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豪快に、そして冷静に

 勢いのまま進み、カーズを槍が届く距離まで近づけた。スキルによって上昇したSTRを信用するように、後隙を考えず槍を思いっきり振る。さっきの冷静さを捨てて声を荒げ、豪快に槍を横に振る。

「アアアアアッ!!!」

 カーズは向かってきた俺を見ると昂ったかのようににっこりと笑みを浮かべ迎撃しようとスキルを発動する。

「[滞空]!」

 すりガラスのような半透明の足場を生成し、武器を振った時力負けしないようにする。俺は攻撃を避けてから反撃なんて空中で移動するスキルでも持っていない限り出来ないので、正面からカーズにぶつかり力比べをする必要があるのだ。


 お互い、STRが上がっているからなのか、いつもよりも大きく金属のぶつかり合う音が響く。このまま拮抗した状態が続くとは思うが、俺の力は空中で加速した分を足して丁度カーズと同じくらいになる。だから、一度武器がぶつかって止まってしまえばすぐに力負けして吹き飛ばされるだろう。

 そうならないために俺は槍を動かす。


 槍をわざと左に動かし、カーズの斧の軌道に合わせる。槍で斧の刃を押すように下に力を入れながら、体も左に捻る。斧に瞬時に力を流すように槍を押しほんの少しだけ浮く。斧の回転を体に乗せて自分も回転し、その場で止まる。カーズを視界から外すように反時計回りに一周し、再度カーズを視界内に収める。槍を縦に振り、斧を振り切ってすぐに防御できないであろう上半身に槍の刃をぶち込む。

「ハアアッ!!!」

「甘ェんだよ!!」

 カーズは斧を引っ張るように動かして頭の元へ動かし、振り下ろされた槍を止める。

「それは貴様もだろう?」

 槍の上に右足を動かす。そのまま踵落としの要領で槍に右足をぶつける。カーズにより強い衝撃を与えると同時に、右足の力でカーズの上に移動する。現実ならこんな動きは不可能だけど、STRが高い今だからこそできる芸当だ。

 カーズは今の衝撃に耐えられてはいるが、状況を変えようと斧を前に押し出し、俺との距離を離そうとする。上から加わっている力を弾くなら無理に横に流すよりその力と反対に力を籠めて弾くだろうから、どう弾かれるか、ある程度の予想はつく。


 予想通り上に弾かれて、さらに上空に飛ばされる。その場所からカーズの場所へ、落下する力を活かすように槍を縦に振る体勢になる。

 カーズはその攻撃のカウンターを狙って足を大きく開き、斧の刃を足より低い場所に構えている。思いっきり振るつもりのようだ。

 槍と斧がぶつかり合う距離まで落下したとき、俺は咄嗟に回転をやめ左方向に槍を動かし盾のように構える。


「俺を無視すんなよ!!」

 さっきの羽の生えた男だ。スキルを使って一時離脱してはいたが、奇襲に備えて警戒しておいてよかった。さっき持っていた剣を自身の速度に乗せて振り、威力を高めているのだろう。スキルでSTRが強化されていても、武器が重く感じるほどの衝撃がビリビリと伝わる。

「邪魔が入ったか……」

 そう言葉を捨てため息を吐く。剣を上に弾き、槍を前後に素早く動かし、突く。男の体だけでなく、装備している羽も狙って何度か突いてみたが、槍を蹴って前に進む時間が惜しいと考えたせいで後ろに下がっていったままだったので途中で槍が届かなくなってしまい、その間で隙が出来たので男の追撃を許してしまった。


 男は一度落下するように急降下し、俺が対応しづらいであろう背後へ移動し、剣で刺突するために威力を乗せるため急加速する。向かってきた男の剣先を槍の持ち手の端で止める。最初の練習が生きたのか、偶然で成功させただけなのか、ノールックで攻撃を止めることが出来た。だが、男の異常なほどの速さが俺の体にまで伝わり、男の進むままに、連れ去られるかのように上空へと進んで行く。


 ある程度進んだところで剣先を右に流し、上昇したAGIを活かすように、反時計回りに素早く回転して男の左半身を槍で叩く。男は急停止するかのように羽根の向きを変えていたが、剣に慣性でも残っていたのか、止まることが出来ず、槍が直撃する。

「グッ!?」

 男は痛みに耐えるように声を漏らす。だが、刃が羽に食い込んでしまい、致命的なダメージを与えるまでには至らなかった。

「[喧騒羽風(バッスル・ウインド)(ストリング)]!!」

 男は落下しながら追撃阻止のためにさっき飛ばした時よりも多い量の羽根型の爆弾を飛ばす。

 槍を蹴って距離を離し、ある程度上空に上がったところで飛んでくる羽根を爆風でHPが減らないようにできるだけ槍の先で突く。その奥でカーズが距離を詰めるように斧を蹴っている。

「邪魔が消えたからなぁ!!好きなように行かせてもらうぜぇ!!」


 斧を構え空中で大きく2回横に振る。さっきと同じように斧に槍を乗せるようにして攻撃を流して反撃に槍を振り下ろす。

「それはもう見たんだよ!!」

 カーズが来ると分かっていたかのように斧を振り、刃の部分に槍を直撃させる。持ち手で防ぐよりも威力が乗るため俺は力負けし距離を離されるかのようにさらに上に飛ばされる。カーズも追うように斧を蹴って飛び、俺の頭上に移動する。

「[メテオ・ストライク]!!」

 スキルを使用し、下方向へのノックバックが強い攻撃を放つ。斧は防げてもノックバックで下へと落ちていく。

「地上戦を望むのか?」

 落ちながらカーズにそう問いかける。

「そうだ。あん時の続きをしたいからな」

 カーズはそう言うと、[空中跳躍]を使用して落下するように移動する。

「そうか。では貴様の提案に乗るとしよう」

 俺はカーズの提案に乗る。……空中戦は普通に戦うよりも槍蹴ったりとか意外と疲れるし、踏ん張りようがないからいつもより武器の回避とか攻撃の方法を工夫しないとかなり難しい。それなら自分たちの技量を最も活かせる地上で対戦した方がいいのだ。槍を軽く蹴って落下の威力を落とし、落下ダメージを無効化する。


 カーズは[愚者の矜持(フール・プライド)]に回復効果があることに気づいていない。そのため、カーズ自身のHPが回復せず、俺のHPが全快になっているということを知らずに対戦しているのだ。まぁ、スキルの仕様を全部知られると、対策されやすくなるから知られてないならそれでいいんだけど。

「さぁ、始めようじゃないか」

 俺はカーズにそう呼びかけ、互いが地を抉るように足に力を入れて大きく一歩を踏み出す。

「「ラアアアアアアッ!!!」」

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