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戦闘の反省会

「俺は、こんな結果じゃ終わらねぇ!もう一度、お前らを滅ぼしに()()()()()()()()()()!」

 そう叫ぶスピアが目の前に映ったまま、マリー達後衛のもとへ飛びつく。ルリが放った魔法も避けられ、みんな死んじゃうんだと、必死に走りながら助けられないかとその光景を見ている時。

 スピアの炎が消え、灰となり、消えていく。

「助……かったの?」

 みんなが私のせいで死んじゃう。その責任が背負わされそうになった時に、スピアが死んでくれた。安心のおかげか、腰が抜け、その場にへなへなと座り込む。

 鎌も殺すべき相手がいなくなったと、盾に戻り、装備もいつもの服装に戻る。

「危なかったー!!」

「いやー援護したくても私のスキルじゃみんな巻き込むからなんもできなかったわー!!」

「まぁ、一件落着と言えばいいのかな?」

 [ロッズ]のみんなが安心したかのように会話する。でも、ワタルといつもチームを組んでいたマリーはワタルが死んじゃったこと、蘇生できないことで少し暗い表情をしている。

「ごめんね?私のせいで。」

「あ、なんか暗かった?ごめんね。ゲームだから別に暗くならなくてもいいのに、ワタルだってすぐ戻ってくるのが分かってるのに。」

 私とマリーとワタルは数年前、私が都内に引っ越したことで部屋が隣になり、近所づきあいとして仲がいい。よくゲームをして遊んでいる仲だし、最近始めたプレコロだって、みんなで同じギルドに入ってもいる。

 スピアを追いかけに行ってそのまま見失って迷った前衛たちが戻ってきて、私がスピアを倒したことに歓喜していた。

 せっかくみんなで協力して、スピアを倒せたのに、私の攻撃に何人か巻き込まれてしまった。

「すげぇな!お前!みんな全然攻撃できていないのに、NPCを倒してくれるなんて!初めてだぞ!」

 嬉しかったけど、素直に喜べなかった。

「だって、私のせいで、一緒に戦ってくれた仲間を何人か、キルしちゃったんだよ?」

 怒られることは覚悟している。「せっかく組んだチームの仲間をどうして殺せるんだ」って。

 でも、みんな違った。

「何言ってんだ。これはゲームだ。仲間が死んだくらいでなんか言う必要はない。どうせ生き返って戻ってくるんだし。それに、パーティーが組めないのが分かっているんだから巻き込まれるくらい当然だ。」

「それに、そんなことで怒るくらい短気なら私たちはこんな大人数で組まないよ。」

 別ギルドの人たち、ギルド長のツリアさんからも、慰めてもらった。

 そんな温かい言葉に、私は思わず涙が流れてしまう。

「泣くんじゃない。犠牲があることを責めても、結局はミユがやった功績が大きい。それに、ミユを責めるような人たちがいるなら、私たちでぶちのめしてあげるからね!」

 その言葉で、私はしばらく泣いてしまった。

 泣き止んだ後、ワタルが合流し、私は燃やしてしまったことに謝ったが、「NPCを倒せたなら問題ない」と言われた。

 全員が集まったところで、別ギルドのスーツを着た男の人が、

「この後、どうします?」

 と言ってきた。スピアがもう出現しないなら組んでいても意味ないし、例え出現するにしてもまた合流すれば問題ないということでツリアさんが「一旦解散」と言ったのでそれぞれがバラバラに散り、スピアが再度出現するまで敵同士だということになった。

 私の組んでいるパーティーはツリアさんと、マリー、ワタルの4人で行動している。盾持ちが2人いるのはどうかと思うけど、ギルド内では実力が上の4人なので特に問題なかった。

 今のランキングはスピアをキルすることに関与していないギルドが大きく得点を上げ、関与しているギルドがポイントが上がっていない状況だ。とは言っても、始まってまだ30分なので、ここから巻き返せば問題はない。

「1位はNPC狩りに参加していないギルドの中で実力のある[バーサーク]か。続いて2位がNPC狩りに参加しているが、ランしか参加していない[変な称号集合!]で、3位も同じような感じになっているフウまるがギルド長の[掲示板ホームズ]、4位が[円卓の間]、5位が[傭兵団]って感じか。やっぱり上位はギルドの実力が高い人が多いな。」

 ツリアさんが私が出したランキングを横から見ながら言ってくる。

「あっ、目の前に1パーティーいるぞ。」

「ま、ギルドの別メンバーが頑張ってくれているんだし、私たちも頑張らないとね!」

 マリーの言葉でみんなのやる気スイッチがオンになる。私も頑張らなくちゃ!


