表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14浪生転生記~異世界にいる今、自由を求める~  作者: フィッシュスター
第八章:生と死・絶望と希望

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/193

第93話:情報

「街の様子は変わりませんね.....」

「ここら辺はあまり来たことがないから分からんな。」


 そうだった。


 ジェットは荒野の覇者との戦いから同行したのであって、あのカリストの街では一緒にいたことはない。


「とりあえず、ルイスたちが滞在していた場所へ向かいましょう。」





 ーーー




「ここですね.....」


 一つのドアの前に立つ。


 確かノックは.....


『二回です。三回ではトイレになります。』


 うん。Sariにもインプットされてるね。


 この場所でルイスに教わったことだ。



 コンコン。


 ドアを叩くもそこから返事はない。


「ルイスー。いませんかー?」


 まあ多分いないが.....


 ドアノブを回すと開いていた。


「入ってもいいですか?」

「駄目に決まってんだろ!クソガキが!」

「えっ?」


 ジェットではない。



 一人のおばさんが立っていた。


「もしかして、ここの管理人ですか?」

「ああ、そうさ。」


 髪が赤い。魔族だろうか?


『ライドル族だと考えられます。最大の特徴はその赤い髪です。念力と呼ばれる特殊な魔術を操るとさてています。』


 ふーん。


「ここに前までいた人を知っていますか?」

「ルイスのことかい?」

「ルイスを知っているのですか?」


 管理人なら知っていておかしく無いが.....


 敵に繋がっている可能性も否定できない。


 どうするか.....



「.....あんたたち、こっちに来な。」

「え?」

「早く着いて来い。」

「あ、はい。」


 おばさんはそう言って背中を向けて歩き出した。


 全く何が言いたいのやら.....





 ーーー





「へえ、ここがおばさんの部屋.....」


 質素だなぁ。


 ベッドに小さな机、それと椅子。


 最後に暖炉だ。


 キッチン的なのは.....まぁない。


 俺の家にはあったが、まあこの世界でそんな細かい調理はしない。


 というか、魔術で自分で調整するため必要ない瞬間が多い。



「それで、あんた達はルイスの仲間なんだってね.....」

「え?そんなこと言いましたっけ?」

「いや、視た。」


 視た.....??


「私たちの種族は知っているらしいね。」

「え?ライドル族ですよね。てか、それも言ってませんよ。」

「ああ、ライドル族の念力の一種だ。」


「念力」


 《視考》


『相手の情報を自由に知れる念力です。』


「あんた.....いせか.....」

「ちょっと待て!」

「あ?なんだい。」

「お前の目的はなんだ?」


 危ない。俺が異世界人ということがバレる所だった。


 いや、バレてるんだけど言われたら広まっちゃうから.....


「あんたらはルイスの情報が知りたいんだろう?」

「そうですけど.....」

「なら、私に言うことはないんかい?」


 うわっ、こいつ面倒だ。


「文句があるならもうなかったことに.....」

「すんません!」


 そうだった。思考が読まれてるんだ。Sariと会話してる気分だな。


「あの、ルイスの情報を教えて下さい。お願いします。」


 そう言って俺は頭を下げる。


「いいだろう。」





 ーーー





 おばさんの話によるとこうだ。



 一週間前、ルイスらがある人に捕えられた。


 捕えたのは魔神聖。


 十超新星の一人でこの世界でも上位の実力を持つ者。


 一瞬だったという。


 一撃でルイスは倒れ、捕まえられた。


 おばさんは自分の持っている能力で魔神聖の連れていた部下の思考を読んだと言う。


 なぜ、魔神聖の思考を読まなかったか.....


 上位の実力者は思考を読まれた際の対抗手段を持っている可能性があるからだ。



 それによるとルイスらはカリストの街から東の方の砦へ連れていくと言う。


 殺しはしないのだ。



 最後にこの思考が読めたという。


「ラーファルト・エレニアが来るまでは。」





 ーーー




 は?俺?


「なんで俺の名前?」

「それは分からないね。」

「そうか.....」


 敵の狙いは俺.....


 更に危険が高まった.....が、行くしかない。


 ルイスら避難民を全員救出する。



 行き先は決まった。


 東だ。


「おばさん。ありがとう。」

「わたしゃおばさんじゃないよ。ムシュネネモだ。」


 分かりにくい名前だな!


「うるさいよ。」


 あ、聞かれてるんだった。


「そういえば、なんで教えてくれたんですか?」

「それは.....」




 ーーー





『差別はいつ、どこで、誰に起こるのか分からない。


 差別はなぜ起こるのだろうか。


 なぜ消えないのだろうか。


 人々の争いは止まらない。


 どうすれば止められるのだろうか


 もし、それが止まるときが来たのなら.....


 それは————————』





 ーーー





 かつて、ラーファルトの考えていたことを思い浮かべてムシュネネモはふっと笑う。



「ただ、自由を目指す少年を応援したかっただけさ。」

「はは.....ありがとうございます。」



 ラーファルトはその回答にそう返した。




 ムシュネネモはラーファルトの情報について話すことはない。


 差別をしない者。


 ムシュネネモはその者に心を開く。


 彼女を含むライドル族は魔族として迫害されてきた。


 その分差別に対し敏感である。



 差別をしない者の得た情報を拡散することなど一切しない。


 自分らに良くしてくれる者の不都合にはしないと決めている。



「では、また。」

「ああ。頑張りな。」


 ラーファルトをムシュネネモは見送る。



「念力」


 《守情》


 自分の得た情報を守る技。


 たとえ、同族のライドル族がムシュネネモに対して「視考」を使ってもそれを読み取れない。


 その内容はムシュネネモにしか分からない。




「頑張りなよ。」


 そう呟きながらムシュネネモは以前から守っている情報を思い出す。



 ルインド王国で捕まり、この地までやって来たというルイス。


 それを知りながらここに滞在させた。


 彼は全ての人を守ろうとしていた。


 分け隔てなく。魔族も守る者の中にはいた。


 だが、彼にはそんなの関係なかったのだ。


 避難民は全員助ける。


 それが、彼の思考の中で大きくなっていた感情だ。



 せめて、私ぐらいはこの人の理解者でいよう。


 そう思って危険を犯してまでここに滞在させていた。


「頼んだよ、ラーファルト・エレニア。」


 そう言ってムシュネネモは自身の部屋に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