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罵りあいと少しだけ懐かしい武器

「ハァッ!!」

 槍を振る時に俺が声を上げると、それに呼応するようにエンジンの音が大きく響く。チェーンソーの刃と槍がぶつかると、火花を散らしぶつかり、槍が弾かれる。火花には少し熱があり、時々火花が飛んで手の甲に当たると熱くて思わず槍を離して手を引っ込めそうになる。

 大柄な男も俺の猛攻に負けじとチェーンソーを振り、ダメージを与えようとマスクから息を大きく漏らしながら俺に攻撃する。チェーンソーの刃が常に動いているため、攻撃を槍で流すことが出来ず、槍で攻撃を止めるのだが、この時に両手で槍を持たないと変な方向に飛ばされそうなくらい様々な方向に槍が細かく動く。まるで[クルセイア]が俺から逃げたいかのように。


「どうした?攻撃の手が止まっているじゃないか」

 男が俺に挑発する。俺は負けじとゆっくりしゃがむように膝を曲げながらチェーンソーを押さえている槍の位置を低くしていく。男は力を入れてチェーンソーを押し込んでいるので、しゃがめば男は俺に体重をかけるように頭上の方へと動く。

 槍にかかる負荷は大きくなるが、壊れないだろう武器を信頼し、この体勢になった。

 男は体重をかけるようにこちらに攻撃しているのなら、今攻撃している部分でもバランスをとっているということ。

 俺は男の足を左足で払うと同時に、槍を持っている右手を素早く下げて刃の方を地面に刺し手を離す。そして仰向けになるように素早く倒れ込み、空いている手で体が横に素早く動くように地面を押す。

 男は足を払われたのと、体重をかけた部分がほぼ同時に無くなったので体勢を崩しうつ伏せに倒れる。

 俺はそれに巻き込まれないよう素早く避けた。ただ、槍で男のチェーンソーを止めていたこともあったので、[クルセイア]は男の腹の下にある。

 代わりの武器として[武芸者の槍]を取り出す。[イネイシァル]にしようか迷ったが、それは[狂乱(フィーストオ)の宴(ブフランジー)]か[愚者の矜持(フール・プライド)]を使用したときの攻撃主体の時。久々に使うから改めてしっかり使えるか怪しいけども、手に馴染んではいるはずなので今まで使っていた武器を取り出したのだ。

「久しぶりだな。」

 槍が喋るはずもなく、独り言にはなるが、今までにも槍に感謝を言うような場面はあったので、言っておく。半分本心で言ってる感じだけども。


「ハッ、さっきよりもボロそうな槍じゃねぇか。チェーンソーで真っ二つに折ってやる」

「どうかな。こいつも頑丈だからな」

 男は俺が槍を取り出している間に立ち上がり、チェーンソーを構える。それに対抗しようと肩に槍を乗せるように持ち、目の前に立つ。

 さっきと同じように武器を交えるが、そこまで変わったことはなく、何度も槍はチェーンソーに弾かれる。出来るだけ早く突きを繰り出してもチェーンソーをすぐに軌道上に重ねられ有効打を与えられない。


 少しだけ戦い方を変えようと考え、突きだけでなく、振ることも視野に考えて攻撃してみる。元々振る攻撃をしなかったのは、振りかぶっている動きを見て、防がれてしまうと考えたからだ。力いっぱい振れば大抵の武器は力負けして攻撃が届くことが多いが、最初に攻撃を弾かれたときに、力いっぱい振ったらその力が乗ったまま、変な方向に弾かれると思ったからだ。

 そのため、槍を振って攻撃するときは、あくまでフェイントや牽制のためだ。

 右斜め上から槍を振り下ろし、槍の持ち手の端を足に引っ掛け止めた後、蹴るように足を前に出し、男の脛に槍をぶつける。男は新たな動き方に惑わされ、反応できずに脛に槍が当たる。力は込めていないものの、結構な速度で振っていたし、弁慶の泣き所に当たっているのでダメージは相当なものだろう。

 槍を男の脛から離した後、槍を右に回し刃の部分を左から男の頭部目掛けて振る。男がチェーンソーを動かし防御の態勢に移った瞬間、槍の動きを一度止めて再度持ち手部分をぶつけるように逆方向に振る。ただ、男も負けじと俺が槍を止めた後に、チェーンソーを縦に振る。体を右に一歩分動かし刃をスレスレで避けると、チェーンソーのエンジン部分を踏みつけがら空きの上半身に槍を叩きつける。

 よろけた男は防御のために一度チェーンソーを手放す。その体にさらに攻撃するため、突きを数発男の体中に食らわせる。

 槍が刺さった部分から赤い血のエフェクトが溢れて蒸発するように消える。よろけたタイミングで[クルセイア]を足で回収し、インベントリにしまう。せっかくならこれ([武芸者の槍])をこの戦闘の最後まで使ってあげたいからだ。

 男は再度[チェーンソー]のスキルを使用すると、地面に落ちていたチェーンソーがテレポートするように消え、男の手に移動した。


「やるじゃねぇか……」

 男は威勢を張ってそんな言葉を発しているが、息切れした声ではそこまで脅威に感じないし、体力も、HPも限界なのだろう。だから

「威勢張ってそんな言葉言って、勝てんのか?」

 煽ってあげた。なんか煽ったら乗ってくれそうなので適当に煽ったけどもその言葉は男に直撃して逆鱗に触れたらしく。

「ああ!!勝ってやるさ!」

 さっきとは打って変わって強気に攻め始めてきた。ただ、さっき攻めてきた時よりも速く振られている。少し力任せに振っているせいでチェーンソーの刃の向きが振ったときの軌道に重ならず、当たったとしても力がしっかりと籠らない。

 といっても体を器用に動かして攻撃を避け、隙あらば刃先で小突いてあげる。

「クソッ!!クソッ!クソッ!何で当たらねぇんだよ!」

「さぁな、死んでから反省してみろ」

 男が怒りでチェーンソーを振る中、俺は冷静に避けてからそんな言葉を最後に、男の四肢にそれぞれ一突き。そのままHPが0になった男はその場に倒れ、「DEAD」の表示を出す。


「さて……あいつらが逃げた方向は……」

 武器を[クルセイア]に持ち換えた後、俺はそう言い、さっきの3人組が逃げた方向を凝視する。さすがに時間が経ったので見える範囲にいるわけではないが、一心不乱になって逃げているのであれば真っ直ぐ逃げるか、走りやすそうな開けた道を選んで逃げているだろう。だが、さっき茂みのある部分を通っていたと考えるのなら真っ直ぐに逃げたと考えるのが妥当だろう。

「んじゃ、走りますか。」

 数回ジャンプをした後槍を持ったまま走り出す。茂みはハードルを越えるように片足を伸ばしながらジャンプして飛び越え、大岩があれば片手を乗せてそれを軸に進んで行く。

 数分経っても見つからず、走り続けたが、ふと自分とは違う走っている音に気付く。一度立ち止まりその音をしっかりと聞く。

 不規則に聞こえる草木の揺れる音。耳を澄まして5秒程で音が止まったが、俺は分かる。すぐに振り向き槍を振る。

「どいつか知らねぇが戦うつもりなんだな!!」

「ああ!そうさせてもらうよ!」

 サバイバルナイフのような双剣を持った軍人のような迷彩柄のズボンとタンクトップを装備した女性が斬りかかってくる。

 自主的にやってくるくらいだから、かなりの実力と自信を併せ持っているのだろう。

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