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NPCと協力

 数分程さっきと同じように交渉を何度か行い、仲間を増やせないか試したのだが、俺を倒したい意思を持った人の主張が激しくなったせいでそれに同調するプレイヤーが増えてしまい、交渉したところでプレイヤーたちの意向が変わらなさそうだったので仕方なく峰打ちしてみんなでポイントを分け合った。

 そんなことを繰り返すうちに人数が少ない方がポイントを分けやすいので増やしたところで管理がずさんになるだけだし、仲間として一緒に行動してくれる3人のプレイヤースキルも上位勢に食らいつける程度には備わっていた。


 俺が点滅する度プレイヤーが追ってくるので、なるべく現在地を悟らせず、うっかり他のプレイヤーと鉢合わせることがないように不規則に動きながらマップの上方向へ向けて移動している。

「そうだ、今はこうして世界が1つにまとめられてるが、お前達ってSt(ステージ)……だっけか?そんな分けられてる世界のどこにいるんだ?」

 ゲームでは当たり前の知識としてあるが、俺はそういった設定を知らないNPCがよくする典型的な形で質問をしてみる。

「俺はSt7(ステージセブン)にいるな。St11(ステージイレブン)に憧れはあるけども……ちょっと今のままじゃ無理そうなんだよなぁ……」

「私は……St8(ステージエイト)。って言っても今日はいない友達(フレンド)と一緒にいるから、そこまで実力が高いわけじゃないんだよね……」

「僕はSt5(ステージファイブ)。攻撃を捌くことに自信はあるんだけどどうしても攻撃と合わせるのが苦手で。キルできないからペナルティを戻せなくて、苦戦しちゃうからそのフィールドに留まってる感じ。友達(フレンド)がいればもう少し上に行けそうだけど、結構忙しいみたいでさ。たまに(シックス)とか(セブン)に一緒に潜ることはあるけど、月に4~6回程度だからね……」


 みんな、プレイヤースキルが高いけども、個人としての力を発揮できない感じか……

 でも、連携さえできれば結構なポテンシャルを秘めてそうだから、個で動いているままの3人を繋げる「鎖」として頑張らないと。

 移動しながらそう決意した矢先、プレイヤーが追いついてきたのか

「いたぞ!!」

「追え追え!」

「逃がすなあ!!」

 プレイヤーの声が結構近くまで聞こえる。

「どうする?もう少し逃げるか?戦うか?」

「俺は戦ってもいいけど……まだ誰の事も知らないから戦闘になった時連携がとれなさそうだなって……」

「私も!自己紹介位はした方がいいと思います!」

「僕もそれに賛成……」


 確かに。お互いを知らないままじゃどう呼べばいいか分からないもの。俺が1人で勝手に援護していればいいと思っていたけど、1人でカバーできる範囲にも限界はあるからな。

「やっておくに越したことはないか。では、俺が指名するから順に始めてくれ。まずはお前だ。」

 俺が自己紹介の進行を行う。そうすればだれが最初からやるとか面倒くさい工程を飛ばしてできるからあまり時間をかけずにすぐ終わらせられるはずだ。とりあえず俺に協力した順に自己紹介を始めてもらうことにする。


「えと……俺は[ザイン]。今は時間がなさそうだから、名前だけで終わらせておく。」

「分かった。じゃあ次!」

「あっ、はい!私の名前は[ローア]。……これだけでいいの?」

「ああ。今はそれで十分だ。最後!」

「僕の名前は、[ナット]。よろしくね」

「分かった。君が[ザイン]で君が[ローア]。そして[ナット]だな。よろしく」

 今までの仕事で身についた名前の短期記憶。まさかこんなところでも生かされるとは……


「それじゃ、戦闘を始めるか?」

「俺は準備万端だ。」

「私も、準備はできてます!」

「僕も大丈夫だよ……!」

 全員の了承を得たところで足を止め、後ろを向く。

 武器を構え、少しだけ立ち止まっているとプレイヤーが追いついたため、草木の影からゆっくりと姿を現す。

「なぁ、NPCに仲間なんていたっけか?」

「さぁ。様子見程度で攻撃を始めるか」

 最初に現れたのは双剣を持ったプレイヤーと剣を持ったプレイヤー。先頭を走っていたから最初についたのだろうから、AGIは高いと思っていいだろう。

 2人は早速こちらへ向かい武器を振るう。槍で防ごうと思ったが、ナットが盾を持って動き始めたこと、間に合いそうだったからあえて武器を振らずにナットに防御してもらう。その方が役割が明確に分かれて攻撃しやすいからね。

