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愚策を提示してみる

 考え事をしていようがお構いなしにプレイヤーは追ってくる。

 どうすれば俺を追ってくるプレイヤーの数を減らせるか。

 まず、俺を追うプレイヤーは主に2つに分けられそうだ。

 1つは、このままだと負けそうだから一発逆転のポイント稼ぎにやってくるプレイヤー、もう1つは、ポイントが減ろうとも順位に変動がないくらい大量に持っているプレイヤーだろう。

 それなら集まってくるのは下位にいるギルドメンバーと上位のギルドの一部と考えられる。

 下位のギルドのメンバーはどう足掻こうが負けるならポイントを稼げる僅かな可能性に手を伸ばしたいはず。

 上位のギルドのメンバーは変なことでも起こさない限り順位が変動することはないから俺をキルしに来ていると考えるのが妥当だろう。


 俺はこの考えから1つの作戦を思いついた。と言っても、出来るかは分からない。

 それは、「下位のギルドのメンバーを仲間として迎える」ことだ。俺は今の状況、キル出来なくなろうが別に構わない。それよりも無理に1人で戦ってデスして1時間を無駄にしてしまう方が残りの時間でキルできる回数が減ってしまうリスクがある。

 「下位のギルドのメンバーを仲間として迎える」。俺の考えとしては下位のギルドのメンバーは自分で(スピア)をキルしてポイントを稼げないから漁夫の利を狙うつもりなのだろう。だから、そんなポイントを狙うのを諦めさせて俺がキルしようとしたプレイヤーをキルさせるのだ。

 キルさせようと別のプレイヤーを連れてきたタイミングを狙って俺をキルしようと企む人が一定数出てきそうだが、俺は警戒する人数が増えるよりも、武器を振って攻撃してくる人が増える方が辛いので、裏切られても大丈夫だと思っている。


 上位のギルドは交渉の余地がない。俺を倒しに来ているのに、俺をキルできないのは、利害が一致できないからだ。それに、「後でキルさせる」という好条件を加えても、悩んでいる時間で戦闘が始まってしまうくらいならそもそもとして交渉しなければいい話だ。


 この考えをまとめた時、出来るかどうかは分からないと言った。プレイヤーが承諾してくれるかどうかじゃない。そもそもとして管理しているグリードが、この内容を承諾してくれるかだ。

「グリード、今通話できるか?」

 通話しようにもその手段を持っていない。今まではグリードが繋げたマイクで会話していただけだからだ。とりあえず小声で話しかけてみたものの、反応するような感じはなく、俺含めた大勢のプレイヤーが走る足音だけしか聞こえない。

 内容を承諾してくれないなら、あまりこの作戦をやりたくない。「神の刺客」という設定で送り出されたのに、なぜ協力するのか。そこら辺を問い詰められると、グリードたちが弁明しても、後々取り返しがつかなくなりそうな気がする。NPCらしくない「行動」はプログラムすれば動いてくれるわけだしどうとでもできるけど、「会話」はマズい気がする。なんかこう……NPCは高度なAIを使って話しているわけだし?

 とにかく、設定を無視した行動は独断でやりたくない。せめて許可さえ下りれば……


「───えるか?」

 その時、どこからか誰かが話す音が聞こえる。周囲を見渡したが、どこかで話しているというよりも、耳元で話している感覚に近い気がしてきた。

「聞こえるか!?スピア!」

 その声の正体はグリード。さっきの声に反応してくれたようだ。

「はい、突然ですみませんが、提案したいことが……」

「どうしてだ?別にやりたいならやっても構わないが……」

「実は、設定からしてあまりやりたくない行動なのでもしもの時があるから……」

 そう言って俺は作戦とそのリスクについてを説明する。


「確かにお前の言葉も一理あるな……だが、契約の内容なら俺が許可を出せばいいんだろ?いいぞ。実はな……今からプログラムを変えると、サーバーが重くなってかなりのラグが発生するから変更できないからこの2時間のやつを変えられないんだよ……想定していた以上にプレイヤーが上手くてお前に負担をかけちゃったからな。好きなようにしてこい。別に設定の『神々からの刺客』つったって内容を加えれば意味が変わるんだから」

