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第90話:幻惑流

「見えてきた.....」

「.....ついに帰ってきたらのね。」


 王宮が見えてきた。


「ジャック王国の軍が囲んでますね。」

「ええ。籠城してるわ。」


 だが、トリウスによると戦況が不利というわけではないらしい。


「王都を囲むことには成功しているが、無理に攻め込むことが出来ないほどの守りだと聞いている。それに地方は押し戻されてきているという噂も耳にしたぞ。」

と言っていた。



「とりあえずあの囲んでいる軍を超えて帰るしかありませんね。」

「ああ。だが、そこまで強くないかもな。トリウスのレベルでもかなり強いとのことだった。」


 一つの部隊の副隊長をしていたトリウスは決して弱い部類ではない。


 そう考えるとジャック王国の兵士が強いイメージがない。


「ま、油断はせずにいきましょう。」


 そうして俺たちは王都へ向けて今一度歩き出した。





 ーーー





「もうあと少しで囲む兵士の所へつくが.....」

「対魔結界が張ってありますね。あまり影響はないかもしれませんが、トランスペアレントはどうなる.....」


『複雑な魔術ほど対魔結界内で制御しにくくなります。むしろ初めから解いて正面から突破する方がいいかと考えられます。』


 なるほど。


「正面突破しましょう。」


 それにもう一つ懸念がある。


「トランスペアレントで王宮内に入ると侵入者と勘違いされる可能性がある。敵と戦ったと見せつけることが大切だ。」

「確かにそうね。」


 そうミルも同調する。


「だが、ラーファルトどうするんだ?出来るだけ死者は出さない方針だろ?」


 そうだ。


 俺は出来る限り犠牲を払わずに戦っている。


「今回は対魔結界があります。魔術を使えないという敵のイメージを利用して不意打ちします。」


「ならば俺は魔術を放つまでの護衛か。」


「いえ、今回はミルの護衛です。ミルはもしかすると王女として顔が割れてるかもしれませんからそちらを警戒します。」


「なるほど分かった。」


 あと、一応守ってましたって感じにしときたい.....


 そういえば俺ってミルと付き合ってる報告をしないといけないのかな.....??


 王にそんなこと言えるか.....??


 まあ、それはあとで考えよう。


「じゃあ、私はラーファルトの護衛ね!」

「ええ。よろしくお願いします。」




 ーーー




「行きましょうか.....」



「トランスペアレント・解除」



 敵の前へ姿を現す。


「て、敵だぁー!!!」


 叫ぶ声が響き兵が少しずつ集まってきている。


 かなりの人数だ。


 この人数を倒して進まなければならない.....


 魔術は使えないというブラフを張るために使えない。



 敵へ向かって三人でゆっくりと歩く。


「はなてぇ.....!!」


 敵の声が響いた。


 弓矢が飛んでくる。


「今です.....!!」

「荒野独流」


 《掌斬!》


「行くぞ.....!!」


 ジェットの攻撃を起点として俺たちは走り出す。



 俺は魔術を使えないというブラフを張るために剣を持っている。


 この剣久しぶりだな.....


 モルガンから誕生日に貰ったものである。



「ガルス流奥義」


 《一閃!》


 まだまだ威力の弱い攻撃だ。


 俺の剣術のレベルはミルやジェットとくらべものにならない程低い。


 というよりミルは俺とほとんど変わらなかったはずなのにどんどん先へ進んでいく。



「ガルス流見攻!」


 《流飛!》


 目の前の敵が吹っ飛んでいく。


 死んでは.....いない.....!!



『敵の攻撃が正面から来ます。』


「あぶ.....」


「アリス流主技」


 《懐流!》


 敵の攻撃をそらしてそのまま倒す。


 もちろん殺すことはない.....



 だがやはり反応が遅れるな.....



 普段魔術による対処をしているし、魔物との戦いだと魔力探知でほとんど済ませる。


 この戦闘はその違和感を乗り越えることで勝つ確率が跳ね上がる。



「ラーファルト!行くわよ!」


 ミルはもうかなり前の方へ進んでいた。


 もちろんジェットもその護衛についていっている。



 敵は俺の方へ少し集中しているようだ.....




 俺が一番弱いと踏んだのか.....??


 舐めやがって.....



 そう考えるとむかつくし、今すぐにでも魔術を使ってやりたくなるがまだできない。


 敵が対魔結界を解除して魔術を使用してくる可能性がある。


 遠距離から魔術を使われると面倒なことになると考えられるからだ。




 仕方ないか......


