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路地裏の武器商人

 本当は日曜日に投稿しようと思ってましたが、夜ご飯食べてたら時間過ぎちゃったので月曜日になりました。

「何もないな……」

 歩き続けること10分。ひたすらに壁と道しか出てこない暗く湿った空間をひたすらに進む。

 今から戻って人がいる場所に行けば今の行動が無意味になる上、時間的に余裕があるので路地裏を進み続けることにする。

 路地裏には途中一段当たりの幅の広い階段や、緩い坂、曲がりくねった道など様々あり、かなり作り込まれている。そうなら必ず何かがあると考えた俺は少し足取りが軽くなり鼻歌交じりにより奥へと進んで行く。

 進んでいる間も、なにか関係しそうな「指名手配」と書かれた懸賞金付きのポスターがある。

 ポスターには「WANTED」の下にプレイヤーと思われる画像が張られており、名前には「ヒズミ」という名前と懸賞金の額が書かれている。その額は1億。

「一応スクショしておこ」

 自分の視点を撮っておくことで役に立つかもしれない情報を残すことが出来る。一応スクショにも2種類あるらしく、カメラを持てばいつもの感覚で撮れるそうだがそんなもの持ってないし買う暇もないのでさっさと撮ってさらに路地裏の奥へと進む。

 しばらく進むと鉄を打つような「カン!カン!」という音が少しだけ響く。

「これはもしかすると、もしかするんじゃないのか!?」

 そう期待を持った俺は走って音のする方へと向かう。

 そこには路地裏に海が見える見通しのいい店が一軒だけ立つ、知る人ぞ知る場所のようななにか落ち着くような空間が広がる。

「うわあ……!」

 そこは切り立った崖の上。手すりから身を乗り出し、広がる景色を見る。道中、階段があったのはここまで繋がっているからなんだと、変な納得をしつつ、もう一度景色を見る。前を見れば水平線まで広がる海の景色と飛んでいるカモメの数々。下を見ればさっきいたようなたくさんの人だかりがいる商店街の景色が広がる。

 そんな景色に見惚れていると、

「お前さん、ここは初めてかい?」

 突然、声をかけられる。振り向くと、首にかけたタオルで額の汗を拭くシャツ一枚の中年の男性がいる。おそらくこの店の主人だろう。

「はい、人だかりが多くて路地裏を進んでいたら……」

「それは大変だったろ!だってここは商店街から歩いて20分くらいだからな!!」

 路地裏を通ったことを話すと、「ガハハハハ!!」と笑われながら背中をバシバシと叩かれた。まぁ、元気なのはいいことだし、こういう人は案外親しみやすいのを知っているのでうまくいけばお得意さんになれそうだ。

「俺は、メルク。ここの店の主人って言えばいいのか?よろしくな。」

「よろしく。」

 握手しながら挨拶を交わす。

「そうだ、ここって武器売ってますか?」

「おう、俺の自慢の作品がいっぱい並んでるぜ!どんな武器を使ってる?」

「槍ですね~」

「槍か!いい武器を使ってるな。どれ、今まで使ってた武器を見せてくれねぇか?」

 メルクに武器を見せろと言われたが、ツリアに刺したままデスしたので、今は持っていない。

「あ、壊れちゃって、その後必死の抵抗で人に刺したままで……」

「なるほど。要するに無くしちまったのか。まぁいい。最後まで使ってあげたんなら許してやるが、武器にも気持ちはある。これからはくれぐれも無くすんじゃないぞ。」

 メルクは武器を無くしたことに少しお怒りの様子。まぁ、言われていることは分かるので、反省。

「とりあえずこの槍を敵がいる感覚でこの的に振ってくれねぇか?」

 そう言われたので俺は槍を振る。いつも戦う時と同じように、体の動きも織り交ぜて。右に振ったり、振り下ろしたり、突いたり。メルクはその様子を真剣に見る。

 一通り終わったところで構えるのをやめ、メルクのもとへ向かうと、

「なるほどな。面白れぇじゃねぇか。」

「?どうしたんですか」

 メルクは槍を受け取りながらそんなことを話す。

「お前さん、戦い方に何種類か形があるだろ。」

「ウッ!」

 恐らく今の動きを観て俺がどんな戦い方をしているか―――つまり、俺が別のアカウント(スピア)でプレイしていることに気付いたのだろう。

「どうしても今の動きでそれぞれに特徴があって癖がある。無意識に抑え込んでいるみたいだが俺の目はごまかせない。それに、槍以外の戦い方も取り入れているあたり槍を使うにあたってお前さんに必要なのは……」

