飛び道具の使い方は人それぞれ
あれだけ活動報告に書いていたのに、投稿遅れました。ゴメンナサイ。明日も投稿します。……多分。
先陣を切ったのはフウまる。それなりに距離がある中でスキルを使用し瞬間移動のように詰め、最も近くにいたチヨメ目掛けて刀を振る。
「ヤバ!!」
チヨメはギリギリのところでしゃがみ攻撃を躱す。しゃがんだまま持っている錐をフウまるの体に数本投げつける。
「[風車]!」
後隙をスキルでカバーし、錐を全て弾く。少し遅れてフウまるの後ろからクナイが数本飛んでくる。
クナイは何も狙っていないのか、全員の頭上を通り抜けるような軌道を進んでいたが、突如としてカーブを描きチヨメ目掛けて飛んでくる。
それでもクナイが飛んできたことを把握していたのか、冷静に低い姿勢から横にステップしクナイを躱す。
「あんま先進むんじゃねぇぞ?フウまる~」
「いいじゃねぇか!逆にこの刀でどう遠距離攻撃すりゃいいんだよ!?」
奥から出てきたのは、長髪の無精髭が生え、額にタスキのようなものを巻いている30代後半程の男だ。腰には大量の飛び道具を装備している。クナイを投げたのはこの人だ。
「ま、何はともあれ、ここで勝てるとなれば大きいですぞ。そう焦るでない」
さらにもう1人出てきたが、その男は白い頭巾をヘルメットのように装着し、顔に刺青のように、波線の形をした模様が彫られ、薙刀を持っている。
「薙刀……珍しい……」
チルアが少しチヨメの少し後ろからそんなことをボソッとつぶやく。
薙刀というのは使用人口が少ない。槍よりも長いリーチ、広い攻撃範囲、十分な高火力。これだけを聞けば強そうに聞こえるが、あくまで理論値の話。薙刀は突きよりも振ることに特化しているため、長いリーチを生かすには大きく薙刀を振る必要があるためついて攻撃するよりも後隙が生まれる。
攻撃範囲が広いということは刃の部分が大きいというのもあって振ることでさらに隙を生みやすくなる。さらに範囲が広いと言ってもハンマーよりも当たり判定が小さく、振って攻撃するような斧より持ち手が長いため逆に振りにくくなってしまうと、結果的に言えば「それぞれの武器のいいところを詰め合わせた結果、うまくかみ合わず元の武器よりも性能が不安定になった」とでも言えばいいのだろうか。
そのため、「薙刀使うくらいなら次にリーチのある槍にする」と言う人や、「薙刀使うならもっと当てやすいハンマー使う」など、他の武器に立場を奪われているため、使用人口が少ないのだ。
「ともかく、勝ちゃあいいんだよ!チヨメはさかなと!!ベンケーはチルア、フウまるは俺がやる!ヒズミは、増援を減らしてくれ!!」
「ちょっと!!さかなって誰よ!?フウまるすら知ってるか怪しいのに!!」
「嘘!?俺以外と知名度低い!?」
「うるさいフウまる!お前が有名なのは掲示板の中だけだ!いいかお前ら!「さかな」は飛び道具のやつ、「ベンケー」は薙刀、「フウまる」は刀だ!!ヒズミは何回か戦ってるから大体分かるだろ!」
「大丈夫、問題ない!!」
[飛び道具使い]のさかな、[薙刀使い]のベンケー、そして前にも言ったが、[刀使い]のフウまる。一見すれば3対4とフウまる達は不利なのだが、これはわざと3人で組んでいるのであって決して人数不足などではない。なぜなら────
「ほい呼んだぞ!!」
さかながステータス画面をいじる。
「隙あり!!」
その隙にチヨメが3本、頭部と両脇腹目掛けて錐を投げる。
「甘ぁい!!」
さかながクナイを1本投げ、頭部の錐を弾く。両脇腹目掛けて投げられた錐は頭部の攻撃を躱すために体を動かすのを阻止するために投げられていたため、体の向きを90度変えれば簡単に避けられる。冷静であれば簡単だという話だが。
「飛び道具はな、そんな直線的な動きじゃ勝てないぞ?こういう風に!」
さかなは腰からクナイを4本、大きなチャクラムを一本取りだす。クナイには何かの文が書かれた札のようなものが紐が括られている。
クナイを1本、空高く上げると、その後にチャクラムをチヨメ目掛けて投げる。チヨメはしゃがむことでチャクラムを避けるが、そのタイミングに合わせてさかなはクナイをもう1本、チャクラムの軌道上の少し下を沿うように投げる。
チャクラムよりも速く投げられたクナイは奥の木に刺さる。すると札が発光し、爆発する。チャクラムはその爆発のタイミングに合わせられ、巻き込まれる。
範囲こそ小さいものの、確かな威力があるため、チャクラムはその勢いのままチヨメ目掛けて戻ってくる。
「おわぁ!!」
予想外のチャクラムの軌道にチヨメは慌てて横に回避するが、尻もちをついてしまう。
さかなは、続け様にクナイを投げる。タイミングを計り、クナイを投げると、札だけがチャクラムに当たり、クナイはそのまま真っ直ぐチヨメの元へ向かう。札はさっきと同じように爆発しチャクラムを空高く跳ばし、クナイの速度を爆風で少しだけ底上げする。
「痛ッ!?」
速度が上がったクナイはチヨメの左手を貫き、地面に固定する。
「ここで一撃だ!!」
さかなはそう叫ぶと、頭上を飛んでいたクナイがチャクラムの軌道上に合わさり、クナイに付いている札が爆ぜる。チャクラムは爆風で軌道を大きく変え、チヨメ目掛けて真っ直ぐ落ちていく。
チヨメは体を捻り、落ちてくるチャクラムを避ける。ただ、
「いてっ!!」
クナイが左手に刺さったままだった為、転がって回避することができず、精一杯体を捻ったので直撃は避けられたが、背中を少し切ってしまった。
「あーもう……せっかくいい感じの装備見つけたのに、壊れちゃ意味ないでしょ……」
ダメージを受けると同時に、装備が傷つき、完全に破壊され使い物になっていないわけではないものの、ボロボロというのは背中を見れば伝わる。
小さくため息をつきながら立ち上がり、錐を数本投げ込む。
さかなはチヨメを凝視して錐の投げられた方向を確認し、最小限の動きで錐を躱す。
「軌道が見え見えだぞ!!もう少しトリッキーに投げることはできないのか!?」
チヨメはわざとさかなを正面から凝視し、視線に沿って錐を3本投げ、さかなに少し速めに走って近づき下段から錐を2本、片手に持ちボールを投げるピッチャーのように上から2本の錐を投げる。
「ハッ!!こんなん簡単に───」
その時。さかなの足に錐が1本刺さる。
「こういうことか?トリッキーってのは!」
チヨメがそう言うと、お互い不敵な笑みを浮かべ、飛び道具を改めて手に持つ。
「まぁそうだが、もっと面白くいこうじゃねぇか!!」
さかなはチヨメの攻撃のタネが分からず、探求心と好奇心が剝き出しになり戦闘意欲に火がつく。
チヨメは自分と同じ飛び道具使いに会い、自身の戦闘スタイルの幅を広げるチャンスを得ようと、同じく戦闘意欲に火がつく。
気持ちは違えどお互いが全力で戦うことに十分な理由が出来たのだった。




