欲深きものは一度神に屠られる
ギリギリ間に合った!!
危ない!!昨日のことから考えたらアウトだけど、セーフ!!
ユウトの振り下ろされた剣を右に躱し、一突き。[剣使い]の称号を持っているほどの実力があると思うので、避けられても何ら問題はない。ユウトは姿勢を低くして躱した後、振り下ろしきった剣を薙ぎ払った。
俺は自分の体より後ろにある槍の持ち手部分で攻撃を受ける。槍を左に回転し、がら空きの胴に向かって刃で攻撃することはできなかったが、ダメージを与えた。
「ハァッ!!」
ユウトはすぐさま立て直し、剣を持ち手である右手部分の下側から、首を刈り取るように斜め上方向へ斬り込む。その攻撃に反応できているし、体勢を直すだけの時間はあったので剣の振られた方向に向かって攻撃を流し、剣を思いっきり振ったのか少し崩れた体勢に向かって持ち直した槍を心臓に向かって一突き。
ただ、ユウトはその崩れた体勢から思いっきり剣を振り下ろし突きの方向をずらす。
ずらされた攻撃の方向はユウトの左足へと向かい太ももの中心へとヒットはしたが、重い一撃にはなっていない。おそらくHPが高く、急所でも大したダメージになっていないのだろう。
「ッ!![神の癒し]!」
それでも受けた傷は本来であれば足に力が入らなくなるような重い傷なのだ。プレコロでは傷やけがの状態がHP関係なしに反映されるのだ。
例えば腕が斬られて飛んだ時、HPが多くても斬られてしまえば一部の希少な回復系のスキルを使わなければ復活はしない。首を斬られると、HP関係なしに死ぬので、そこを狙う人は多いのだ。だからHPよりもDEFを上げる方が腕がなくなるとかの状況にはならないんだけど、HPのステータス上昇が高いのでやる人が少ない。
無駄なことを心の中で話しているうちにユウトの回復スキルが終わる。傷が塞がり元の状態へと戻る。
「[筋力強化][敏捷強化][動体視力強化][背水の陣]」
ユウトは自身を強化するバフをかけた。3つは名前の通りだと思うけど……[背水の陣]ってどんな効果だ?
意味としては「もう後がない」とかそんな意味だったけど…………
そんなことを考えていたらユウトが突撃してくる。バフの影響か、さっきよりも速くなっている。
「[神の一撃]!!」
スキルが叫ばれるとユウトの剣が光る。
俺は槍で右に流したが、その隣では天高くまで届く光がその場を焼く尽くす。その威力は周囲に地割れを起こし、その隙間から更に光を発するほどの威力だ。
それだけ威力が高いのならしばらく警戒しなくてもよさそう。そう思った時に
「[神の一撃]!!」
また同じスキルが叫ばれる。今度は薙ぎ払いを行っての攻撃。槍を棒高跳びの要領で上に跳び避けるが、攻撃の先にはさっきのような光が斬撃のような形をして飛んでいき、周囲にいたプレイヤーを溶かしてしまった。
スキルが連発されたので、俺はスキルを警戒する。しかし、ユウトは見るからに息を切らし汗をダラダラ流して疲れ切っているように見える。それにスキルの影響か、血涙のような赤いエフェクトを流し、吐血のように赤いエフェクトを吐いている。
「ハァ……ハァ……オラァッ!!」
疲れ切ったその体でもまだまだ元気であるかのようにひたすらに剣を振るう。ただ速さに加え、剣の重さが増し反撃するにも的確に弾かれてしまう。ただし、その攻撃は全て刃の部分で攻撃している。
つまりは、攻撃の方法を増やせばいいという話。
俺は普通の突きだけでなく、逆突き、薙ぎ払い、蹴りなどの多彩な戦い方を展開する。
ユウトの右腕に突きを行い、弾かれればその慣性に乗って下から槍の持ち手を回転させ左脇腹を攻撃する。心臓に一突きすれば剣で直接止められるので、力を入れたまま持つ部分を刃に近づけ、蹴りを入れ込む。どうだ!!STR210の威力は!!吹っ飛んだだろ!!
