第91話:旅の終点
「よし、倒したわね。」
ミルがそう呟く。
「おーい。二人とも大丈夫そう?」
ムーブドウインドで飛んできたラーファルトが二人に来るなりそう言った。
「ええ、大丈夫よ。」
様子を見る限り集まっていたのはそこまで強敵ではないようだ。
あとは門まで進む簡単な仕事だ。
この旅もそこで終わり.....旅の終点だ。
「それじゃあ.....」
キュオオオオオ.....!!
《シェルマッド!》
音が響き空から攻撃が飛んでくる。
ドオンと轟音を響かせ攻撃が防がれる。
見た目はプテラノドンだな。
『はい。プテラノドンです。』
プテラノドンなのかよ。
「こいつも飼われてる奴が?」
ジェットがそう聞いた。
「まあ状況的に考えればそうでしょうね。」
「でも、さっきと違うのは完全に躾がなっているわ。」
ミルがそう言った。
「さっきの奴らは躾されてなかったんですね。」
ミルの発言からそう捉えられる。
というより魔物を躾って出来るのか?
『極めて困難です。』
だよね。なんでされてるんだろう。
まあ、いいか.....
「とりあえず、さっしと倒して帰りましょう.....!!」
ーーー
「攻撃はジェットが中心に行いましょう。動きをジェットが封じて止めをミルが刺します。」
「ええ。分かったわ。」
「ああ、任せろ。」
俺の指示に二人がそう同意する。
そして俺は全体のサポートだ。
《ロックショット!》
とりあえず様子見って感じ.....
キュオオオオオロロロロロ......!!!
そう叫び声を上げるととんでもない威力の熱戦が飛んできた。
そんな反撃しなくても良くね.....!!??
「俺がやる。」
そう言ってジェットが剣を構えて立つ。
短い旅だった気がする。
この旅の中で培った信頼が、その背中を大きく見せる。
「ああ、頼んだ。」
ジェットはフッと笑って技を繰り出した。
「荒野独流!」
《黎明剣!》
熱戦をぶった斬り、そのまま敵へのダメージも与える。
「ラーファルト.....!!」
ミルが突然そう名前を呼んできた。
が、もうその理由なんて分かりきっている。
「最後、任せたよミル!」
「ええ、一撃で決めてやるわ!」
《デストロイフレイム!》
ミルを避けつつ飛んで逃げようとする敵の羽を攻撃する。
《混魔術:音の炎槍!》
そのまま攻撃をして敵をその場に留める。
「はあああああ.....!!」
ミルが敵に向かって走っている。
《ウインド!》
ミルに追い風をかけてスピードをあげる。
「流石ねラーファルト......!!」
「ミル.....行け.....!!」
「ガルス流!龍麟!」
《黎明剣!》
「はあああああ.....!!」
雄叫びをあげながら剣を奮う。
その一撃は敵の首を貫いた。
ーーー
「倒しましたね.....」
「ああ。」
「そうね。」
さて.....もう門への道に敵はいない。
正確に言えばいたのだが、戦いの余波でいつの間にか倒れていた。
思い返せば、今の戦いが三人での最後の戦闘だったかもしれないのか。
そう考えると感慨深いものもあるな.....
「ラーファルト!行くわよ!」
ミルが俺の手を握って走り出した。
この旅で沢山の出来事を体験した。
前世で14浪したとは思えないような人生を送ってきた。
本当に楽しかった。
そう考えながら俺は王宮の中へ進んだ。
ーーー
「国王陛下.....ラーファルト・エレニア、ただいま戻りました。」
王宮に着くなりすぐにファイディンと話すこととなった。
ファルゴの跡継ぎ、つまり息子である。
「堅苦しいのは今はよい。我が娘を.....ミルをよくぞ無事で.....!!」
と感謝を伝えてきているが.....
「いえ、元はと言えば私が捕まってしまったせいです。申し訳ありません。」
「それは良いのだ。無事で帰ってきたことが何より。それに、これで停戦協定の締結を進められる。」
やっと、一息つけるといったところだろう。
「それは良かったです。」
「して、ラーファルト。お前はもう二年の宮廷魔法使いの任期が終わっておるが.....」
そうか.....そういえば俺はもう宮廷魔法使いでなくてもいいのか.....
ただ、それ以外にやることがあるかと問われるとない。
サナたちの為にと思っていたが.....もうそれは叶わない.....
どうするか.....
「少し考えても良いですか。」
「ああ、構わん。停戦協定が締結された後あたりで聞かせてくれ。」
「ええ。分かりました。」
【記録:人魔暦9年】
ラーファルト・エレニアら黒の破倒がルインド王国へ帰還した。
これにより、戦況は一気に変わる。
ルインド王国はラーファルトらが既に蹴散らしていた王宮を囲む軍勢の残党を掃討。
ジャック王国は打つ手が大幅に減少。
そこでルインド王国側から持ちかけられた停戦協定を締結することとする。
この二国は後に平和条約も結び、それ以来、二国間で戦争を起こすことはなかったという。
ーーー
「平和ですね。」
「ええ。そうね。」
ミルに俺はそう話す。
ついこの間まで戦争をやっていたとは思えない程に復興している。
「ラーファルトの魔術のおかげよ!」
「いえ、そんなことはないですよ。」
あくまで簡易的なものを作っただけだ。
それでも範囲が広くて魔力も危なかった。
「私、旅が楽しかったわ。」
ミルがこう言った。
「うん。俺もだよ。」
俺はミルの手を握る。
「また連れてってね。」
「ミルは王女様なんですよ。」
「はいはい。お熱いね。」
ジェットがそう後ろから声をかけてきた。
邪魔しやがったな!
ちょっとイチャイチャして楽しかったのに!
「そんな怒んなよ。」
「別に怒ってませんよ。」
そう俺はぶっきらぼうに返す。
「楽しかったな。ありがとう。俺はこの旅が忘れられないものになった。若かりし日を思い出させるような刺激的な旅だった。」
ジェットはどこか遠くの空を眺めるようにしながら呟く。
「楽しかったよ。お前らの分も.....」
「ええ。それは良かったです。」
俺たち三人は微笑みながら空を見上げ、旅の出来事を何度も何度も頭の中で反芻していた。
ーーー
それから三日後、突如としてその連絡が入った。
『ルイスから通信です。』
出て。
『ラーファルト!聞こえるか!敵が...』
敵.....!!??
どうした!ルイス!ルイス!
通信はそれで終わっていた。
これにて第7章終了です!
また今回でラーファルト、ミル、ジェットでの旅も終わりを告げました。
100話までもうすぐですね.....
あっと驚くような展開を用意していますのでぜひ、ブクマ、評価をしてお待ちください!
モチベが増加いたします。本当にしていただけると嬉しいです.....!!
感想とかもぜひ.....!!
それでは、第8章以降でも
14浪生転生記〜異世界にいる今、自由を求める〜
をよろしくお願いします!




