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空気を読むことは大事

 お互いのパーティーで持つ武器を揃え、フウまる達は飛び道具、ラン達は双剣を持つ。

「ハァッ!!」

 フウまるがクナイを上に投げると、さかなは無言のまま息を合わせるようにクナイを投げる。

「正面は任せたぞ」

「分かってる!」

 フウまるはクナイを十数本上に投げると、さかなが攻撃を仕上げてくれるので、その間にランやチルアへ牽制しようと、正面を向く。

 ランとチルアはさかなの準備などお構いなしに向かってくるのでフウまるはここで足止めし、さかなが攻撃できるまでの数秒、クナイで足止めする必要がある。

「それでも、数秒は結構キツイかもな……」

 フウまるは弱音を吐き、クナイを構える。

「来るぞ!」

「先に行かせて。[加速]」

 速度上昇のバフをかけてチルアが先に進む。

 フウまるは集中したのか、声を出さずにクナイを3本投げる。頭部、右腿を狙って投げられた2本のクナイをチルアは両手の短剣を使い弾く。

 残った1本はチルアの足元の地面に刺さり、チルアの左足を引っ掛ける。

 バランスを崩したチルアは転び、格好の的となってしまう。

「今だ、さかな!」

「ああ!」

 さかなは知らないうちにスキルを使っていたのか、さっきよりもクナイの速度が上がっている。その事を考えてクナイの位置も調節してある。

 投げた十数本のクナイは上に投げられたクナイに当たり、一緒に投げたクナイを当て少しずつ軌道を変え、チルアに5本程迫ってくる。

「やば……!」

 この間約2秒。チルアが起き上がるには充分な時間だが、フウまるが黙って見るはずもなく、クナイを投げて妨害し、起き上がらせないようにしていた。


 クナイは真っ直ぐチルアに向かう。転がって避けたり、転がりながら短剣を振るってクナイを弾くが、さかなは地面に刺さる直前のクナイを新たに投げたクナイで弾き、チルアにクナイを横から刺そうと試みる。

 気づかないまま避けていたチルアにクナイが横から刺さろうとしたとき。

 ランが一度チルアの元へ向かいクナイを弾く。しかし、弾いたのはチルアの側を通りそのままフウまる達の元へ行くためなのか、一回弾いた後そのままチルアの元を離れていってしまった。

 それでも一瞬だけ邪魔がなくなったため、チルアは体勢を立て直すことが出来た。

 フウまるは右手に持っている刀でランを迎え撃つ。しかし、ランの持っている短剣に触れれば刀を失ってしまう可能性があるので牽制程度に振るだけだった。

「浅いぞ!!いつもと違うけど、どうした?」

「お前、分かってて言ってるだろ!」

 2人は軽く会話をしながら武器を振る。ただ、フウまるがランの武器に触れることが出来ないため、振っても風を切るような音しか聞こえず、金属音は1つも聞えない。クナイを投げても、短剣に触れることなく消えるだけだからだ。

「このままじゃ埒があかないな……」

 フウまるは刀を振り、クナイを投げながらそんなことを口にする。

「フウまる、こういう事じゃないのか?」

 さかなは突然、後ろでフウまるに話すと、クナイを1本投げる。

 ランがクナイを短剣で弾くと、短剣がジュウと何かが溶けるような音と共に煙を上げる。

「……何したんだ?」

「ん、解毒剤塗った」

 さかなの普通な回答にフウまるは一瞬混乱したが、すぐに理解した。

 短剣の纏っている黒い何かは毒。よくよく思い返せば、チルアが「蟲毒(こどく)」と言っている時点でどのような形であれ毒であることに変わりはない。さかなはそう思い解毒剤を塗ったクナイを投げたのだ。

「なぁるほど!別に毒状態になった時じゃなくても、毒属性のものであれば解毒剤は有効……なのか……?」

 フウまるは一瞬理解したが、解毒剤がそこまで優秀だとは思えずまた混乱してしまった。

「うっそ。そんな弱点あったの?私の中で1番強いスキルだと思ってたからそういうの無効だと思ってたのに……」

「まぁ、試す機会ないってのもあるんじゃ……?」

「どちらにせよ、無くなったわけじゃないし、そこまで落ち込まなくても……」

 チルアが解毒剤が効くことを知り、膝をついて落ち込んだことに対して、フウまるとランは少しフォローを入れる。

「お前もなんか言ってやれよ」

「ん?そうだなぁ……『最強の毒、ここで敗れたり!!』」

「ちげぇよ!!逆だ逆!」

 フウまるが毒の対処法を知り機嫌のいいさかなに対しても何か言うように求めたが、かえってチルアを落ち込ませてしまった。

「ほら?まぁ勝てばいいわけだし……」

「そうそう、勝てばいいのよ勝てば!敵の俺が言うわけではないけども」

「フウまる!俺たちが勝たないと、ギルドの皆とベンケーに顔が上がらなくなるぞ」

「ちょっとは空気読めよ、お前。」

 続けざまにランとフウまるがフォローしてあげるが、さかなはそんなことを知らずに普通に勝ちにこだわる。


「もういいよ……」

 チルアが真っ白に燃え尽きるように紫色の髪や服、肌など体の様々な部位から色が落ちていく。座り込んだまま、涙を流し、どこからかチーンという鐘の音が聞こえる……気がする。

「勝てば……いいんだよね……」

 力のないか細い声で話しながらフラフラと立ち上がり短剣を構える。

「……なぁ、俺たち降参した方がいいか?ラン。」

「戦ってほしいけども、チルアがこんなんじゃな……」

「あはは……フウまるとさかなどっちとも倒してー……」

 ランとフウまるが少し離れた距離で会話をするが、チルアはふにゃふにゃと動き、少しずつフウまるとさかなの元へ近づく。

「ハァッ!」

 さかなは向かってきたことに対し遠慮なくクナイを投げる。

「「あ……」」

 チルアはクナイに気付くことなく、首元にクナイが刺さりその場で倒れ込む。

「……」

「……」

「どうした?」

 フウまるとランが何とも言えない空気の中その場に立ち尽くし、さかなは敵をキルしたのに、どちらも反応しないことに疑問に思う。

「ラン……この戦い、もうやめにしないか?」

「ああ、そうだな……」

 2人とも、生気を失ったように目が虚ろになっていく。

「さかなにもしっかり言っておくからさ……」

「ああ、そうだな……」

 そう言った後、2人はたがいに背中を見せ、帰っていく。

 ランは武器をしまい、すぐに森の奥へと消えていったが、フウまるは、さかなの手を掴み、立ち止まる。

「どうしたフウまる?突然戦うのをやめて?」

「さかな……お前学校とかでハブられたことないか?」

「いや……みんな俺の話に必ず笑顔になってくれていたぞ?喧嘩している時も、泣いている子がいるときも。」

「それ……苦笑いだな。」

「冗談を言うなよ、きっと俺はクラスの人気者だ」

「さかな、空気を読むっていうのは大切なんだ……今度一緒に勉強しような」

「?空気は読めないものだが……」

「……もうだめだこいつ」

 次の話からスピアが出てきます。終わり方変になりましたが、ユルシテ。

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