決着が近づく
片方のギルドのメンバーはそれぞれが連動するように立ち回り、敵であるもう片方のギルドに攻撃を仕掛けていく。正面からの突撃もあれば挟撃するように立ち回りチャンスを生み出したり、フェイントを織り交ぜて相手を翻弄しようと工夫したり。
カーズはチーム戦となった時に自分たちのチームが不利ということが分かっているため、この状況をイーブンにするため、不利になる原因である後衛、マリーを最初にキルするべきだと考えている。
少し時間が経った後、静かにマリーの元へ駆け、攻撃を加えようと斧を振り下ろそうと持ち上げる。
いち早く気づいたワタルがカーズの斧を正面から受け止める。
「一旦花の方に向かえ!!」
「分かった!!」
ワタルは実力差的にカバーし続けるとノックバックによりマリーを守り切れないことが分かっているので、マリーを遠ざけるように促す。マリーが腕を必死に振りながら走って移動した場所は、ワタルが咲かせた大きな一輪の花。距離的にも、カーズが走ってもすぐには着けない距離なので、走り始めに反応できれば離脱することで攻撃を回避することが可能だ。
マリーが離れたのを見つけたリクは対峙していたミユを無理やり吹き飛ばし、花の方へと向かう。ツリアはそれを見ていたが、援護することなくエイタとフィリスを相手にする。
「おいおい、後衛を放っていていいのか?」
エイタの挑発に、ツリアは乗らず冷静に答える。
「大丈夫だ。それだけのスキルだからな。」
振り向くことなく接敵を続けるツリアであった。
マリーのいる場所へリクが向かう。一定の距離に近づいた途端、地中から隙間なく大量の花が咲く。
一瞬驚いたリクだったが、臆することなくマリーの元へ走り出す。
リクは気づいていないようだが、[バーサーク]の3人は気づいていた。リクの背中にも同じように花が大量に咲いていることを。
効果が分からない以上援護にも回れず、ただ今の状況をよくできるよう、目の前の敵と対峙しているだけだった。
「リク!!一回その花から離れろ!!お前はもう攻撃に当たっている!!見えてないだけだ!!」
エイタがせめて自分ができる方法として叫んで逃げるように促したが、遅かった。
リクはその言葉を真に受け、花から離れるように動いたが、離れると同時に地中から、彼の背中から蔓が伸び、これ以上離れられないよう、体を固定する。
動けなくなったリクは抵抗するようにスキルをいくつか唱える。固定された部分は背中と足なので、腕は自由に動くため思いっきりハンマーを振る。スキルを何種類も使っているためSTRの値はかなり大きいだろう。しかし、結びつき、固定していた蔓にハンマーが当たろうとも、千切れる気配はない。蔓が動き地面が少し削れたが、蔓は傷1つつかず、ピンピンしている。
「残念だな。お仲間さんが1人減っちゃって。[消化]」
ワタルがカーズに向かって話し、スキルを唱える。すると、花は1枚の花びらを落とし、食虫植物であるウツボカズラにも見える袋のような形をした植物を生成する。蔓はその袋の中に入れるようにリクを運ぶ。リクは抵抗するためにハンマーを振ったが、どこに当たってもビクともしない。
「待っ───」
リクは叫んだが、その抵抗もむなしく、袋の中に入れられ、蓋をされる。吊るされているその植物はリクが抵抗して叫び、動き回ることにより叫び声を漏らしながら少し揺れるが、すぐにその揺れが収まり音も聞こえなくなる。
「減ったか。……まぁ相性が悪かったてのもあるし、別に俺たちが負けると決まったわけじゃねぇよ!!」
カーズはリクがキルされたことを嘆くが、すぐに気持ちを切り替え、目の前のワタルとの対戦に集中する。エイタとフィリスも同じように切り替える。
フィリスは纏っている骨、体の周りに浮く骨を利用して、攻撃、防御を行う。どういうわけか、骨で攻撃を受けるとノックバックを受けることがないため、フィリスは反撃を容易に行えるため、ツリアが迂闊に手出しできていない。ミユの武器が軽いため、対応できているが、纏っている骨はエイタにもついているため、ツリアがエイタとフィリスの2人に手を焼いている。
「ミユ!すまないが、一度盾に戻してくれ。」
ツリアが自分も戦闘に参加しようと、ミユに[死神]を解除してもらうよう頼んだが、
「いや!私1人でも頑張れますし、それよりマリーさんの援護に回っていてください。遠距離攻撃なんて食らったらひとたまりもないですから。」
「分かった。くれぐれも無理はするんじゃないぞ!!」
「はい!分かってますよ」
ミユはスキルを解除することなく、1人で2人を相手にする。人数をそろえて戦った方がきっといいのだろう。だが、ツリアは自分と敵との相性により足手まといということを理解しているので、ミユの要求をのみ、一度マリーの元へ向かう。
「いいのか?1人で」
「全然。舐めてもらってもいいけど、私が強くなるのは、盾持ちとして味方を援護するよりも、1人で戦う方だもんね。そのためにスキルにも制限かけてたし。[紫炎:全開放]!!」
ミユがスキルを叫ぶと同時に体に纏われている紫色の炎の威力が強まる。
「ハァッ!!」
手を上から振り下ろすと、炎から火の玉のようなものが飛び出る。
進んだ軌道上に火の道を作り、二人の退路を断つ。
「これで、終わり!!」
紫の火で2人を囲むと、手のひらをパーの状態からグーへと、拳を握りしめ囲んでいた範囲を焼き尽くす。
紫色の火越しに2人がだんだんと下がっているのが見える。恐らく地面に潜ったのだろう。そう考えたミユは、出てこれないよう火をつけたまま火に飛び込み、空いていた穴に火を突っ込む。
「ん……これ以上進まない」
途中の穴が塞がれているのか、操っている火が進まない。ミユは穴の中に潜り込む。
「うーん……ここかな……えいや!!」
狭い空間の中、紫色に光る土を見て、鎌を差し込む。慌てて穴を塞いでいたのか、壁が薄くすぐに壊されてしまう。
ただそんなことを想定していない2人ではない。
「[崩落]!!」
どこからともなくフィリスの声が響くと同時にミユが上からの瓦礫に押しつぶされる。
「ぎゃー!!」
咄嗟に[死神]を解除し、盾で防御したが、身動きが取れない。
「解除しちゃったから出られないや……とりあえず連絡しておこ……」
ミユは盾と体の間にある僅かな隙間をうまくつかい、チャット画面にこの事を救助できるであろうマリーに伝える。
「はぁ……待ってるしかないか……」
ミユはそう言いながら地中で脱力する。
少しジメジメしていて暖かい空間に嫌気が差したが、次第に慣れていってしまい、ほんの少しだけ瞼が重くなったようだ。
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