森の中の襲撃
短編に夢中になったのと、風邪気味が原因で投稿自体が遅れたので久々にこの作品を投稿しました。
投稿、頑張るぞー!
「よぉーし!イベント始まったぞぉ!!」
1人の男がパーティーを組みながら叫ぶ。
「ちょ、あんま大声出すんじゃねぇよ!見つかるだろ!!」
「あぁ、すまんすまん」
1人の男が焦り気味に小さな声で止める。
このパーティーは4人構成。最初に叫んだ男がスタンダードな鎧を装備し剣を持ち、少し焦り気味の男が黒いローブを纏い、柄の短い杖を持っている。もう1人は杖持ちを守るように周囲を警戒しており、盾を常に構えている。タンクであるため、装備も重厚な鎧を装備している。そして見ただけではいないが、偵察として1人がパーティーの先を進み、先導している。丁度その人が戻ってきたようだ。
「この先30メートルくらいに2パーティー。戦闘中だけど、漁夫る?」
その人はパーティー唯一の女性プレイヤー。杖持ちと同じようにローブを纏っているが、顔が確認できないようにフードつきのローブを装備しており、動きやすいように腰の部分までしか伸びていない。
「よし!漁夫ろう!!」
こういう対人戦は無理に敵をキルするよりも、自分が安全な状況で弱っている敵をキルして安定してポイントを稼ぐ方がいいのだ。
4人のパーティーが茂みに隠れながら戦闘中のパーティーの方へと向かう。
2パーティーはそれぞれが一進一退の攻防を繰り広げ、後衛が安定して回復を行っているため、HPが大きく削れた様子もなく、拮抗している。
だが、このパーティーは視えている。
「お前は奥のパーティーの後衛を潰せ。俺は手前をやる。」
「了解」
女性プレーヤーが双剣を手に取り、木の上を走るように移動し始める。彼らには後衛が手一杯の状況だったことが視えていたのだ。つまり、後衛がいなくなればこの戦況は崩れ、今戦っているパーティーはHPを回復することなくそのままキルされる。
「ぐあっ!!」
「ゲハッ!!」
それぞれの後衛がやられたタイミングでパーティーの後衛が杖を掲げる。
「[クロックルーム]!」
相手の行動速度を制限し、味方の行動速度を上昇させるスキルを発動させる。
「まずい!!」
後衛がやられたこと、挟撃の状況が作られたことで2パーティーは混乱する。目の前のパーティーを攻撃するか突如現れたパーティーを対処するべきか。お互いのパーティーが混乱することで結果、漁夫りに来たパーティーが全員をキルする。
「全員、怪我はないか?」
「おうよ!」
「問題ナシ!!」
「ない」
後衛が回復が必要ないか聞くが、ダメージを受けるほど切羽詰まった状況ではなかったので特に問題はない。
「俺たちのギルドは……順調だな。いい感じにポイント稼げてる」
「でも死なないようにもしないと、すぐポイント減る。特にお前みたいなやつが無策で突撃したりとか」
「そっ……!いやでも否定できないなぁ……」
戦闘後の談笑が少し始まるが、女性プレイヤーが「偵察に出る」と言ったので全員も談笑を終え、行動を始める。
数秒ほど歩くと、すぐに偵察から戻り、
「NPC!」
この言葉が開口一番に出てくる。するとパーティー全員が目を合わせ、
「よし、発射!!」
花火を空高く打ち上げる。
+++
「ん?」
俺は歩いていると突然花火が上がったことに気付く。何かの合図と思い、構えることはしないが周囲を警戒しておく。
俺が歩くときに踏む草の音だけが聞こえていたが、突如葉っぱ同士を擦るガサガサという音がする。それも上から聞こえたので木を足場に移動しているのだろう。
「ハァッ!!」
後ろから暗殺者のような見た目をしたプレイヤーが双剣の刃を立て上から攻撃してくる。俺はすぐに槍を持ち、持ち手の部分でいなす。
「[クロックルーム]!」
茂みの奥からスキルを叫ぶ声が聞こえる。すると体がいつもより少し重く感じるようになった。恐らくデバフだろう。
「今だ!!俺たちで畳みかけるぞ!」
