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再戦

 活動報告の方にも書かせていただきましたが、誤字報告の方、ありがとうございます。私がまだまだ未熟なせいで結構な誤字があり、たくさんの誤字報告が届きました。

 迷惑をかけてしまうのは重々承知していますが、誤字などがありましたら、報告してください。

 今後も、作品の見直しを進めて修正を頑張っていきますし、執筆も頑張っていきますので、応援、お願いします!

 走ってカーズから逃げること数分。カーズと会い始めてから10分経ったことを示すように再度点滅し、位置が通達される。

 逃げている途中、数人を流れ作業のようにキルしていたがその間にもカーズは全速力で走ってだけなので、余計に距離が詰められてしまうので3人ほどキルしてから一心不乱に逃げ回っていた。

 ただ、逃げ回っていても結局は追いつかれそうなのと、このままじゃキルできずに1キル辺りにかけられる時間が減り、その後の行動がかなり難しくなってしまう。それなら今この場でカーズを頑張って……倒……す……うぅ……


 出来なさそうだな……


 改めて対峙して思ったけども、カーズにはやっぱり隙がない。あれだけ重そうな斧を軽々と持ち、致命的な一撃を毎回出せるという豪快さを持っているのに、大柄な体を持ち手というかなり細い部分を正確に動かして数多の攻撃を防げる冷静さも持ち合わせている。今戦っても勝てる自信があまりない。

 でもプレコロでプレイヤーと対峙するべき存在である以上、カーズに勝てなければ彼が退屈してしまう。

「楽しませるのがNPCの役目……。それなら、あいつを楽しませなきゃ……か」

 1人でボソッとそんなことを呟き、少し開けた土地に出たところでカーズから逃げていた足を止めて振り向く。


「やっと戦う気になったのか?」

 カーズが足を止めそう答える。

「ああ、気が変わったからな。……それじゃ、楽しもうじゃないか。」

 そのセリフを捨てるように吐き、足に力を入れ距離を詰める。カーズも距離を詰めて、お互いが自分の武器を振るう。

 斧が左斜め上から振られ、俺は槍を右斜め下から振る。大きく振られた2つの武器は、俺とカーズの間で止まるかと思ったが、STRに大きな差があるのか、槍が右に弾かれ、斧が最後まで振られてしまった。

 がら空きの胸元に浅く斧が当たり、薄っすらと赤いエフェクトを散らす。


 反撃に再度槍を振ったが、斧を少しだけ上に傾けられ槍を流されてしまう。

 たった一瞬のスキが生まれたタイミングでカーズは斧を上に掲げ素早く振り下ろす。慌てて槍を戻そうと右手を引くと、運よく槍が斧に当たり直撃を回避できた。だが、その衝撃は重く、槍の持ち方も安定していないので、斧の動きに合わせ体勢を崩してしまい、槍も斧と地面の間に挟まり抜きようが無くなってしまった。

「オラァ!」

 斧を押さえたままのカーズは武器での反撃と防御の手段を封じ、俺に向けて真っ直ぐ足を伸ばし渾身の蹴りを食らわせる。危機感を感じたのか、考えるよりも先に体が動いており、胸元への直撃は避けられたが、左肩に蹴りが当たってしまい、その衝撃で後ろに飛ばされてしまう。

 槍から手を放さずにこらえようと考えたのだが、カーズのSTRに負けている以上、どう頑張っても斧から槍を放すことが出来ないので、槍を持ったまま攻撃を避けると追撃にまた数発蹴りが来ると思ったので、わざと槍を離して吹き飛ばされる。


 ある程度距離が離れたところで、手をバネの様にして地面を叩いて浮き、空中で回りながら体勢を立て直す。地面の上を滑りながら威力を殺し、その場にで動きを止める。幸いなのは木に当たらず追加のダメージが入らなかったことだろうか。

「さぁ、素手で頑張ってみろよ。」

 カーズが俺の手にあった[クルセイア]を地面に刺して立てる。

「やってやるさ。[狂乱(フィーストオ)の宴(ブフランジー)]!!」

 [狂乱(フィーストオ)の宴(ブフランジー)]を使用し、自身にバフをかける。スキルを発動したので[イネイシァル]を持つべきか考えたが、今この場に俺の槍が2本あることが少し不自然に感じたのと、せっかく素手で戦うことになってしまったのなら戦ってみたいという興味からあえて槍を取り出さず戦うことにする。