 盾で2人の攻撃を受け止める。やはり大きな武器なだけあって簡単に受け止めることが出来た。それに、盾を剣や双剣の進行方向に合わせて引いているのか、大きな衝撃を受けることなく攻撃を流している。自分の力に振り回され体勢を崩したタイミングで俺はそれぞれのプレイヤーの脇腹や腕を狙って突く。俺がやっているのはあくまで牽制。自分でキルしちゃポイントなんて上げられないから。

 でも、フウまるとかの俺との実力が拮抗してるタイプのプレイヤーにまた会った時は結構辛そう……


「はあっ!!」

「[火球]!」

 2人に傷をつけたタイミングでザインとローアがそれぞれ攻撃をする。急所に槍が刺さったり、全身を燃やされてはいるが、レベル不足によるものなのか、STRとDEFのステータス差が小さかったのか、致命傷を与えるまでには至らなかった。

「この!舐めやがって!」

 剣を持ったプレイヤーが胴を刺されエフェクトを散らし苦しそうな表情をしながら地面に突っ伏していながらも怒りに身を任せて体を無理矢理起こしザインに向けて下から上へ斬るように剣を振る。

 ただ、それでくたばるほどザインのプレイヤースキルは低くなく槍の持ち手でしっかりと攻撃を止めて剣を弾くと剣が大きく動かされ、すぐに攻撃できないタイミングを狙ってもう一度急所に槍を突く。それでもダメージが足りないのか、プレイヤーはまだ意識があるのか、執念深く動いて反撃の意思を露わにしている。

「ザイン、いろんな方向からもっと突け。何も1回で終わる攻撃が強いわけじゃないんだ。今のお前は手数を多くしてダメージを稼ぐしかない。」

「はっ、はい!」

 アドバイスを入れてザインに出来るだけ多く攻撃させるようにする。きっと急所に攻撃すればダメージが高くなるという知識を鵜吞みにしたんだろうけど、一撃で倒せるわけじゃない。

 倒せないなら急所に当てる回数を増やせばいいと思うけど、手数を増やして多方向から攻撃すれば不規則性が増して相手にとっても防ぐべき攻撃の数が増えるし、当たれば当たった分だけダメージもどんどん入り、例えSTRが低かろうが相手のDEFが高かろうが関係なく大きなダメージを叩き出せる。

 ザインもそのことを理解したのか、出来るだけ急所を狙うように、そして出来る限りの動きで手数を増やして攻撃し始めた。……と言っても、突っ伏したままの負傷したプレイヤーにそのことを教えたのは少し申し訳ないとは思っている。スンマセン。


 ローアの方は、双剣持ちのプレイヤーがまだ全身が燃えているけども、ダメージが高くないのか普通に武器を構えている。

 そのプレイヤーが走り出した時、ローアはパニックに陥ったのか、あたふたしながらその場で上半身だけをハチャメチャに動かしている。……これは援護に行った方がいいな。

 すぐさま走って向かい、横から双剣の攻撃を槍で突いて弾く。そのまま槍を左に回し、双剣持ちのプレイヤーとローアとも距離を離す。

 その間にアドバイスでもしておこう。

「ローア、デバフ系のスキルは持っているか?」

「あ、はい。……でも、どうしてですか?攻撃した方が手っ取り早く倒せるんじゃ?」

「なるほど。確かにそういう考えもあるが……お前は1回の攻撃で倒せていないのに、追撃を何もしていない上、攻撃されそうになっていたが?」

「ウッ」

「デバフなら[移動速度低下][被ダメージ上昇]といった相手の調子を下げる効果がある。それならたとえ攻撃を外しても、自身に攻撃が届くまでの時間にデバフをかけている時、かけていない時に差が生まれる。その間に攻撃を撃ち込めるなら相手へ攻撃を撃ち込みやすくなるし、攻撃が届く速度が低くなる分、避けやすくなるから自衛の効果も上がる。魔法は、攻撃だけじゃないからな?」

「は、はぁ?」

 少し元気なさげによく分かっていないような感じで返事をされる。

「まぁ、聞いて学ぶより実践して学んだ方が覚えやすいもんだ。やってみろ」

「え……えと、[減速空間(スロウ・フィールド)][足枷の鎖(ホーベル・チェイン)][追い風]!」

 ローアは思いつく限りのデバフを唱えた。名前からして移動速度低下のデバフだろう。

 デバフをかけられたプレイヤーは目に見えて移動速度が減少する。ダンゴムシが必死に足を動かして移動しているみたいだ。

「そこに魔法をぶち込め。さっきよりも撃てるはずだ。」

「[火球][水球][雷球]……


 相手はローアの方へ移動している間に数十回もスキルを当てられ、途中で力尽きてしまった。

 ちょっと、教え方が過剰だったかもなぁ……

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