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イベント映像を見る

 日曜投稿忘れてたのは許してくれ……

 その後、お隣さんとパーティーを組み、数時間程St10(ステージテン)で戦闘を行っていた。お隣さんは今のアカウントを始めたばかりなのか、レベルがかなり低かったが、一度プレイしたことがあるらしく、少し自身気にSt10(ステージテン)へと移動していった。ついて行くように追いかけ、何度か戦闘を行っていたが、やっぱりレベルが低いことで戦闘が長引いてしまうのか、彼女は防戦一方だった。そこに援護を入れるように限界まで伸ばした[フレイミング]で相手を突き、2等分された経験値を頂いた。

 接敵することなくフィールドを歩き回っている間は、ゲームを始めた理由とか、いつもどんなことを趣味にしているのかなど、日常面での話で盛り上がった。質問は出し合う形だったので一方的に質問したわけではないが、どうしても、彼女は質問を答える時、俺の出方を窺うかのように少し警戒しながら返答してきた。……やっぱり、話しかけすぎかな……?


 戦闘を続けるうちにレベルも上がり、お隣さんも積極的に攻められるようになってきたのだが、その戦い方になぜか見覚えがある。攻撃を的確に弾いて反撃……もしかしてカーズ……?


                      +++


 その後、17:30を過ぎ、イベントの配信を見たいという理由でパーティーを解散し、お隣さんと別れる。流れるようにログアウトし、動画投稿サイトの公式アカウントのページを開き、配信まで待つことにする。

 その時、画面の上からグリードからのメッセージが届いたことを通知される。何だろうと思って確認してみると、来週の日曜日にGMTに来れないかということだ。どうやら俺と同じ形で新たにNPCを見つけたらしく、本人とも連絡が取れたので、顔合わせということで誘われたわけだ。

 別に予定がないからとその提案にOKを出し、公式アカウントのページに戻る。


 そうして迎えた18:00。GMTの会社ロゴが最初に光ると、上空からドローンで森の上を低空飛行するかのようにフィールドを取ったかのような映像が最初に映される。

 最初から戦闘シーンが映ったわけじゃなく、フィールドを巡り、その道中で遭遇したプレイヤーの戦闘を映すと言ったサファリパークで動物に遭遇したみたいな映し方をする。でも、俺的には戦闘シーンが突然切り替わるよりも、移動シーンを入れることで広いフィールドの中でもこれだけ戦闘が激化していたことを示しているようで臨場感というか、イベントが白熱した感じが味わえる。

「ハァッ!!」

「オラッ!」

「やあっ!!」

「[炎斬(えんざん)]!!」

 戦闘シーンが映されると、コメントが大量に流れる。「これ俺だ」とか、「この動きどうやるん?」みたいなプレイしている人のコメントから、「ここまで高クオリティとか、本当にゲーム?」といったプレイしていない側の人たちからのコメントがたくさん流れていた。


 そんな中、俺の映像が流れる。合図として発射されたであろう花火を追うようにカメラが移動すると、突然移動し、画面に歩いている俺の映像が映り始める。コメントには「うわ出やがった」「NPCだ」といった感情を押し出していたり、「実物初めてだけどなんか俺でも倒せそう」といった余裕そうにしているコメントもいくつか出ている。

 俺の背後から奇襲を仕掛けるようにフード付きのローブを装備した女性プレイヤーが双剣の刃を立てて背中に突き刺そうとしたとき、俺は槍でその攻撃をいなす。最初の戦闘だな。

 続けざまにそのプレイヤーのパーティーメンバーが集まり、援護と攻撃を行う。

 俺はあの場で戦闘している時は一人称の視点だから自分自身の体全体の動きとか、死角の動きを目で見れない。でも、こういった第三者が撮ったような映像を見ると自分の動きに無駄がないか、NPCらしく振舞えているかといった振り返りが出来る。

