第81話:潜んでいた人々
「うわぁ.....大きい。」
「ええ。そうね.....おいしそうだわ。」
いや、そうはならないだろ!
「俺とミルで動きを封じながらダメージを与える。ラーファルトはそれに止めを。」
「ええ。分かりました。」
ジェットが.....作戦を立ててる.....!!
森に入る前は脳筋で戦っていたのに!!
成長したなぁ。
「ラーファルト!何をしている!行くぞ!」
「あ、はい!」
あれ、なんか俺の立場奪われてね!
前まで指揮してたのにその権利を奪われたぞ!
『マスターが変なこと考えているからです。真面目にしてください。なお、戦闘サポートモードへ移行しました。』
あ、はい。すみません。
なんか懐かしいな戦闘サポートモード。
「じゃあ、行きますか.....!!」
《雷砲!》
初めは覇闘級水魔術。
このレベルの規模の技は仲間を巻き込んでしまう可能性が高まる。
早めに打ってしまうのが手だ。
が、敵はその攻撃に気付き避ける。
続けて、敵の後方では爆発がおきる。
やはりすごい威力だ。
俺にはまだ正確にコントロールできない。
『敵の反撃が来ます。気をつけて下さい。』
了解。
ウオオオオオオオアアアア!!!!
ドラゴンが炎を吹いた。
ブレスだ。
《ウォーターカット!》
水の防壁でそれを防ぐ。
《バブル!》
ミルとジェットの体に水をまとわせた。
本来のバブルは敵を捕える魔術だ。
だが、外側からの強度をあげることで防壁にもなる。
「そのまま炎に突っ込んで下さい。大丈夫ですから。」
「ああ。行こうか。」
「ええ。ラーファルトが言うんだから行けるわ!」
こういうところに信頼関係が生まれていると連携が取りやすいと実感できる。
炎の中に飛び込むなんて出来る気がしない。
俺はしない。
『.....』
おい、Sari。今、引いてただろ。
『いえ いえ、そんなことはありません。戦闘に集中しましょう。』
ウオオオオオオン!!!
ドラゴンが叫び声をあげた。
うまく、ミルとジェットの攻撃が決まったのだろう。
だが、まだ敵は倒れていない。
皮膚が硬いのか、元からの耐久力なのか.....
まぁ、いいか。
「バブル解除!」
これからは炎に突っ込むなんてこともないだろうし。
何より、これをしていると少し動きは鈍る。
故に解除。
そのまま俺も攻撃の援護に備える。
ミルとジェットがドラゴンを前後で挟んでいる。
俺は、ドラゴンから見て少し離れた右手といったところだ。
さて、どう倒すか.....
『敵の解析が完了。戦闘掌握を開始しますか?』
早いな。
『なお、以前の実力では出来なかったこともありますので、難易度は高めになっております。』
まあ、大丈夫だろ。
それよりミルとジェットはどうするんだ?
『ミルにはロードリングを通して。また、ジェットには脳波を通じ、情報の伝達を行います。』
おお、なんかすげぇ。
Sariの成長というか、進化というか。
そんな感じなのを実感できる。
『改めて聞きます。戦闘掌握を実行しますか?』
ああ、Yesだ!
『戦闘掌握を開始します。』
「はああああああ!!!」
初めに動いたのはミルだった。
『ミルへ指示を出しました。彼女の役割のほとんどは囮です。戦場を駆け回り、攻撃を繰り出す。ただし、無視するならば、敵に相応のダメージが入ります。』
「ガルス流奥義!」
《一閃!》
キィン
音を立てて攻撃がぶつかる。
ドラゴンは頭に生えた角から雷をだし、ミルの攻撃を防いでいた。
それはミルの剣を弾く。
『想定内です。このままミルには攻撃をしてもらいます。』
「荒野独流!」
《零炎》
ジェットが攻撃を繰り出した、ら
ミルが派手に動くことでジェットは影で静かに動ける。
そして、火力も高い。
そこ攻撃は足にあたり、切れる。
『今です!マスターはこの血を凍らせて下さい!』
《アンダーフローズン!》
水魔術は水辺で威力が大幅に増す。
敵の血も半分は水辺みたいな感じだ。
威力は大きくなり、敵の足を凍らせる。
が、敵も黙ってはいない。
『敵は羽を使って飛びます。』
「ウオオオオオオ!!!」
敵が天へ舞い上がる。
俺の拘束意味は......??
と、思ったが、氷から足は外れない。
あろうことか、地面までも持ち上げる勢いで敵は跳ぼうとしている。
『マスターの魔術の威力的にそうそう、壊されません。氷の侵食している地面の深さまでの土ごと飛ぶでしょう。』
それでは、重くて、高さもスピードも出ない。
『左様です。』
今、天にいるドラゴンを見ると心なしか苦しそうだ。
重そう。
足枷をつけている感じだな。
『ロックショットで羽を攻撃し、落として下さい。』
飛ばれたくなかったのなら、先に羽を潰しても良かったのでは.....??
