親の仇の如く集まる上位勢
エイプリルフールということで……
後書きに続く……
槍を構え、勢いよく走り出したその時、
「[万年氷]」
突如として炎と雷が氷に覆われ、状況が一変する。
「ブルー!!丁度いいところに!」
「約束通り、連れてきたよ!ほら!」
ブルーという名前のさやに似た見た目をしたプレイヤーは箒から降り、森の奥を指差す。そこには、フウまるやツリアなどの大量のプレイヤーがいる。おそらく全員上位勢だろう。
「本当にいた!」
「面白そうですねぇ……」
「ヒィィ……NPC怖いぃ……」
「嘘だろ!?いっぱいプレイヤーいたって言ってたのにもうこんなに減ったのかよ!?」
「さて、初めてのご対面、楽しませてくれるんだろ?」
喋る人や無言のままこちらを睨む人、さらには上位勢でないのか、最初に現れた人たちを委縮しながら見つめるプレイヤーも多くいる。
「っシャ!!じゃぁ、作戦通り、タンク系は前衛よりも前で攻撃を捌いてくれ!!俺たち前衛は隙間からヒットアンドアウェイしていく感じ。後衛は[平等性]とか[寛大さ]、[対象指定]とかパーティー関係なしに効果が発動できるスキルを使って俺たちの援護を頼む。」
『了解!』
フウまるが指揮を執り、俺をキルしようと張り切る。
「フウまるゥ、いつからそんな勇敢になったんだぁ!?」
怒るような口調でフウまるに悪戯をする。
「おわっ!?どんだけ俺のこと覚えてるんだよ!?」
少し引かれたがまぁ、敵意が失せるだけマシと考えよう。
「なぁ、NPCって俺たちの名前覚えてくれんのか?」
突然、1人のスーツを着た男が、フウまるに話しかける。
「ん、まぁ、俺の名前を覚えてくれてるんならいい戦いをしたら覚えてくれるんじゃね?名乗りも含めてだけど。」
「そうか。」
1人の男が納得したように、息を吸い、
「俺の名前はランだ!!」
自己紹介を始める。みんなもそれに釣られて自己紹介を始める。1人1人覚えるの面倒臭い……それでも覚えちゃう俺自身ももどうかと思うけど……
「じゃあ行くぞォ!!」
『オオオオ!!!!』
一通り終わった自己紹介からの攻撃が始まる。それにしてもプレイヤーが一致団結して1人のNPCを攻撃するなんて掲示板の力ってすごいな。
最初に仕掛けてきたのはツリア。大きく振りかぶって一撃を食らわせに来たが、俺は一歩下がり避ける。その時、眼鏡をかけた傭兵のような籠手や肩に当てる鎧だけの軽装にポケットが多い装備のプレイヤーが攻撃をしてくる。その男は武器を持たず、拳で戦う。確かこの男の名前は「ナオトキ」って言ったっけ。
「[振動拳]!」
攻撃を避けて下がったため、少し体勢が安定せず、咄嗟に槍で防御してしまう。すると、体が地震に揺られるみたいに視界と共にグラつく。
「ッシャ!![剛拳]!!」
下方向からのアッパー。体が上手く動かず、なんとか槍を動かして防御したが、ノックバック効果でもあるのか、高く宙に浮く。すると、
「[食人草]」
追撃に植物が伸びながらハエトリソウのような見た目に変化し、大きく口を開けこちらへ攻撃してくる。攻撃元を見るとサングラスをかけたタンクであるはずのワタルが攻撃してくる。表情や焦りを表面に出してはいないが、内心慌てながら茎を切り、攻撃モーションを止めて対処するが、
「[氷柱]!」「[墓標]!」
氷の柱を急速に伸ばすブルー、霊を直線状に伸ばすさやの遠距離攻撃でさらに追撃を食らう。
体をひねりギリギリのところで躱したが、
「[懐中時計]!」
ルリによる空中落下の停止により、その場で動くことが出来るものの、空中であるため、踏み込みや力を入れることが出来ず、行動を大きく制限される。
「行くぞ!!」
ランがハンマーを持ち大きく振り下ろし落下させる。
落下の衝撃で少し浮きあがりその反動のまま体勢を整えるが、その時には、フウまる、ナオトキが目の前に現れ、交互に攻撃してくる。
二人の攻撃スタイルがダメージより手数重視であるため、槍で防ぐので精いっぱいでうまく反撃できない。
ダメージを受けていないのはいいことだけど、今の状況でも充分劣勢だし、スキルを使っても問題ないだろう。クルセイアからイネイシァルに持ち替え、
「[狂乱の宴]!」
「来たぞ!!第二形態だ!」
俺は今前衛を崩して敵を減らすより、広範囲攻撃を行える後衛を削るべきだとすぐに走り出す。
3人は杖を構え、それぞれスキルを放とうとするが、俺はわざと横に回り、射線が味方と被るようにする。
「あーっ!!被っちゃった!」
ダメージを与えることが出来ないのはさっきの会話からわかっていたが、TPを無駄に消費させることが出来たうえ、一手動きを遅らせることが出来た。
