このスキルを使っていれば……!
投稿遅れました。スミマセン。
「なんであんなに強いんだよ!?!?」
NPCになりきれなんて言われても、おおよそ今の実力では100回戦って10回勝てるかも怪しい、隣のNPC仲間に負けてついボロが出てしまう。……別にデスして選択フィールドに戻されたからいいんだけども。
長時間戦って末に負けてしまったので、やる気が完全に削がれてしまったので、今日はプレコロをやめることにする。ギアを外し、机の上にポンと置く。
「[志那都比古]じゃなくって[不死鳥]にしておけば良かったぁ!!」
ベッドに横たわり、髪の毛がくしゃくしゃになるまで頭を掻く。
私が中学の頃に考えた「花鳥風月」の型は花は守り、鳥はさやを用いて二刀流、風は攻め、月はカウンターという4種類に分かれている。その中でも「奥義」といえるものがそれぞれ1つずつあるのだ。
そのうちの1つがさっき放った[花鳥風月・志那都比古]なのだ。
元々は上空から回転して素早く降りていき斬りつける技だったのだが、スキルの動きに当てはめる際、「奥義だから」という理由で現実離れした斬撃が飛ぶスキルへと変化したのだ。個人的には変化したので奥義感が増して嬉しい。
そのスキルの誕生秘話は置いておいて、なぜ[不死鳥]にしておけば良かったのか。負けてから言い訳を放つ、負け惜しみみたいなものになるけども、目の前のスピア?だっけ。あのNPCはあの斬撃の量にも耐えうるステータスを持っていたから別の方法を取ればよかったというわけだ。
[不死鳥]のスキルは、プレコロ内では「一定時間HPの回復速度が大幅に上昇し、刀に[熔焔]の効果を付与する」というもの。
言い換えれば、短期決戦に持ち込むよりも、少しずつ、燃焼ダメージで削っていけば勝てたのではないかという話。
[熔焔]は、あらゆる回復行為を制限し、残った体力に応じて燃焼ダメージが変化する効果を持つのだ。燃焼ダメージは、体力が多ければ多いほど減少しにくいけど、少しずつ削っていく量が増えていくという特殊なダメージの与え方をするのだ。それに、燃焼時間は5分。体力を継続的に削り、それでいて回復を受け付けないという、十分化け物時見た性能なのだが、デメリットもある。
一度デスする必要があるのだ。
まぁ、自殺扱いなので相手に経験値といったキルすることで得られるボーナスはないし、すぐに復活するので、デスすることに問題はない。だが、問題は復活した後なのだ。復活時のエフェクトのせいで、復活して1秒程は動けない。また、デスするため、フィールドに応じたステータスへのペナルティを食らうし、元々あった体力から1割減らされる。それでも後からHPが回復するのなら問題はないし、[熔焔]も、効果時間が長い上、斬りつければ効果時間もリセットされるので、実質[不死鳥]の発動時間である1分の間も、燃焼の効果は続くだろう。それに、強化スキルでもあるから、効果時間中でも別の[花鳥風月]のスキルを発動することも可能なのだ。
いつものように戦闘するよりも、回復できるというアドバンテージを持てるため、多少強引に攻めながら戦うことも可能なのだ。
スピアが攻撃をしたところで防がれないのなら対処されるだろうけど、槍という突いて攻撃する武器の特性上、貫いた時に相手が力を抜かなければ抵抗するために強張った体に引っかかって多少動きが鈍くなるはずだ。……経験談でもないから詳しくは知らないけど、多分そうなると思う。
「まぁ、それでも勝てるか分からないかぁ……」
そんなことを口にしつつ、机に置かれたスマホを手に取り、再度ベッドに横たわる。
スマホを天井に掲げるようにして持ち、友達に教えてもらった掲示板を閲覧し始める。プレコロに関する様々な情報が集まっているらしいのだ。もしかしたらスピアを倒す手段があるのかも……なんて思いながら、プレコロに関する掲示板のページに入っては出てを繰り返し、有益な情報がないかを探る。
確かに、プレコロ関連で開いたページの3割くらいはスピアの話題がある。ただ、その情報はほぼ全てがスピアが登場したばかりに話題として挙がったアプデの内容か、スピアが強すぎて諦めているプレイヤーが愚痴をこぼすような場と化してしまっていた。
だが、そんな雰囲気の中でも、数人はスピアと互角に戦ったり、勝ってしまうようなプレイヤーもいるのが確認できた。
「ま、今は無理でもいつかは勝てるようになるかもね。スピアが強化されてるんだから勿論……」
溜め息を少し吐き、少しの間天井を見上げる。またプレコロに関する掲示板を隅々まで探したけど、これといった情報は結局見つからないので10分程探したところでそのままスマホを閉じる。
「さてと、22時過ぎたけど、やることないし、どうしよっかな。」
寝るにしては少し早い。かといってもう一度プレコロを始めるのはちょっと違う気がする。やる気ないし。
「PSPでいいか。「わわわわわわ」に勝ちたいし。」
「ゑゑゑゑゑゑ」という、ランキング1位、2位を争うプレイヤーが雑な名前になっているのは少しどうなのか?と思ってしまったが、他のプレイヤーも「配信中」とか、「配信」の名前が入った動画投稿者のアカウントや、練習目的だけの雑な名前のプレイヤーが多いので名前にはあまり触れないのがこのゲームの最適解なのだと気づいた。個人的にだけど。
ハードに入ってるプレコロのソフトを入れ替え、机に置かれたギアを再度頭に装着し、PSPを始める。
PSPは、あくまで練習用なので基本的にはアップデートしても告知しない。
「うわあ......増えてる」
気づけばモードがさらに追加され、更にはプレコロのアカウントと繋げてプレイすることも可能になり、練習量に応じて経験値が入る上、プレコロ内のスキルを一部モードで使用できるようになっているのだ。
ただ、アカウントの連携をすると、プレイヤー名が出されるため、私がPSPとプレコロのアカウントを繋げたタイミングで「ヒノモト」と表示されてしまえばNPCということがバレてしまうリスクがある。それを回避するためにサブ垢があるわけだが、最初からそのアカウントと接続方法がわからない以上、繋げるのはやめにした。
「繋げられたら楽しそうだったのに。」
アカウントを繋げてスキルが使用出来るようになれば、プライベートな空間で自身のスキルを思う存分練習できたのだが、まぁ、スキルだけじゃない武器だけの対戦もあるわけだし、スキルを放つだけだと、いつかは行動を予測されて避けられるリスクだってある。そうならないようにスキルが無い状態で、己の剣術で勝てるような努力をするべき。そういう考え方を持っておこう。
スキルという自身の手の内を明かさないという利点もあるわけだし、しばらくは刀だけで頑張ってみるか。前連絡先を交換したGMTのグリードさんに詳しい説明を聞けばバレるようなリスクも低くなるわけだし、PSPやめた後か、明日辺りにでも聞いておこう。
そう考えながら適当なモードを選択し、40分程ひたすら記録更新を念頭に、刀を振り続けた。ランキング1位を塗り替えるまではいかなかったけども、記録は更新しているので、まあよしとするか。