ゴホンゴホン!!とにかくユウトは浮いたまま体勢を崩しているので落下地点まで走り、攻撃の用意をする。
ユウトもそれに気付いているのか体勢を安定させこちらを向いて迎撃しようとする。
しかし、その動きは空中にあるためすぐに反応できない。つまり予想外の攻撃をすれば反応はできても動くことはできないのだ。
ユウトは突きが来るだろうと正面に注意が向いている。だから俺は槍を右手に持ち、突きが届く距離まで待つ。
そうして突きが届く距離になった瞬間、俺は右からの薙ぎ払いを食らわせる。
予想外だったのか、ユウトも反応できず、横に吹っ飛ぶ。
遠目に見ると倒れている「DEAD」の表示も出た。
確かにいい感じの試合を送ることはできたけど、ダメージを喰らうほどじゃなかった。
また歩き出そうとしたその時、後ろから走る音が聞こえる。すぐさま後ろを振り向き攻撃を受けたがそこには目を疑う景色が映っていた。
なんとユウトが生きているのだ。「DEAD」の表示は出たはずなのに。
「さっきは不覚を取っただけだ。これから本気で行くよ。」
生き返ったと思ったら、めっちゃ冷静になっている。さっきまでめっちゃ威力の高いスキルとか使ってそれで負けたのに、負けず嫌いだな~
「[神化]」
そのスキルが放たれると同時にユウトの体は光り、空を飛び始める。
「勝ってやるよ。こんな強いNPCにだって!勝って俺の強さを誇示するんだ!!」
ユウトは自分が強いことを証明するためなのか、独り言をぼやいている。
「[神の剣]」
ユウトの手から光る剣が出てくる。ユウトが[神の一撃]を使った時の剣よりも煌々と光っている。
「オラァッ!!」
振り下ろされた剣は[神の一撃]のように光を放ちあたりを破壊する。
「まだッ!!まだだッ!!」
そう言ってユウトはひたすらに攻撃する。
受けきっていたら体も、気持ちも疲れそうなのでしばらく逃げることにする。
ただ、その時間は長く続かず、突如として攻撃が止む。
俺はチャンスと思い突きを放ちにユウトのもとへと向かうが、攻撃が来ない。それどころか、ユウトは汗を大量に流し、何かに怯えているように止まっている。
近くに言った途端、アナウンスのように声が響き始める。ただ、途中からだったようで
「まぁいい。君のような欲深い者は、一度その『欲』という重罪を悔い改め、己の道を見直すのが定めだな。」
辛うじて聞こえたその声は、ノイズ交じりに、その声が何重にも重なって聞こえる、恐怖を具現化するような声だった。
「では、さよならだ。」
その声が聞こえた時、ユウトは体中から、様々な武器が出てくる。その武器はユウトの持っている武器のように煌々と光っている。
「ガ……ハ……」
「これは他言無用だ。」
その声は俺かユウトに向かって行ったのか、その声と共にもう聞こえなくなった。
ユウトは大量の赤いエフェクトを流し、そのまま頭に「DEAD」の表示を出した。
俺はその状況が呑み込めず、しばらく立ったままだった。
その状況に終止符を打ち込んだのは、セットしていたアラームだった。
「うわ、もうこんな時間!!」
心の中でそう叫び、すぐさまログアウトする。
俺はギアを外した後、少しこのゲームが面白く感じた。
「あの言葉から察するに、「神」たちの考えが分かるんじゃないのか?」
プレコロの設定は神の遊戯として始まった争い。
もしその遊戯が嘘で本当の狙いがあったとしたら……!
色々考えたけど、考えたところで別に答えが出ないし、明日聞こうと思えば聞けるしなぁ〜。
そうして俺はすぐさま寝るための準備を終え、明日のために寝るのだった。
最近、評価をたくさんもらえて、正直ウハウハですが、それと同時に見てもらえるということから、設定を滅茶苦茶にしすぎられないという責任感を感じたりしますね。
まぁ考えてるくらいなら書いてたほうが楽だよね!うん!