                      +++


 初めて見たグリードの姿は長髪の黒髪で少しぼさぼさしているが、清潔感がある。服装はなんか、ローマとかの神話に出てきそうな白いベールみたいな布を身に着けている。

「で、何だこの空間?」

「いやー、緊急で作った空間だから周りに何もなくてごめんな。」

「いや、そうじゃなくって死んだらすぐリスポーンするんじゃないのか?」

「いや、お前何言ってんだよ」

 グリードは少し深刻そうにこちらを見てくる。

「は?」

「いや、よく考えろよ。おまえ、今の30分で50くらいキルしたからな?今、イベント参加しているプレイヤーらが数千人いるから何とも言えないが、上位勢の足止め無かったらもっとキルしてただろ。1つ聞くが、お前は自分の全力を出し切って辛うじて倒した強敵が突然全快で復活してくるんだぞ?自分は回復もしてないのに。嫌だろ?」

「まぁ、確かにそうだけども、別にリスポーンするならその場所じゃなくたっていいじゃないですか。」

「あのなぁ……」

 グリードは息を吸うと、説明を始める。

「まずお前が5キルをすることで残機が1つ増えるようにしたが、お前は1つの残機で50キルした。つまり10の残機が増えたというわけだ。そのあとすぐに復活し、また50キル。別の場所でスポーンするとなると上位勢たちが集まっていた距離と離れるから、さっきよりも暴れられる。だいたい70から80いくだろ?それに上位勢と言ってもさっきの戦いで少なくとも手負いだ。さっきと同じように行くと言ったら大間違いだし、お前だって死なないために戦い方を変えたり少しの工夫でそいつらに勝っちまう。それに加えて、お前はまだ[愚者の矜持(フール・プライド)]を残している。使った後にデメリットがあるがそれはお前が解除したらの話だ。そして、お前はまだやっていないが、ギルドの拠点が点々とあるがお前はそれを壊せる。それを壊すとお前は少なくとも10のポイントを減らせる。一回やったら同じことはできないにしろ、プレイヤーの残機が戦う前から1減るんだ。キルしていないプレイヤーがいるなら、残機が1になって強気に攻められなくなる。そうすると結局は残機が2減って戦えるプレイヤーが1人減る。少しさっきの話に戻るが、スポーン場所を離す離さないにしろ、お前が上位勢に勝つと、少なくともお前を倒そうと考える人が一気に減る。それだけでも充分厄介だからな。お前が歩くだけで近くの戦闘中のプレイヤーも一目散に逃げるだろう。それで戦闘が活性化されないというのに、お前はさらにプレイヤーを殺しに行くんだからどんどん減っていく。この状況が8時間も続くんだぞ?そんな虐殺劇を体験しにこのゲームをやりに来たわけじゃないんだ。いいか?あくまでプレイヤーはイベントを楽しみに来たんだ。お前を殺すために来たんじゃない。そして、お前が虐殺するために来たんじゃない。お前がやるのは妨害だ。このイベントを掌握するために野犬みたいに野に放ってるんじゃない。あくまでボーナスとしていたらラッキー程度のNPCとして放し飼いにしてるんだ。そうポンポンと出てきていいものじゃない。だから、この時間を設けているんだ。分かったか?」

「ハイ。ナントナク」

 俺は話の内容がよくわからず適当に返事した。

「まぁ、とにかく、待ってろ。タイマーが切れればフィールドに放つ。希望があるならどこがいいか言ってもいいぞ。」

「あっ、それなら!」

 俺はどこら辺にスポーンしたいか、グリードにいくつか要求した。

「分かった。お前の要望には応えておくよ」

 グリードは納得したかのように椅子に体重をかけるように座る。

「で、この1時間、何していれば……」

「まぁ、モニターでも見て、戦い方の研究でもしてろ。」

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