 でも、俺が槍主体に戦っている以上、あまり素手で戦いたくないし、槍が回収できるなら出来るだけ早く回収したい。


 地を蹴り、腕を振って走り出す。武器を持っていないので、少しだけ爽快感を感じる。視界に振っている腕が映り、黒い炎のような靄が風に乗って後ろに流れていくのが確認できる。

 カーズの斧の射程に入ったことでカーズは斧を振る。

 左下から刈り上げるように振り上げられた斧を右にステップして回避する。その動きを確認したカーズは斧の動きを途中で止め、横に斧を振る。下段を狙って振っているので飛び越えて回避することはできるが、カーズの攻撃速度的に飛び越えてしまえば格好の的になるだろう。

 残っている選択肢の内、1つは急ブレーキして一度下がること。だが、せっかく走り出したのに下がってしまえば錯覚上がった速度の意味がない。だからもう一つの選択肢である斧の下をくぐる事を選択する。速度を殺さずにカーズに近づくことが出来る。だが、斧はかなり下側を狙っているので、かなり姿勢を低くしないと直撃して首と体がおさらばしてしまうだろう。そうならないように出来るだけ姿勢を低くするため、前に出した右足をしっかり伸ばし、起きている左膝を寝かすように全身を左に向ける。頭も肩より上に出ないようカーズを視界から外すように左を向いてスライディングする。


 右耳の上で大きく風を切る音が響く。だが、HPは減っていないので回避することは成功した。すぐに周りを確認するように上を見上げる。丁度その時、斧の持ち手とカーズの腕の隙間から彼の包帯に覆われた顔が視界に入る。目こそ見えないものの、カーズは目が合ったのか、俺を見るや包帯の隙間から歯が映るほどの笑みを浮かべる。

 追撃を入れようと地面に近い左足と左手を滑り止めのようにし、体を左に回しながら右手を地に付け右足を振り子のようにに大きく動かし四足歩行の体勢のようになったタイミングでカーズの背中に飛びつく。カーズは反応し後ろを振り向きはしていたが、俺はなんとかカーズの肩に掴まり乗っかることが出来た。宙にある足をカーズの背中にぶつけるよう、力を入れて近づけ、蹴りを入れる。

「ガッ!!」

 カーズは声を上げてほんの少し上を向き、体をブルブルと動かし振り払おうとする。


 俺は振り払われないよう足をカーズの腹に巻き付け、肩を掴んでいる手にさらに力を入れてしまったため、攻撃に使えるのが頭部しかない。

 頭突きしようかと考えたが、頭突きすると頭がガクンとなってしまうのと、頭が痛くなってしまうのでやめることにした。残っているのは口。考えてはいなかったけど、最初から考えていたかのように噛み付こうと体が動く。

 刃を立てて右側の首と肩の境辺りに思いっきり噛み付く。

「離……れろやああぁぁぁ!!!!」

 カーズは痛みに耐えるかのように大声で叫び、斧から右手を離し俺の頭部を鷲掴みにする。俺は負けるもんかと噛み付く力を強める。

「ウ゛ウウラ゛ァッ!!」

 首を横に振り、肉を抉る。エフェクトを大きく散らしながらカーズの動きがさらに荒くなる。

 口の中にある少し小さな肉塊をプッと吐きだし、また噛み付きにかかる。

「いい加減にしろぉ!!」

 カーズは左手に持っている斧を背中に当てるように上から下に振り下ろす。焦っていたのか、自傷ダメージを恐れたのか、斧の刃を向けずに振り下ろした。斧は、俺を切り裂かずとも背中に衝撃がジーンと伝わり、HPが削られる。思わず噛み付いている口を離し、追撃されるのを避けるため、カーズからも離れる。


 離れた時、隣に[クルセイア]があったので、地面から抜き取り回収する。[クルセイア]をしまい、[イネイシァル]を取り出し、構える。

 カーズは右手で首元を押さえながら左手で斧を持つ。


「やってくれたなぁ!?」

 包帯で表情は見えないけども、表情を大きく変えているのか、包帯が少し伸びている。その隙間から、白目に血管が浮き出るほど目を見開いているのがほんの少しだけ見える。怖い……

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