スキルの恩恵
「[狂乱の宴]!」
スキルを唱え、武器を変更しステータスを底上げする。レベルが200になったことでステータス自体が上昇しているので、元々のステータスを割り増しするタイプのこのスキルはかなりの恩恵を得られる。
今までなら30%の上昇でSTRが66程上昇していたが、今はその2倍、132もSTRが上昇しているのだ。ちなみに[愚者の矜持]を発動すると50%も上昇するので、今のステータスだとSTRが220も上昇する。
まぁ、これだけステータスが上がっても、相手もステータスが高いから結局戦闘で与えるダメージの値が大きくなるだけで、削るHPの割合はあまり変わらないんだよね……
多分、戦闘時の感覚が大きく変わるのはAGIだと思う。このステータスは個人のプレイヤースキルで使いこなすようなものだから、レベルが100超えた状態で上げるなら、STRよりもAGIの方が戦闘時に決め手になりそう。
ついうっかり今後の事と絡めてしまったせいで余計なことを考えてしまった。今は目の前のお隣さん(ヒノモト)に集中しなきゃ。
スキルを発動し、ステータスを底上げした後、しばらく考え事をしていたので、立ち止まってしまっていた。だが、ヒノモトは俺の様子を窺うようにして立ち止まっていたおかげでなんとかなった。恐らく立ち止まったままだと、彼女も立ち止まったままになるので、俺の方から攻めることにする。
大きく一歩を踏み出し、繰り出されるであろうカウンターに警戒しつつ、素早く距離を詰める。
「[花鳥風月・朔月]!」
すると、それを見たヒノモトはスキルを発動し、構えの姿勢に移る。前回戦った時、カウンターとして使った技が月に関する言葉だったので、恐らくカウンターだろう。
カウンターを警戒するように刀が届くであろう距離から少し離れたところで動きを止め、突きを繰り出す。射程内に入った槍は当たる寸前に、素早く抜かれた刀の柄で止められてしまう。
「刀を、振らずに斬る!!」
そう叫びながらヒノモトは刀の柄をずらして槍の軌道を逸らすと、消えるように動く。体は線を描くように残像を残し、刀は直線上の全てを斬った。
僅かに動いたのを認識したときに直感で体を反らしたおかげで、その攻撃を避けることが出来た。
そのスキルは移動スキルかと思えるほどにかなりの距離を移動し、さっきと同じくらいまで距離が離れてしまっている。
素早く距離を詰め、再度攻撃を狙う。
「[花鳥風月・光月]!」
ヒノモトは新たなスキルを発動し、直立したまま刀を下に向けた構えの姿勢に移る。俺は刀の届く直前で軽く跳躍し、
「カウンターを狙うというのなら、もう少し深読みしておくことだな。」
そう言い放ち、声を上げながら槍を大きく横向きに振る。
「ハァッ!!」
槍に反応するように振られた刀は円を描くように下から弧を描いて振り上げられ、槍を止めた。
「[空舞]!」
槍に力を入れたまま、空を蹴り、ヒノモトの体に蹴りを入れる。槍を両手で押さえていたため、防御の姿勢をとれずに大きく後ろへと下がった彼女は、睨むようにこちらを見ると、今度は彼女の方から仕掛けてきた。
足音を立てながら距離を詰めると、ある程度の距離まで詰めたところでスキルを叫ぶ。
「[花鳥風月・黒風]!」
彼女はスキルを唱えると、刀の刃を黒く変色させると、減速することなくただひたすらこっちに向かってくる。
姿勢を低くし、槍を突きあげるようにして顔の部分を攻撃する。その攻撃を、ヒノモトは躱すと、刀を振りかぶると、その刀を俺目掛けて勢いよく振り下ろす。一歩下がって回避するが、その威力はすさまじく、異常な量の土煙が宙を舞った。
恐らくスキルの影響だろうと思いつつも、土煙から彼女が出てくる可能性があるので、周囲の警戒を強める。
その時、視界内に一瞬だけ、黄土色の土煙とは別に赤く強調表示されたシルエットが一瞬だけ映る。恐らく体の一部分だけが見えたのだろう。
「そこだッ!」
シルエットが見えたのならと、彼女に攻撃するため、槍を大きく突き出す。槍から吹いた風により、土煙が舞うことでほんの一瞬、槍の周りが晴れその部分の視界が確保される。そこには槍に右腕を貫かれたヒノモトの姿がいた。
畳みかけようと、土煙が視界を覆っていようとお構いなしにその方向に走る。
「[花鳥風月・白鳥]!」
その時、スキルを唱える声が聞こえたため、咄嗟にその方向から離れるようにバックステップを踏む。
声が響いた後、斬撃のエフェクトが何かを中心に回ったのを確認した。それだけで何も起きなかったかと思えば、突風が吹く。周囲の土煙を払い、辺りを晴れさせる。ヒノモトは、スキルを用いて舞った土煙を晴らしたのだ。
「随分と、使いこなしているようだな!」
「熟練の技だからな。今はもう体の一部になったほどだ。……受け入れたくはないがな。」
嫌味を言うように彼女に話しかけたが彼女は自慢げに返答する。最後にボソッと何かを呟いていた気もするが、よく聞こえなかった。
何度か槍を彼女の四肢に向けて突き、まず動きを封じようと試みる。彼女はスキルを使わなくても十分な実力があるようで、全ての攻撃を弾く。反撃と言わんばかりに時々刀を大きく振り俺の体を捉えようとするが、その刀は空振り、寧ろ隙を作ってしまっている。その隙を狙うようにして攻撃を続けているが、時々挟むようにして発動するスキルに攻撃を阻まれ、決め手にならない。
しばらく戦って、拮抗した状況が続く。しかし、俺は圧倒的に劣勢だということに気付いてしまった。彼女はスキルを用いることで半自動的に反応するため、そこまで気を張る必要がない。対して俺は全ての攻撃を自力で弾く上、スキルによっておおよそ人に出来ないような瞬間移動や多方向からの同時攻撃もすべて自身で対応しなければいけない。[狂乱の宴]を使っているおかげでAGIも上がっているので対応はできるけども、やっぱりこの動きを続けるのはかなり疲れる。
ヒノモトのスキルの能力自体が一般的なスキルと一線を画しているのに加え、彼女自身の実力もかなりのものだ。恐らくスキルが無くてもある程度ならカーズやツリアといった上位勢とも渡り合えるのだろう。
そういえば彼女に似たようなプレイヤーがいたような気がするけども……今は戦闘に集中しておこう。
書いていてフウまるの立ち位置が危ういということに気付きました。
NPCが2人、立ち位置が被っているのなら、刀を使うキャラも被っていいよね!フウまるには申し訳ないけども!