「オォラッ!!!」
槍を大きく横に振り3人まとめて攻撃できるようにしたが、
「[防御魔法]!」
咄嗟に放たれた魔法で防がれてしまう。だが、前回の戦いでお互いに耐久値があることを知っているので、俺は防御魔法を破壊し、そのまま攻め込み、ルリは一歩下がる。
「ミユさん!」
ルリは下がったついでにタンクを呼び、対処させようとする。
俺はルリにタンクが付くだろうと予想し、残ったさやとバーンを対処する。
「やばいやばい、私自衛手段持ってない!!」
「焦るな!!攻撃し続けろ!!」
さやが自衛手段を持っていないため、俺が近づくと同時に慌て始める。
さやを先に狙ったが、バーンがすかさず攻撃をしてくるので、今パニック状態になっているさやを処理するよりも―――
「オラッ!!」
考えている間に前衛たちが戻ってきてしまった。
フウまるは武器を[雷光]に持ち替え、ナオトキの拳も赤い炎を発している。ランも武器がハンマーから槍に変わっている。
本来、武器は種類を決めると、変更する際、カスタマイズ画面に行かないと持ち込み可能な武器種を変更できない。
分かりやすく言うと、俺が戦闘中、クルセイアとイネイシァルの2本の槍を持つことが出来るけど、何らかの槍とそこら辺の剣を持つことが出来ないのだ。つまり、ランが持っている武器が変わったということは、そういうスキルがあるということ。
ただ、それで上位勢に食い込んでいるような感じなら、彼はオールラウンダー、下手すれば後衛にも回ることが出来るだろう。
ならば前衛の中でも厄介そうなランを攻撃するべきだろう。
ランの体に槍を引っ掛け全員から少し離れたところへ移動する。
「我慢してろ。すぐに終わらせる。」
「大口叩くのかい?NPCさん!」
ある程度移動すると、槍を振って抵抗してきたの一歩退き構える。正直、同じ武器同士の対戦は拮抗しやすいのであまり好きじゃない。
「「ハァッ!!」」
お互いが同時に仕掛ける。鏡合わせのように同じ動きをするが、AGIで上回っている俺がほんの少し速く動ける。
「ミラーマッチだといい感じになりそうだったのに、これじゃまずいな……」
そう言ったランは一歩下がり、体で武器の一部を隠す。そして槍を捕食するかのようにすべての部分を隠し、こちらに武器を見せるときには、双剣に変化していた。
「ハァッ!!」
懐に潜っての下からの切り上げ。オールラウンダー特有の使い切れていない感は一切なく、むしろこの武器だけを使ってきましたと感じさせるほど短剣の扱いが上手く、全くの隙を見せてくれない。それに、俺がさっきフウまるとナオトキの手数に押されて対処できないのを見て手数を多くしやすい双剣を選んできた。
よく考えられて武器を変更したと感じるが、「手数で押しきる」というのを考えすぎるあまり、下半身の防御が疎かになっている。
俺が槍で防御しながら、持ち手の端を下から振り上げると、それに反応しようとしたのか短剣を素早く振り下ろし、攻撃のついでに防御をしたが、そうすることで胴ががら空きになる。
「引っ掛かったな!!」
ランが叫ぶが、
「いいや、引っ掛かったのはどっちだ?」
そう冷静に言いながら槍を一度離し、肘で胴を突き、落とした槍を即座に拾い、崩れた体勢に槍の刃と持ち手の端を三節根みたいに反動を利用してひたすらにランの体に叩きこむ。
ランは防御のために一度双剣を盾に変え、攻撃を一度防ぎ、体勢を安定させると、一歩下がる。
「危ねぇ!!このままラッシュ叩き込まれて死ぬとこだったわ!!」
ランはホッとしたように息を吐くと、すぐに短剣に武器を変え、
「もう二度と引っ掛からない!」
と宣言する。
だが、俺が先に攻撃を始めると、今までの「受け」が攻撃スタイルだった俺の動きが変わったように錯覚し、今の会話で少し安堵していたことにより体の動きが少しずつ遅れ始める。
「どうしたどうした!?動きが遅いぞ!」
挑発に動きが遅くなったことを指摘すると、
「クソッ!これ以上は、まずい!!」
ピンチに陥ったかのように少しずつ、ジリジリと俺の攻撃が体に近づいていく。それをマズいと感じたのか、一歩下がり、退却しようとしたその時、俺のAGIが上がっているということを忘れていたため、着地するまでにランは追いつかれ
「マズッ───!!」
「終わりだ。」
胸を一突き。
まずは1人。
嘘つこう!!と思ったんですが、一部地域では正午までしか嘘をつけないらしいので投稿時間的に無理でした。本当は「ワタシ、ノットジャパニーズよ!」とか言いたかったですけど……
はいそうですよね。あからさまですよね。やめて!!その冷たい視線!!




