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何回かチャンスを潰されるとイライラしてくる

 時間はそれなりに経っているけども、戦闘数が少なかったせいなのか、集中していたせいで時間が速く進んだように感じていたのか、ついさっき使ったような感覚がする[狂乱(フィーストオ)の宴(ブフランジー)]。

 俺がスキルを使用し武器を[クルセイア]から[イネイシァル]に持ち替えたことで、全員が武器を握りなおし、集中力を高めるように俺を見逃さないよう、じっと見てくる。

 最初に倒すべきなのはやっぱり目の前の女性だな。距離も近いし、後々攻撃パターン掴まれたら最初に見たみたいな槍を利用した変なキャラコンで懐に入られ続けられて普通に負ける感じがするから。


「ハァッ!」

 槍を体に近づけるように持ち直し、女性との距離を詰める。腹部目掛けて刺突しようと走るが、女性は横にステップを踏み回避する。

 そこに合わせて片手で突きを繰り出すが、女性はそこに合わせて懐に入り込もうと槍の隣を走ってこちらへ向かってくる。槍を持っている腕を曲げ、女性の死角から槍を当てるように動かす。姿勢を低くして避けられ、そのまま走ってさらに距離を詰められるが、それに合わせて片方の足を上げて蹴りを入れる。それも避けられ、お返しに足に2つの斬り込みを入れられるが、俺はそこ目掛けて腕を伸ばし、彼女の腕を掴み上昇したSTRの力に任せて宙に投げる。腕に斬り込みをいれられたけども。

 放り投げられた彼女は一瞬戸惑ったが、武器を構え、来るであろう攻撃に備える。俺は槍と剣の攻撃が来ないように高く跳躍し空中で彼女に対処しようとする。


 彼女は腕を伸ばし飛んでくる俺に短剣を振るが、予め予想していたので槍で右手の短剣を弾き左手の攻撃をわざと肩で受ける。最悪体力が減っても[愚者の矜持(フール・プライド)]の異常な回復力で治せばいい話だから。

 肩で直接受けた攻撃はしっかり当たったせいで腕を振り切れない。首を右に傾け腕を固定したのち、左手で持っている槍を思いっきり左から振り、腹部に思いっきり当てる。距離の調節は首が傾いているせいでうまく出来ず、刃の部分は当たらなかったけども、結構なダメージを与えられたのか、激しい痛みに悶えるように抑えている腕が激しく動く。報復が来るように彼女の右手の短剣が襲い掛かってくるが、左腕を放し、蹴りを食らわせさらに宙に放る。

 俺はそんな力が加わっていないのでそのまま落下していくが、出迎えるように2人が下で待っている。何なら2人ともこっちにジャンプして向かってきた。

 挟み撃ちするように向かってきた2人はそれぞれの武器を動かし、攻撃してくる。

 左側からは大量に飛び出してくる突き、右側からは空を切るブォンという音がうるさいくらいに聞こえる剣が俺をすりつぶすかのように距離を縮めながら襲ってくる。

 槍の刃と持ち手の端を細かく動かし、襲ってくる攻撃をいなす。槍をしっかり持っていなしているが、お互いの武器から加わる衝撃の方向がバラバラなせいで今にも槍が吹き飛びそうだ。

 ただ、いなしているのはキリがないので、俺は駒のように空中で体を回転させ、槍のリーチを生かして大きく振り、2人との距離を離す。

 2人は空中での回避に慣れていないのか、武器で受けたせいで遠くへ弾かれたので、襲い掛かってくるまでの時間を使い、女性に追撃を入れることにする。


 一度着地し、再度跳躍する。さっきと同じ高さに女性はいるが、高く浮いている間に体勢を安定させているため、さっきよりも攻撃は入れにくいと思う。

 それにさっき右腕を斬られたことや、わざと右肩に攻撃を受けたせいであまり力を入れすぎると、追加でダメージが入ってしまうので、いくらHPを回復できるにしても後々回復しきれずにやられてしまう可能性があるので、あまり無理はしたくない。

「ハァッ!!」

 女性は着地の事を考えていないのか、俺の方を向いたまま体を逆さまにし、双剣を顔の前面に出し俺に立ち向かう。俺は短剣を弾くことを前提に槍を逆向きに持ち縦に振る。

 槍を短剣に当てて弾いた時、女性は槍の持ち手にさっきと同じように刃を引っ掛け体勢を直しながら短剣を押し落下するよりも移動しながら俺の横に移動する。体を回して背中を数回斬りつけ、先に着地する。

「形勢……逆転だな」

 宙に浮いた俺は女性にそう言われてしまう。にやけながら追撃を入れようとするが、同時にユウト達も着地点についてしまう。

 俺はさっき彼女が空中で移動したように相手の武器を利用してこれから来るであろう攻撃を対処する。


 最初に槍の突きが何度も飛んでくる。槍の軌道に重ねるように持ち手の端で突きを繰り出し、空中に留まる。刃で攻撃すると、刃先が細すぎてそのまま軌道をずらすだけになるからね。

 飛んでくる突きを対処しているとすぐに間から剣がひょこひょこ出てくる。剣は突きではなく、弧を描くように大きく振って攻撃しているので、軌道上に槍を重ねて剣を無理矢理止めて剣の刃を握る。少し痛いけども引っ張って普通よりも素早く降りることが出来た。ユウトは振り切れば俺が吹き飛ぶと考えていたのか、槍を傾けずらすとその流れに沿って体がほんの少し動いてしまった。

 ただ、剣を握って無理矢理降りてきたことに反応していたのか、少し不安定な体勢のまま、振り返って薙ぎ払いを繰り出してきた。槍を縦に構えて剣を止めると同時に、不安定で今にも倒れそうな状態に拍車をかけるように剣を押し返す。遠心力で倒れそうになった時。援護として女性が間に割って入って乱雑に双剣を振る。攻撃を弾き、ダメージを受けなかったものの、その間にユウトは立ち上がってしまった上、反撃もできなかった。

 それにさらに畳みかけてくるように槍を持った男が突きを加えて距離を取らせてきて、ユウトと女性も追撃を入れるように息を合わせて攻撃してくる。

 せっかく有利になったと思えば相手の連携ですぐさま不利になってしまった。


 もうやだーーーーっ!!!!!!


 グリードが俺がずっといたら良くないって言ってたのは分かるけども、もうちょっと、爽快感というか、スムーズにキルさせてよ!せっかく自分の立ち回りが上手くいって相手をキルできると思ったら、援護が入って倒せない!?敵キャラが主人公を倒せない時に舌打ちする理由が充分に分かるよね!!運営に協力している以上、言いつけは守らないとだけど、俺だってプレイヤーだよ!もっと楽しませてよーーッ!!!


「あああああああ!!!![愚者の矜持(フール・プライド)]!!!」


 俺はそのままスキルを使用してしまった。心の中で葛藤していたけども、傍から見れば突然正気を失ったように叫んでスキルを発動してるんだから、後々思ったけども変質者にしか見えないだろこれ……

 発動の代償にHPを失うが、それに矛盾するように体の傷が癒えていき、減ったHPが少しずつ戻っていく。俺からは見えないが、顔に傷のような模様ができ、目がより赤く染まる。


「すぐに……終わらせる!」

 そのまま3人を睨み、槍の先を向けてそう宣言する。

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