 このシーンでのお気に入りは盾持ちのプレイヤーの頭上を越えて背中へ槍を突いた部分だ。ダメージこそ与えていないものの、流れるように空中を飛び越えるところがイメトレの成果もあって綺麗なのだ。それに、普通に跳躍するのではなく、頭を地面の方に向けて跳躍するので、結構跳躍しないとこんな空中姿勢になれないためそれなりに跳ぶ必要もあるのだ。


 その後に出てくるさや達上位勢との戦闘も魅力的だ。[狂乱(フィーストオ)の宴(ブフランジー)]や別プレイヤーのエフェクトも相まって格好よく見える。コメント欄も上位勢を褒めるようなコメントから、「俺なんて……」みたいにスピアを倒せないことを責めるかのような自虐的なコメントも含まれている。


 その中で一際目立つコメントがあった。

「このカメラ機能をプレコロ内に導入して面白さを広めやすくしたら?」

 このコメントはサイト内でお金と一緒に送信できるコメントを用いて公式にコメントしている。本気になっているのだろうか。お金が付いたことで一際目立ったコメントとなり、閲覧しているプレイヤーの多くが反応していた。

「面白そう」とか、「配信活動が活発になりそう」という肯定的な意見があれば、「今回の動画で肖像権とか出たんだからそういうのとかアウトじゃない?」とか「子供とかにこういう映像が流れるのはグロそう」みたいな否定的な意見が出てきた。配信と並行してコメントしていたため、口論までには発展しなかったが、みんなそれぞれ意見を出していた。だが、1つのコメントが出されることで今の状況が変わる。


 公式からのコメントだ。

「検討します」

 その短い文でその話題に火が付き、さらに意見を出し合うようになった。

 俺としては配信機能とかつけば参加型とか出来そうだけども、スピアとしての映像が広まるんだったらより一層気を引き締める必要が出てくる。


 カットしたシーンがないので8時間分流すつもりなのだろう。ずっと見るわけにはいかないので、後は配信後に普通に動画として出るはずだから後々流し見しておくことにする。


 そうして次の週の日曜日。少し早く起きて出発の準備を済ませる。外に出たタイミングで同じように外に出てきたお隣さんがいた。

「あっ、おはようございます」

「あっ!!おはようございます!」

 突然の声にびっくりしたのか肩をビクッと動かし、素早く振り向いて挨拶する。

 前回、一緒に遊んだときは、話しかけた気がするので足早にその場から離れ、駅へと向かう。


 ホームで待っていると、お隣さんが後ろにやって来た。

「どこか、行くんですか?」

「はい、少し遠いところに」

「そうなんですか。私は、Game(ゲーム)Master(マスター)Technology(テクノロジー)?ってところに行くんです。運営からメールが来て、呼び出し食らったので。」

「あっ、そうなんですか。実は私も……」

「奇遇ですね!えと……あなたも運営に呼ばれたんですか?」

「そうですね~。内容はちょっと秘密って言われましたので言いませんが。」

 ホームで軽く会話し、電車に乗る。日曜の朝なので通勤ラッシュに巻き込まれたわけではないのである程度楽ではあるが、休日なのか、多くの人が乗っている。


 GMTに着き、受付を済ませた時、案内時間が10分程ずれていたため、手を振って別れた。そのまままっすぐ2階の207号室へと向かう。前回も同じ場所だったっけ。

「やぁ、スピア君」

「お久しぶりです。グリードさん」

 軽く会話すると、グリードが俺に座るよう指示する。だが、その席の位置は、グリードの隣、位置で言えば「運営側」とでも言うのだろうか。前回座った位置の反対に位置している。

「今回は、メールした通り、新たなNPCについての話だ。スピアとして認めた時みたいにな。」

 グリードがそう説明したタイミングでノックオンが響く。

「失礼しまぁす……」

 その声と共にドアが開く。……あれ?どっかで聞いたような……

 その時俺は咄嗟に立ち上がり彼女に向けて指を指し叫ぶ。彼女も同様に指を指し叫ぶ。

「「はあああ!?!?」」

 目の前にいるのは、お隣さんなのだ。

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