さっきのスキルを叫んだ人の声が再度聞こえる。すると剣を持ったプレイヤーが双剣持ちのプレイヤーと一緒に連携して攻撃し始める。
俺は攻撃を弾きながら攻撃するが、デバフの影響でいつもの速さで攻撃を繰り出せず、間一髪のところで避けられてしまう。
「危ねぇ!!」
剣持ちが声を出しながら戦っているが、双剣持ちは声を上げずに攻撃してくる。
「こんにゃろ!![炎の刃]!」
剣持ちがスキルで反撃するが、炎の斬撃を飛ばすだけなので、安易に避けることが出来る。
それよりもデバフがかかっている以上、このままではキルが出来ないので、先に後衛を処理する。
攻撃を避けたついでにさっき声が聞こえた方に走り、後衛を探す。
後衛は茂みを飛び越えるとすぐに見え、盾を持ったプレイヤーと行動している。
俺は即座に走り後衛を処理しようと、槍を構える。
「!!……こいつ、パーティー処理の方法が分かってんのか?ちょっとヘイト稼ぎよろしく!」
「分かった!」
後衛は逃げ続け、盾持ちが盾を構え、動きを制限しようとする。AGIが低いせいでゆっくりに見えるのか、STRが低くて動かすのに手間取っているのか、少し重そうに盾を動かし進行方向を妨害する。
だが、それはイメトレ済み!
一度跳躍し、盾持ちが背中を見せたところにクルセイアの十字に合わせて正確な一突きを食らわせる。
「痛ッた!?」
盾持ちが咄嗟に背中を押さえたところで急いで後衛のところへ向かう。だが、盾持ちが稼いだ時間で準備を整えたのか、逃げることをやめ、スキルを発動する。
「[雷線]!」
しっかりと狙って放たれたスキルは一直線に胸部目掛けて飛んできたが、反応できたので、横に回避する。
「[電気柵]!」
防御のためにいかにも電気が通ってそうな壁を作る。本来なら、迂回する必要があるが、ここは森の中。障害物がたくさんあるので立体的に戦える。
俺は木を蹴って高く跳ぶことで壁を越え、そのまま後衛に突きを食らわせる。
「嘘だろ!?」
胸を貫かれた後衛はそのまま「DEAD」の表示を出し、即座に消える。
「一旦退くぞ!このままじゃポイントが減ってく!」
さっきのパーティーは、後衛がやられたことで長期的な戦闘が出来ないと判断し、一度帰っていった。だが、後衛がキルされたことでデバフが解除され、満足に逃げていくパーティーを追いかけることが出来る。
「クソッ!!俺が引き止める!お前らは花火打って逃げろ!」
剣持ちのプレイヤーが俺を引き止める。他のプレイヤーがなぜ花火を打ち上げるのかは分からないが、いるプレイヤーは俺の獲物だと言わんばかりに追いかけるハイエナになってどんどんプレイヤーをキルしないと。
槍を横に振り、体勢を崩したところに一突き加えようとしたその時。
「[対象指定][神隠し]」
突如剣持ちのプレイヤーが何者かに引っ張られる。
「[幽霊鉄道]」
森の奥の薄暗い場所、さっきプレイヤーたちが逃げた方向から、大量のゴーストが飛んでくる。一度攻撃してみたが、当たった感触がしないので即座に横に回避する。
奥から何かを叫びながら歩いてくる。ホラー映画に出てくるような女性の霊の見た目をしたぼさぼさした長い髪の毛とところどころ破れたり、赤黒く汚れた白装束を着たプレイヤーが出てきた。
ギザ歯を出しながら叫んでいるのは、
「よっしゃー!!NPC狩りじゃー!!」
という言葉である。さらに上空に花火が打ち上がる。
「このさやが、NPCをぶっ殺してやる!」
ある程度の距離で立ち止まり、宣言と共に杖をこちらに向けてくる。それと同時に奥からも数人、いや数十人のプレイヤーが出てくる。花火を打ち上げたのは恐らく、大量に人を呼び寄せるためだろう。
一話前で話した短編の事ですが、もうひと作品投稿しました!
シリーズ化しているので時間があればぜひ見ていってください!!
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