突如始まるホラー?ゲーム
日曜日に頑張って書いたので、少しの間毎回のようにしゃべっている前書き、後書きがなくなります。なんか寂しい……
さやと名乗った幽霊のような見た目のプレイヤーは杖を伸ばしたまま、スキルを発動する。
「[幽世]」
突如地面や木、いたるところからゾンビがスポーンするときのように手が出てきたり、空中に火の玉や頭蓋骨が浮くようになる。
「[呪いの行進]」
さらに発動したスキルにより、さやと同じ見た目をした幽霊が大量に召喚され、ニュースでたまに見るバーゲンセールでデパートに走り込む主婦たちのようにこちらへ襲い掛かってくる。
こちらも攻撃しても意味ないことが分かったので、横に回避する。
だが、さっきと違うのは、幽霊が途中で進行方向を変え、こちらへ向かってくるのだ。それに加え、移動を制限するほどではないが、地面に生えている冷たい手がこちらの体を掴んでくるため、少しずつ集中力が削られていく。
さらに追い打ちをかけるように
「[パワースポット][怨霊]」
幽霊の移動速度を上げ、新たに一体の霊を召喚する。さっきの霊たちと違うのは、足があること。さっきの霊たちは空を飛び、こちらに襲い掛かる感じだったが、今召喚された霊には足があり、血濡れた斧まで持っている。
「ア……アア゛……ア…ア……」
少し上を見ながら不規則なうめき声をあげ辺りを見渡す。こちらを見て気付くと、
「――――!!」
言葉にできない、何を喋っているか分からない叫び声を、顔の大きさ程ある舌を伸ばし、涎を撒き散らし、少し閉じていた眼を目の血管が浮き出て赤くなるまで開き、こちらへ走ってくる。
内心、恐怖に負けて思いっきり叫びたかったが、今はNPCとしてプレイしているので、自分自身のプライドとして、叫ぶわけには行かないし、退くわけにもいかない。
再度、試しに攻撃してみたが、今回の霊はダメージを受けるのか、斧で攻撃を弾いてくる。
攻撃を弾かれたと同時にさっきの霊が攻撃を仕掛けてくるので、咄嗟にバックステップで躱す。
ただ、霊同士の攻撃はすり抜けるだけで何も起きず、斧を持った霊は突撃してくる。
攻撃のしかたがカーズに似てはいるけども、体の大きさや、間合いの管理がかなり違うため、そこまで苦戦するほどでもなさそう。だがさっきの霊たちが定期的に攻撃してくるためうまく戦えない。そして追い打ちをかけるように
「もう一回、[呪いの行進]!」
同じスキルを再度放たれる。このまま斧を持った霊と戦闘するより、さっき後衛を倒してデバフを解除したみたいにさやをキルしてこの霊たちごと消せればいいと考え、優先度を斧を持った霊からさやに変える。
向かうには向かったけど、さっきよりも人が増え、妨害しようと、盾を構えられたり、剣を振られたりと、結構苦戦している。
人数的にパーティーを組めないので、おそらくさやの攻撃でHPを削られるプレイヤーが殆どだろう。そう考えた俺は、斧を持った霊が攻撃するタイミングを見計らって、プレイヤーに近づき、代わりに攻撃してもらう。ポイントこそ増えないものの、斧を持った霊の攻撃対象が変化してくれるので少しだけ対応する物事が減る。
走りながら、俺に向かってくるプレイヤーを突いて周り、さやに着々と近づいていく。近づいて、槍の射程圏内に入ると、盾を持った別のプレイヤーがさやへの攻撃を防ぐ。
「守れー!!上位勢を守って、NPCを討伐するぞ!!」
「オオ!!」
パーティーを組んでいないであろうプレイヤーたちが、俺をキルするためにここまで命を張って別プレイヤーを守るなんて。
それでも盾持ちへの対策はしてきているので盾を蹴飛ばして援護を遅らせたり、ボウリングみたいに他のプレイヤーに巻き込んでみたり。
そうしてついにさやに槍が届きそうになった時に、