 グリードはそう言ってきた。設定を大事にして言った俺の意見も尊重するけど、彼の言葉にも一理ある。設定が限定的なおかげで出来る荒業みたいなものか。

 安堵するように少しだけ笑みを浮かべ俺は一度足を止める。

 武器をしまい、プレイヤーの元へ手を上げながらゆっくりと近づく。俺が降参しようと手を上げていても今倒そうと考えるのなら誰だって攻撃してくる。数名ほどのプレイヤーが集まってきたとき、1人が走り出し攻撃してくる。

「ハアア!!」

「待ってくれ」

 飛び出してきた男のプレイヤーが槍を突いてきたとき、俺は持ち手を掴み攻撃を止めると、説得に入るように話し始める。

「どうして、お前ら全員俺を狙うんだ?」

「どうしてって……」

「ポイントのため……だよな……」

「俺は突然こっちへ来たのに、全員が殺しにかかってくるから……!」

 本当は俺から殺しにかかっているようなものだけど、元々そうじゃなかったみたいな雰囲気で話しておけば、「適応するために仕方なく殺していた」みたいな実は被害者でした的なムーブが出来るので話しておく。

「なんで、ここじゃ殺しが日常みたいになってるんだ?ポイントを付けて、順位をつけて……」

「は?だって、報酬があるから……」

「俺は別に報酬があるわけじゃない!!」

 誰かが話した言葉を遮るように叫び、さも報酬がなく、このイベントに参加させられているかのように必死に説明をし始める。報酬はあるけども。

「なのに、なんで俺に100ポイント?やりたいわけじゃないのにさ……」

 膝をついて泣き崩れたかのようにしながら話し情に訴えかける。そうすれば少しくらいはキルを躊躇するだろう。

「なぁ、お願いだよ!俺はポイントなんて要らねぇ。その分のポイントを譲渡するから、協力してくれねぇか?お前らは、ポイントが欲しいんだろ?」

 そしてそのまま交渉を始める。俺が言うのもなんだけど、こんな可哀想なNPCを放っておくわけにはいかないだろ!

「お!俺はこいつに味方する。こいつが頑張って俺にポイントをくれるなら、100ポイントを超えられるかもしれない……それに、100ポイント稼いだところで、勝てるわけでもないし……」

「わ、私も!」

「ぼ……くも……」

「……!ありがとう!!」

 3人だけが参加してくれた。残りの5人は参加せず、武器を構えたまま警戒している。

「じゃあ、早速だけど、この5人って君たちの仲間?」

「いや……違いますけど……」

「そう。」

 俺は武器をすぐさま取り出し、5人に突撃する。普通ならキルするべきだけど、峰打ちで留めておかないと交渉した意味がなくなる。

 鎖骨部分や腕、太腿といった動きを封じるような部位を狙って攻撃しHPをある程度減らしながらいい感じに弱ったところで3人にポイントとなるプレイヤーを差し出す。

 2人逃げて行ってしまったが、均等に分けられるという点ではよかったのかもしれない。

「協力してくれてありがとう。お礼のポイントだよ。」

 3人は嬉しそうな表情を浮かべ傷を負った3人をキルする。顔だけ見れば食事をもらえてうれしそうにする少年と少女に見えるが、絵面は喜びながら人を殺す快楽殺人鬼となっている。反応しづらい。


 3人をざっと説明すると、最初に俺に協力したプレイヤーは槍で突いてきた茶髪のショートヘアの人。後々裏切りそうだけど、無いとは思いたい。

 次に協力したプレイヤーはピンク髪で眼鏡をかけた少し臆病そうな人。髪型は、下ろしているけど、三つ編み?が混じっていてどう言えばいいかよく分からない。杖を持っているため、魔法を使うプレイヤーだな。遠距離攻撃の手段があるのはいいけど、カバーしづらいかもな……

 最後に協力したプレイヤーは、顎くらいまで伸びている青みのかかった髪をしており、目元にクマが出来ている根暗そうな子。見た目で決めつけるのは良くないからそういう偏見を持つのはやめておこう。武器は……盾か……カバーする側だけど、恐らく上位勢たちがやってくるから俺がカバーするんだろうなぁ……

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