決意に割り込んできた人たち
投稿遅れました。活動報告は半分逃げるための言い訳と思っていただいても構いません。
4回分出せてないのでその分も頑張っていきます!
しばらく双剣と槍を交えているが、一向に物音が収まる気配がない。足音は聞こえなくなってはいるものの、ガサガサと茂みの揺れる音がずっと聞こえる。何なら話し声が聞こえるし。
「オイオイ!援護に行かなくていいのか?」
「あいつがやりたいって言ったんだからいいだろ!」
「でも!」
「俺は1回あいつと戦ったことあるんだからいいんだよ!お前もカトのやつがやられれば1人で戦いに行ってもいいんだぞ?」
「いやいや!こういうのは全員で行って勝つもんだろ!!」
話の内容的に目の前で戦っている彼女のパーティー仲間なんだろうけども、1人が俺と戦ったことがあるのか、「みんなも強さを実感してほしい」みたいな感じでソロプレイすることをお勧めしている。こんなこと言うの大抵危ないやつ渡そうとしてる人だろ。
それはともかく、もう1人、援護に行こうか悩んでいるような人は、おどおどしているのか彼女に俺の攻撃が当たりそうになると、ガサッと大きな物音を立てる。どっちが物音を立てているかは分からないけども何となくは分かる。どちらにせよ、今は攻めてこないのなら、目の前の敵に集中するべきだな。
彼女は相変わらず武器が壊れることを恐れているのか、左手に持っている短剣の攻撃頻度が少ない。さすがに武器は今持っているものとそれが壊れた時用の予備として何か持っているはず。俺は予備の武器なんて持っていなかったけども。彼女は武器を変えたいだろうが、俺が攻撃している限り、武器を替えるタイミングでやられるということが分かっているのだろう。勿論、俺も分かっていてやっている。手を抜くつもりはないから。
ただ、武器が壊れそうだとしてもかなりの猛攻をしのいでいる。変に防御しないで攻撃する分、空を切る攻撃が増えているからそれだけ消費する耐久値も少なくなっている。ただ、それは俺が攻撃を避けているから。
「詰み……だな」
そう言って俺は彼女が振った短剣を弾く。ヒビの入っていない、右手に持っている短剣なので、壊れるようなことはないが、俺は続けざまに武器を狙って攻撃を行う。
武器と相手の体が重なるタイミングをなるべく狙うようにして突きを何度も行う。武器を壊さないよう、腕を振ってしまえば攻撃を防ぐ方法がなくそのままダメージを受ける。こうすることで相手は攻撃を受けないといけなくなる。
「クッ……!」
険しい表情を浮かべながら攻撃を防ぐ。その顔を直に見たわけではないけども、俺はその表情を浮かべると同時に、ほんの少し、笑みを浮かべる。
ナイフの刃越しにほんの少しだけ見える相手の顔。そう、ヒビ割れを起こし短剣の刃が割れ、壊れたのだ。
俺がこの前、槍を破壊されたときも使うことはできたが、使い勝手は数段悪くなっている。それに槍は折れた持ち手の棒を工夫すれば少しは使えるけども、短剣は刃が砕けてしまえば掌1つで包み込める大きさの持ち手だけ。小石を何個も投げられる方がまだ火力が出ると思うほどに使えないだろう。
槍を上から手で押すように動かしながら振り下ろす。肩に刃が当たりそうになる時。
「あまり……」
槍を振り下ろした反対方向にバネが跳ねるように弾かれてしまう。
「……舐めるなよ!!」
右手に持っている短剣を逆手に持ち双剣の強みである手数を捨て、リーチで不利な槍相手に短剣一本で勝負するつもりだ。
覚悟を決めたようにこちらを睨み、武器を構える。ただしその覚悟が水の泡と化すように
「ちょーっとストーップ!!」
槍を持った男がさっき声が聞こえた方向から走ってきて、女性との間に割り込む。眼鏡をかけ汚れが1つもないきれいなスーツを着用しており、髪の毛が少し長くつやつやしている。見た目としては「執事」とかに近いのだろうか。動きは少しぎこちない感じで執事感はあまりないのだけども。
その男に仕方なくついて来るように遅れてもう1人の男がやってくるが、見覚えがある。
煌びやかな装備に身を包んだ1人の男。前見た時はそこまでしっかり見ていなかったので改めてみると、結構宝石が埋め込まれていたり、マントを付けていたり……いや、前より装備が増えてるのか?