「ガルス流急手」


 《光剣!》


 高速で移動及び攻撃を行う。



 が、今回は移動に重点を置き、攻撃は正面の敵のみに絞った。



 ミルの近くまで来た。


 ここまでくれば......


「荒野独流」


 《克戦斬!》


 ジェットたちの攻撃により迂闊に近づくことなどできはしない......


 とはいえ......


「敵が集まってきましたね......」


 最初よりは王宮に近づいた。


 大体半分ほどまで来たのだろうか......



 もうそろそろリーダー的な奴が現れてもおかしくない。


 戦争を早く終わらせるために一度話してみたいんだが......



「ほりゃよ、ほりゃよ、ほりゃほりゃよ......ひゃははは。なーにもおおんだー。」


 むしろこっちがお前が何者か聞きたいわ!


 酔っ払い?


「シャベル兵士長!」


 こ、こいつが兵士長......!!⁇


 ただの酔っ払いだろ!


「そう、わしはたーだのよっぱりゃい。見逃してけりゃ~。いやっはっひゃっひゃっひゃ。」


 心でも読んでんのか......!!⁇


「うい~。ひゃ~。うまい。」


 酒瓶から直接飲んで独特な笑みで笑っている。


 だが驚くことにこいつに隙はない。



「強いですね。俺がやりましょう。ミルとジェットは走って。」

「さーせないよーん......おじちゃんそんなことしちゃったら怒られちゃうもんねえええ。うひゃひゃ。」


 きっしょ。なんだよマジこいつ。


「それに......そこの女の子。王女様でしょ。守れるの?一人で?」


 まずいな......こいつを警戒しすぎるのは良くなかったかもしれない。



「今すぐ走って向かってください。不味いかもしれない。」

「ええ。分かったわ。気を付けて!」

「ああ、任せたぞ。」


 そう言って二人は走り出した。


 段々と兵士の数が増えている。


 こいつの笑い声、声、会話、それを目印に敵兵が集まる。


 自分の実力も仲間も操る......こいつ......頭も切れるのかもしれない。


「よっひゃー。はじめちゃうよーん。」


 いや、酔っ払いは本当かもしれない。


 てか普通にただの酔っ払いだ。




 ーーー




 ミルとジェットは俺の言葉を信じて走ってくれた。


 今、ここに残るのは俺一人。


 一人でこいつを倒す.....


「行きますか.....」


 剣を構える。


「フウウ.....」


 息を吐いて、集中力を高める。



「ひゃははははは。」


 相変わらず酔っぱらった様子のままだ。


 が、今も隙はない。



 ならば.....隙を作ってもらおう.....!!



「ガルス流見切り」


 《合わせ太刀!》


 攻撃の手札を減らし、更に隙を作らさせる。



「ふん。剣士としてまだまだ未熟だねえ。」


 途端に敵の顔は冷酷になる。


 目が獲物を狩る獣のそれに見える。



「幻惑流・其の一」


 《投》



 手に持っていた酒瓶を俺に投げつけてきた。


「くっ.....!!」


 キイン.....!!


 と音を立ててそれを俺は剣ではじく。


「なっ.....!!」



 俺に敵は既に突っ込んできていた。



 シュン.....!!


 服が切れる。


 危ない......


 身をねじって避けることに成功はしたものの少しずれているだけで負けるレベルのものだ。


 やはりこいつは強い。


 幻惑流はとりあえずよく分からない剣技だ。


 型にはまらない自由な剣技。


 そんな面倒くさいようなものでも.....それでも......


「倒すしかない......!!」


「ガルス流!龍」


 《二連斬》


 近距離でだめなら遠距離からの斬撃で攻撃する......!!


「やはり、甘いのう......」


「幻惑流・其の二」


 《影踏み》


「消え......!!」


 敵の姿が消えた。斬撃は敵の立っていた場所よりも後ろに飛ぶ。


「なっ......!!」


 突如敵は再び目の前に現れ剣を振りかざす。


 咄嗟の出来事に反射で剣で防ごうとするが、次の瞬間にはまた敵の姿が消えていた。


 いや、後ろに移動していた。


『後方からの攻撃です。』


 後ろ......!!


 Sariの声に任せるまま剣を後ろに回す。


 キイン.....!!


 間一髪のところで剣と剣があたり、攻撃は回避できた。



 危ない.....


