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飛び道具が跳ねまわり、短剣は全てを呑み込む

 チルアはヒズミの指示通りに周囲から集まってくる敵ギルドのプレイヤーをひたすらに処理していた。

 パーティーメンバーのみんなに横やりが入らないように、走って、斬撃を飛ばして、とにかく頑張ってプレイヤーを処理し続け体が疲れ始めた数分前、そこを境にパッタリとプレイヤーが来なくなってしまった。

 チルアも処理している途中、この状態が続くとフウまる達にとってかなり不利じゃないかと薄々気づいていたので、来なくなったということはそこまでするメリットがないとして誰かが中断したのだろうと考えた。

「さてと……援護に行こうかな……」

 やることがない上、今この場に残っているパーティーがギルド長であるランと彼女しか残っていない以上、やることは1つ。援護だ。


 とは言っても、ギルド長同士のプライドを懸けて一騎打ちしているという可能性がある以上、双積極的に出ることが出来ないので、ギルド長(ラン)から声をかけられたときに援護に入ろうとしか考えていない。

 さかなも同じく、ギルド長(フウまる)に声をかけられたときしか考えていないので、お互い考えることは同じ。つまり───


「……そうなればまずはここで戦闘……といったところか。」

「そうっぽい。私も同じこと考えてたから」

 そうお互いが改めて武器を構えて戦いの火蓋を切る一歩を踏み出したその時。

「「ちょっと手伝ってくれ!!」」

 お互いのギルド長から同じ声が2人に伝わる。

 戦い始めようとしたのを見て、ギルド長の2人は「今は手が空いている」と同じように考え、助けを求めたのだろう。それに、このまま続けても状況が互角のままだったので、何か状況を変えるスパイスのような刺激が欲しかったのだろう。

 その声を受け止めたチルア、さかなは仕方ないとでも言わんばかりに軽くため息をつき、それぞれのギルド長の元へ歩く。

 そしてお互いに武器を構える。

 それぞれの構え方を見れば、アニメでよく見る決めポーズのようにも感じるような立ち方になっているが、対比するようにお互いの立ち姿を並べれば「戦う」という気持ちの籠った構え方なのだろう。

「よっしゃ!これで最後にするぞ、フウまる!」

「分かってるさラン!そして行くぞさかな!」

「言われなくても頑張るさ。フウまる」

「私だって負けられないもの!頑張るよ、ラン。」

「ああ!俺たちのチームワーク、見せてやるぞ!」

 ランが武器を双剣に切り替え、形状をチルアの短剣にそろえるように紫に変更するとチルアと短剣を1本ずつ交換する。2人の短剣をごちゃ混ぜにして惑わせるつもりなのだろう。だが、ランの狙いはそうではなく。

「[真似っこ(ミミック)]」

 ランはチルアの武器の性質をコピーする。そして、チルアがスキルを唱える。

「[蟲毒(こどく):腐敗]」

 紫色に彩られたチルアの刃が錆びて溶けるかのように段々と、様々な色の絵の具を混ぜすぎた黒ともいえない暗く汚い色に変わっていく。

 そしてその性質を真似してランの刃も同じように色を変える。


「俺らだって味方の技をパクるのは当たり前だよ!」

 フウまるがランとチルアを見て叫ぶ。左手にはクナイを数本持ち、腰にも何本か携帯している。

 さかなは右手にフウまるからもらった刀を持ち、飛び道具も構えている。

 フウまるが先に動きランの元へ走る。その途中、頭上にクナイを投げる。

「させない!」

 チルアがフウまるの元へたどり着くと、横からバツの字に双剣を振る。フウまるはその攻撃を横に飛ばして躱す。その時、短剣の振った軌道に刃の色と同じ禍々しい何かを残す。

「隙あり!」

 チルアがまた追いかけ始めたその時、さかなはフウまるに仕掛けてもらったクナイと自身の投げたクナイを組み合わせてチルアの首元に変則的な軌道で攻撃をする。

 ランがその攻撃に気付き、チルアにたどり着くまでのクナイの軌道に向けて短剣を振る。チルアがさっき残したような軌道に沿った何かを通す。クナイがそこを通った時、バグにより突然消えたかのように黒い何かに触れたクナイだけが消える。

「さぁ!お前の相手は俺だ!」

 ランがさかなの方に振り向き、突撃する。

 さかなは多方向にクナイをばら撒き、さらにクナイを投げてランへと様々な軌道の攻撃を繰り出す。

 ランは走りながら短剣を振る。軌道上に残った何かと短剣に触れた時、さっきと同じようにクナイが消える。

「それならば!面攻撃だ!」

 さかなはランめがけて爆弾を投げる。黒い何かに触れて消えてしまうのを防ぐため、地面めがけて投げる。

「チルア!あれ頼む!」

「分かった![腐敗伝播(コラプス・カスケード)]!」

 チルアがスキルを唱えると残っていた黒い何かがスキルに共鳴するように一瞬、黒く禍々しく色を変える。さかなの投げた爆弾によって起こった爆発はその黒に爆発が広がるよりも速く、全てを黒に変えられ、ランに直撃することはおろか、掠りさえもしなかった。

「なるほど……!」

 さかなは2人の使用しているスキルの大まかな効果をなんとなく理解する。発生した黒い何かは、触れた全てを呑み込み、無へと変える、そんな内容のものだと。

「フウまる!黒いのに触れるな!攻撃を通せないし、触れれば基本的にアウトだ!軽傷で済むとかじゃない!気をつけろ!」

「分かったぞ!」

 フウまるはチルアに追いかけられたまま大声で返答する。

「とは言ったものの、対処できないんじゃ、意味がないなッ!!」

 フウまるはチルアに追いかけられている時、急に振り向き刀を振り下ろす。

 チルアに短剣で防がれると、突然刀が軽く感じられる。一度彼女から距離を取り、刀を見る。

「どんだけヤバいんだよ……」

 その光景を見たフウまるはいつものように驚くことなく、ただ成す術がなくなった人の様に、嘆くばかりだ。

 刀は一瞬振れただけで刃が溶けたかのようになくなり、現在進行形で鍔が無くなっていく。

「さかな!飛び道具、100くらいくれないか?」

「分かった!そこの地面めがけて投げるからちょっと待ってくれ!」

「ああ!……ってハァ!?」

「仕方ねぇだろ!インベントリ操作できるように見えるか?」

「まぁそうだけどさ……」

 フウまるが笠の下から頭をかいていると、クナイが一気に飛んでくる。

「おわぁ!?」

 フウまるを狙っているかのように大量のクナイが飛んでくる。ただ、さかなは今の状況を見て、クナイをばら撒くように投げていたので、2人は投げている本人であるさかなに近づけず、クナイが集まってくるフウまるの方を後ろから来るクナイを警戒しないといけないので攻撃が迂闊にできなかったのだ。

 フウまるはクナイを避けるため、忙しなく動くものの、チルアとランは逆に動けなかった。

「マジか……」

「この本数をこんな器用に操れるもんなのか?」

 狙っていないならまだしも、これを狙って自分自身に向かって撃ってくるものならひとたまりもない。

 そんな恐怖も感じながら、クナイが跳ね回り切るのを待って少し立ち止まるしかなかった。


「ハァ……今日一番で疲れた。」

 フウまるはさかなからのクナイを集めきり、刀をしまう。

「さぁ……ハァ……俺たちも……息をそろえるとしますか……」

 走り回って疲れたのか、肩を上下に動かしながら呼吸しそう話す。2人の呼吸はそろっていないが、連携は息を合わせてできるのだろうか……

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