ともかく、その男の名前はユウト。
前戦った時は「神」であるグリードにスキルのルール違反みたいな感じで決着がついてなかったんだよなぁ……
そういうわけで久々の再開という意味を込めてユウトに話しかける。
「久しぶりだな。ユウト」
「ん?やっぱり覚えてくれてたのか?最近の技術ってすげぇな。」
ユウトは女性に双剣を替えるよう目で合図を送り、女性は会話している隙に双剣を交換する。さっきのサバイバルナイフと似ているが、刃がよく見る感じの灰色をした金属の色をしている。
「覚えているか?あの時決着がついていないことを」
「ああ勿論。反省してしっかり自分のプレイヤースキルを磨いたしな。それに、今は3対1。負ける要素はないはずだ。」
「そうか……でも俺も負ける要素が見当たらないようだが……また決着がつかないまま終わるか?」
俺はユウトがキルされて終わったことをあざ笑うように少しかがんで見上げるようにユウトを見て、にっこりと笑ってそう話す。
それがユウトにとっては煽りと認識したのか、ユウトはすぐさま剣を抜き、無言のまま斬りかかってくる。
ユウトは前回戦った時、避けること、攻撃はうまいが、攻撃の後隙を作りやすく、ダメージを受けた後に回復して焦ってしまっていた。
剣を縦に振り下ろし地面に当たる前に俺が避けた左側に刈り上げるように剣を振る。体を反って剣を避けても俺が投げたブーメランのように途中で動きが止まり真っ直ぐに俺の方へと向かってくる。
体を反ったまま槍で剣を受け止め、右に流す。体勢を安定させようとしたが、流された剣は動きを止め横からさらに追撃を加えてくる。諦めを露わにするように無意識にため息が出てしまい跳躍して攻撃を避ける。
ユウトからの攻撃を避けることはできたが、着地点にさっきの執事のような男が立ちはだかっている。男は槍を持ち、着地の硬直に合わせて突きを入れるつもりなのか、左手を後ろに伸ばし、すぐにでも突きが出来るよう待ち構えている。
「ハァッ!」
少しだけ自信なさそうに声を出し突きを数回繰り出す。鋭く尖った槍は高速で俺の下へ飛び出してくる。
俺は内心焦りながらも無表情を貫き、槍の持ち手を空いての槍の持ち手に横からぶつけて軌道を逸らし、ぶつかった時に腕に力を込めて落下中にほんの少しだけ動く。
追撃に数発、落下のタイミングを考えての急所を的確に狙った攻撃を繰り出してくる。どれか1つの攻撃を防げなくなっただけで致命傷になるような攻撃ばかりだ。
同じように対処して全ての攻撃を捌ききった時、あまりに集中していたもので、今から空中の姿勢を正すと地面に膝が当たってしまうほどの高さまで落ちていた。
槍を支えに少しだけ浮き上がり、後ろに下がりながら着地する。
双剣を握ったまま女性が追撃しようと追ってくるが、着地して力を籠めることが出来るタイミングだったので、槍をしっかりと握り女性の動きに合わせて突きを繰り出す。
「避けて、ここ![籠の目]!」
スライディングしながら頭に繰り出した突きをスレスレで躱し、発動者を中心に球状に斬撃を飛ばすスキルを放つ。力を籠めたのが仇となったのか、槍を手元にすぐ戻せず、右腕と左脇腹に浅い傷を負ってしまった。
一歩下がって体勢を立て直し、一度3人の位置関係を見る。
目の前に双剣を持った女性、左奥に追撃しようと追ってくる槍を持った男の人、そして女性がつくってくれた追撃のチャンスをものにしようと上から飛んできたユウト。そして、少し後ろにはこれ以上後ろに下がらせないよう、木々が生い茂っている。
さすがに逃げるわけにはいかないので、槍を改めて構え、一度深呼吸した後、口を大きく開いて
「[狂乱の宴]ィ!!」
視界を赤く染め、敵をさらに赤く染める。ちょっと本気出す。