『落下でダメージを入れたかったので。』
なるほど。
《ロックショット!》
以前なら飛んでいる敵の羽を攻撃するなんて芸当出来なかった筈だ。
だが今は、容易く、敵の羽を貫く。
敵はバランスを崩しながら地へ落ちた。
敵は満身創痍といった状態だ。
Sariの戦闘掌握すごくなったなぁ。
『そうでしょう。』
やっぱ違うかも。
『.....チッ』
やっべ、怒った。
で、次はどんな感じ?
『.....恐らく敵は最後の力でブレスを打って来ます。霹空によりかわし、後方へまわって下さい。』
了解!
「ウオオオオオオ!!!」
早速来たか.....!!
「調停の技!」
《霹空!》
ブレスに当たるギリギリのタイミングで発動する。
それにより敵には.....
よし、気付かれていないな。
ブレスにより俺たちは焼かれ、塵となったように感じるだろう。
ここで最後に不意打ち.....!!
「荒野独流」
《黒殲獄豪傑斬!》
「ガルス流黎撲」
《貫絶剣》
おお.....すんげえ威力。
『いえ、これが普通です。それと、止めを。』
おお、この攻撃を喰らって生きているのはやはり耐久力が高いな。
《混魔術:火炎放射!》
ふう。倒した。
前はこのレベルの敵を倒せていたかと聞かれると微妙だろう。
「全員、やっぱり強くなってますね。」
「ああ。連携も上がったし、いい感じだ。」
ジェットがそのように俺に同調する。
「あとロードリングも凄かったわ!すぐに技が決まるもの!」
「ええ。便利になりましまね。」
『フフフ。そうでしょう。』
やっぱ違うかも。
『チッ.....!!』
すぐ怒るなぁ.....
ウエ.....エエ.....
『私はそんなに短気ではありません。』
ウエエ.....エエエ.....ちょ.....ダ.......
『まず、マスターが.....』
ちょっとSariうるさい。
何か聞こえないか.....??
『音を探知します。音を正常化し流しますか?』
ああ、頼む。
『ウエエエエエン.....!!』
泣き声か.....??
『ダイ!本当に静かに!見つかるわよ!ここら辺にはジャック王国の兵士がいるかもしれないの!殺されちゃうわよ!』
『こ、こ、殺されちゃうの.....??う、ウウウアアアアアン......!!』
ああ、俺たちの戦っている音で泣いていたのか。
Sari、この人たちの脳波と喋れるか?
『可能です。ただし五十人以上の人数がいる為、相当の魔力を消費します。』
大丈夫だ。頼む。
なんたった魔力量は豊富だからな。
皆さん聞こえますか?
『え、え!ど、どこから!』
うん混乱した声が聞こえるね。
さて、どんなふうに警戒を解こうか.....
とりあえず思ったことでも話そうか。あ、あっ、そういえば考えてたこと全部伝わってるんだっけ.....??
『あ、あなたは何なの!だ、誰!』
この人はさっき泣いていた人をを宥めてた人か?
まあそんなことはいいだろう。
俺はラーファルト・エレニア。ルインド王国の宮廷魔術師だ。ちなみに最近覇闘級水魔術師になった。
『ラーファルト・エレニア!?あの若い人!』
おお、そこまでここは王都から遠くないのもあって噂は知られてるのか。
ああ。俺はその若い人だ。ちなみに王女の護衛の仕事をして、今は王都へ戻っている。
で、逆に聞きたいのだが今どんな状況なんだ?
『それは.....』
『俺から話そう。』
お前は?
その声.....今はじめて聞いたが......
『俺はここらの村の中で最強と言われる男、アーレウスだ。』
アーレウス?聞いたことはないな。
『ああ。そこまで有名でもないからな。』
ふむ。
で、今は地中にいるよな?
『俺そんなこと言ったか?』
ああ、いやSariから情報が脳に直接流されたからそうかなと。
『Sari?』
ああ、気にしなくていいよ。
で、どうしてそんなところに?
『ジャック王国の兵士から逃げてるんだ。俺たちは一度捕まった後に脱獄して、今、潜伏しているといった状況だ。』
なるほど。
とりあえずこのままでは会話しにくいですから外に出て来ましょうか。
『外に?魔術を使う必要があるから数日はかかるぞ。』
ああ、大丈夫ですよ。
念の為衝撃や自分の身に気を遣って下さい。
『ん?』
《ロード!》
土が掘られる。
地中へ光が差し込み、そこにいる人々が眩しそうに上を見ていた。
屈強な男、子供、お姉さん。
ざっと五十人ほどの人数だ。
「こんにちは。」
その人々へ話しかけながら次の行動を考えているのであった。