 そう言ってメルクは店へと入っていく。

「お前さんも来い。」

 ついて行くとそこにはたくさんの武器と武器を作るためのたくさんの道具。そして少し離れた距離からでも伝わる炉からの熱。

「お前さんは槍を使う時、リーチも大切にしているようだが、その動きをするなら逆にそのリーチが仇になるかもな。それに、形があるのならその形に合わせて槍の使い方も変えるべきだ。だからお前さんにおすすめの槍は、これだ。」

 そう言って渡された槍は「フレイミング」という槍。

「こいつは持ち手部分の長さを変えられる俺自慢の槍の一つだ。そこの出っ張りを回して引っ張ったり押したりすれば長さを変えられる。形を固定するときも出っ張りを回せばその形でキープすることが出来る。」

 実際に触ってみると確かに長さが変わる。一番短くすると、手首から肩までの短さに、長くすれば俺の身長のおよそ2倍、3メートル50センチといったところだろうか。それに長くしても槍の重さで曲がるわけでもないし、こういうカラクリがある物特有の重さがない。大きく振っても曲がりにくい頑丈さもある。

「すげぇ……」

 武器のクオリティの凄さに声が出なくなったが、それにもう1つ気になるものがある。

 この武器に[ユニーク]と書かれていているのだ。この表示は通常のルートでは手に入らない武器であることを示し、武器の効果も通常出回らない合法チートのスキルがあるようなものだ。

「じゃぁ、これもらいます!代金は……」

 俺はフレイミングを気に入ったので購入することにしたのだが、

「いやいい。面白いモン見れたからな。今回は代金なしだ。次も割引だがな。」

 メルクは意味深なことを言い、フレイミングを譲ったのだ。

「え、じゃあこれで……」

 僕は少し疑問に思いつつも時間も時間なのでもうそろそろやめようとしたその時、

「だが、1つ俺からも聞かせてくれ。それが代金の代わりだ。」

 メルクから1つの質問、それも俺が一番聞かれたくない内容の質問が来る。

「お前さんの()()()()の姿を見せてほしい。いや、もう1人といった方がいいのか。とにかく今すぐ変われ。」

 そう、スピアの話を持ち込まれるのだ。周りに人はいないが、それでも抵抗はある。

「分かりました。じゃあ、一回この顔を覚えていてください。」

 そう言って仮面を外し、スピアと同じ顔を見せる。

「……分かった。少し待ってるからな。すぐに来いよ。じゃなきゃお前さんを窃盗で指名手配にすっからな!」

 絶対に来いと言わんばかりの脅しを言い、少し不敵な笑みを浮かべたメルクを最後に、一度はちみつレモンミルクのアカウントを終了する。

 そしてギアを外すことなくもう一度ゲームを起動し今度はスピアのアカウントで起動する。

「アカウント、間違ってないよね?」

 さっき間違ったまま始めてしまったので一度確認してからゲームを始める。今の時刻は21:30。本来ならスピアがプレイする時間帯ではないので怒られそうだが、別にバレないよう商店街で走って路地裏に抜ければ何とでもなる。

「一応仮面被るか。」

 もしものことがあるので一応仮面を購入し、装備してから商店街を通る。

 一応路地裏までの道は覚えているので、足早に移動し、路地裏を走り抜ける。さっきとは違い、確信を持っているうえ、ステータスも高いので格段に早く着いた。

 ついた先にはメルクが立っている。

「着きましたよ。」

 俺はそう言い、仮面を外す。

「よし、間違いねぇな。」

 そう確認をとったメルクは手招きし、俺は店の中へと入る。

「さて、お前さんの武器だが、さっきと同じものは作れない。俺は気まぐれで武器を作るからな。」

「そのことなら大丈夫です。この姿では常にこの状態・この装備で活動しないといけないので。」

「そうか、ならいいが……」

 メルクとの会話が不自然にならないよう、ゲームの中の人物として話すようにする。

 それはそうとして、メルクは俺の会話に何か不満があるように少しだけ悩む。

「そうだな、戦い方に合わせた武器を作ってやる。今すぐってわけにゃぁいかないが、2つ武器を新しく作る。1週間くらい待っててくれな。俺がやりたいだけだから、代金はとらねぇ。いいだろ?」

「まぁ……いいですけど」

 少し悩むも戦闘スタイルに合わせて武器を変えられるなら、はちみつレモンミルクのアカウントと戦闘の感覚を出来るだけ揃えられるからせっかくならと作ってもらうことにした。ただ、お金とらないのは営業として大丈夫なのか?メルク。

「恐らく俺の動きを観て」の文なんですが、観ての部分はわざとです。注視するって感じの意味で使っています。

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