考えて入手したのだ。


 とにかく、今は目の前のことに集中する。今のHPは4割と、TPが6割残っている。全快にするため残っている死体を貪り食うのもありだけど、人としてどうかと思うし、考え方によっては死体撃ちみたいな考えもできるからという理由でやめることにした。回復し過ぎて差が大きいまま勝つのもちょっとあれだし。俺としては接戦を楽しみたいのだ。


 とは言っても、彼は2人でプレイすることに楽しさを感じていたようで、1人になってしまうと仇のように怒りを露わにしながら襲い掛かってくる。キルされたならそれが正しいのだけども。

 怒りに身を任せてしまっている分、動きが単調になり、武器にも力が籠り過ぎてしまう。

 縦に振られた剣を回避すれば、剣は地面に当たるまで振られ、横方向に振られた剣を回避すれば、剣は空を切り180度回転する。

「怒りに身を任せていては先程までの威勢が嘘のように思えてしまうほど滑稽に見えるぞ?」

五月蠅(うるせ)ぇんだよ!!」

 怒りを制しさせるかのように煽りを入れてみたが、逆鱗に触れたようでさっきよりも怒りが籠っている。

「ハァ……」


 ため息を吐き瞬時に距離を詰めるように足に力を入れる。顔面を鷲掴みにし、剣を持っている右手の手首を掴み抵抗させないよう、出来る限り無力化させる。

「そんなに辛いのなら共倒れすればよかったものを」

 そう言い俺は首を嚙み確実にキルを入れつつ、HPとTPの両方を回復させる。

 全快になるほどに嚙み切ってしまうと、プレイヤーの体がハチの巣のようになり、痒いと思って顔を掻いた時、手にべったりと血がつくほどに返り血が飛んでいることに気付いた。

「俺、人間でいられるかな……」

 戦闘スタイルがこの形で定着してしまった以上、今後もこの戦い方を変えるわけにもいかないうえ、かと言って現実でそうならないように人を避けることも生活がかかっているため引き籠もるという訳にもいかない。

 弱音を吐きつつ、顔についた返り血を装備で拭って綺麗にしながら歩き始めるのだった。

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