 Sariがいなければ死んでいた。


「強いな.....」

「うひゃひゃひゃ。そうだろう。そうであろう。」


 こいつとはもう話したくないわ。



 そうだ......剣術で今の俺はこいつの足元にも及ばない。


 魔術を使うしか俺に勝ち目はない。


 魔術を温存なんて甘い考えは消せ......


 次で決める......


「ガルス流急手」


 《光剣》


 と言っても敵への攻撃のつもりではない。


 移動のために使っているという感じだ。


 敵の周囲を走り回る。


「攪乱か......甘いな。見え見えだ。」


 キイン......!!


 俺が何度剣をふるおうと敵にはじかれる。


 それならば......死角から......


「どうせ死角であろう。」


 なっ......


「幻惑流・其の三」


 《湾剣》


 うねうね曲がり軌道の分からないような剣が飛んでくる。


 回避は不可能......


 だが......


「俺の勝ちだ。」

「何を......⁇」


 その声に敵は困惑を隠せていない。


 シャキン......


 と敵は死角から攻撃してきたそれをもう攻撃し終えていたのだ。



 《ゴーレム》



 剣術ではまだまだ甘い俺を舐めていたことがお前の敗因だ......



「ガルス流螺」


 《獄断》


 殺しはしない気絶させる。


 バタッ。


 とあっけなく敵は倒れた。


「やるな....また.....会おう......」


 どうやら酔いは覚めたようでそう声をあげ、敵は目を瞑った。



 さて、ミルとジェットのところへ向かおう......


 その前に周りの兵士だが......


 《エアーボム!》


 技巧級風魔術だ。


 最も死なないように威力は弱めている。



「こ、こいつ魔術.....!!ぐっ.....」


 できるだけ情報が広まる前に敵は倒す。


 ある程度の敵を倒した後、俺はミルとジェットのもとへ向かった。



 《ムーブドウインド!》


「さて、今二人はどこにいるのか......」





 ーーーー





「ジェット......」

「ああ、こいつを俺がやる。もう一方は頼んだ。」

「ええ。思う存分やれそうね。」


 二人の目の前にいたのは二体の魔物だった。


「まさか兵士が魔物を飼っていたとは......」

「捕獲の類でしょうがね......」

「ああ、まあとりあえず倒そうか......」


 いい感じにこの二体の魔物に躾はできなかったようで何人かの兵士は殺されている。


 だが、それほどに強い。


 敵兵への抑止力になる戦力だ.



「荒野独流」


 《光線斬速!》


「早めに終わらせるとしよう......」



 見えない程の速さの斬撃が敵を襲う。


 足がいつの間にか切れ、敵はバランスを崩す。



 グラアアアアア......!!



 そう叫び声をあげ、体勢を崩しながらも魔物の目はジェットを捉えていた。


 攻撃が来る......!!


 ジェットがそう思うと同時に敵はブレスを放ってきた。



「荒野独流!」


 《魔終斬!》


 ジェットはそのブレスごと攻撃をぶった切った。




 まだまだこいつは弱いな。


 ジャック王国に捕まらなかったらもっと強くなっただろう......


「荒野独流」


 《黒殲獄豪傑斬!》


 ジェットの斬撃は反撃の暇さえ与えず無慈悲に敵を貫いた。




 ドオン.....!!


 と音を立ててミルがもう一体の魔物をジェットに少し遅れて倒していた。





 ーーー





「ガルス流!大剣!」


 《雷光!》


 敵はその攻撃を自身の自慢の鱗で受ける。


 一瞬その威力を殺し切ったかに見えた。


 が、次の瞬間にはヒビが入り、瞬きを一度した後には完全に鱗は破壊されていた。



 ガルッルルルル.....!!シャアア.....!!



 少し気持ち悪いような泣き声の後、圧縮した水の光線を放つ。


「ガルス流!壕」


 《土壊!》


 地面を叩き、割れた地面の破片が周りに飛び散る。



 その影響で僅かに水の光線がずれる。



 そのほんの僅かなずれにミルは技を放つ余裕が生まれる。


 見えたわ.....


「ガルス流!黎撲!」


 《貫絶剣!》


 ミルの放った攻撃は敵を真っ二つに貫き絶命させた。

次回!7章完結!旅の終わりです!新展開がやって来る......!!


ぜひ、ブクマ、評価、感想等して待っていて下さい!(明後日更新予定です)

やっていただけるとモチベにつながり嬉しいです!(執筆速度もあがるかも!?)


執筆速度が上がるかは分かりませんが、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!

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