「来たか!お前ら!!」
杖を構えることなく、突如として叫びだす。
「[迅雷]!!」「[間欠泉]!」
その時、後ろから聞き覚えのあるスキル発動音と、もう1人のスキル発動音が聞こえる。
咄嗟に横に回避すると、2人は空から箒を使って下りてくる。
「大丈夫!?さや!?」
その1人はルリ。そしてもう1人は、名前こそ分からないが、一緒に行動していた当たり、同じパーティーの人、恐らく同じギルドの人だろう。赤い髪に赤い瞳、ローブやズボンも赤を基調としている。
「んまぁ、大丈夫だしパーティー内での攻撃はできないからダメージはないけども、ちょっと急すぎて怖かったわ。もっと、防御魔法とかあっただろ。」
「……まぁまぁ!!大丈夫なら、いいでしょ!!問題ナシ!」
「そうだ、ブルーは?」
「あぁ、あの子なら今、人を呼んでる。パーティーの位置が分かるのを利用して、ね?」
「なぁるほど!」
ルリとさやが会話していると、1人の男が気を引き締めるように会話を遮る。
「ほら!まだスピア生きてるぞ!油断するな!」
「分かってるってバーン!」
「っしゃあ!!もっともっとだ!」
3人が杖を構える。すると、周りにいたプレイヤーが反応し、
「嘘だろ!?[ロッズ]のTOP4の3人が揃うのかよ!?しかも後で来るみたいな雰囲気出してるし!!」
「NPCのやつ、参加して正解だったかもな!!」
「よっしゃあ!俺はルリ様の盾になる!」
「援護するぞ!!」
「俺たちは前線を張る!!ついて来い!!」
多くの歓声が飛び交う。なんか変態もいたけど。
「お、前線任せてくれるなら、私達、下がってもいいんじゃない?」
「範囲的にフレンドリーファイアになりそうで怪しいが、まぁ体力的に考えるのなら下がった方がいいかもな」
「まーじか~!下がるんなら惜しいけども……[解除]」
少し会話が続くと、さやがスキルを解除してくれる。厄介な後衛が増えたのは良くないけど、会話の内容的に、広範囲の攻撃が来なさそうで少し安心する。
ただ、それでも人が増えたことにより対処が難しくなったうえ、広範囲の攻撃がなくとも一点を狙った攻撃が飛んでくるので、厄介極まりない。
「かかれぇ!!」
『オオオオオ!!!!』
誰かの号令が合図となり、大量の攻撃が飛んでくる。
剣に槍、双剣やハンマー、斧に弓、飛び道具。それぞれが武器を持つプレイヤーたちの様々な攻撃により、俺の視界は攻撃判定の塊でいっぱい。それでも即席の連携はうまくいかないようで所々に抜け道がある。
「まだまだ未熟だな!」
俺はそう言いながら様々な方向に刺突を繰り出し、隙間からプレイヤー数人をキルする。そして、ハンマーや斧などのSTRに振っていそうな武器種の攻撃を避けたり、弾き、多少の攻撃を受けながらも、何とか窮地を脱する。そして、同じ方向に攻撃した拍子に1つの場所に大人数のプレイヤーが密集し、一時的に混乱する。
「ハァッ!!!」
俺は自分の出せる限りの速度で大量に突きを繰り出し、出来る限りのプレイヤーをキルする。
ただ、1つの場所にプレイヤーが集まるということは、他の空間が空くということ。広範囲攻撃が発動できるのだ。
「[雷の嵐]」「[地獄の炎]」
天からは雷が絶え間なく降り注ぎ、地面からは炎が隙間なく燃え盛る。俺はプレイヤーが大勢いる場所に留まらざるを得なくなった。
だが、この状況で最も焦るのはその場に取り残されたプレイヤーたち。大勢でいればちょっとした行動でも、他の人に当たれば波紋として広がり、1人ずつ、炎に焼かれてしまう。そのため、プレイヤーは迂闊に動けず、俺のポイントとしてキルされるのだ。
「さて……次はお前らだ。」
俺は殺し終えたところで槍を向け、3人を攻撃しようと行動に出る。




