第80話:森を抜けて
新章開幕です!
「もう出るんだろう?」
「ええ。一刻も早く帰らないといけませんので。」
俺は昨晩ミルと交際することになった。
まだ8歳だぞ!
と言いたい所だが、どうもこの世界の子供の精神年齢は高いとSariが言っていた。
異世界から来た俺がそこまで変なやつだと思われていないのはそのお陰だ。
「では。またいつか会いましょう。」
「ああ。いつでも歓迎するよ。」
ルーナとそうして別れを告げる。
「ジェット!お前センスあるな!」
「そうか。感謝する。ライオも剣術が上手になっていた。」
ジェットとライオはお互いに何かしら教え合っていたらしい。
どっちも強いからな。
更に成長するかもしれないと思えば.....
末恐ろしい.....
いつか世界最強レベルの戦士になっていそうだ.....
「ミル。頑張れよ。」
「え、はい。頑張るわ!」
ルーナから話しかけられたミルはそう返事をしていた。
「.....も.....もだよ。」
「ふぇ.....!!」
ルーナから呟かれた言葉に何やら顔を赤くしているが、まあ気にすることないだろう。
「それでは!皆さん!ありがとうございました!」
「ああ!元気でな!」
「またどこかで!」
「近くに来たら顔だせよ!」
「調停の技」
《霹空》
高速移動が可能な技だ。
が、この技は行く場所の道のりが全て、細々と分かっていないと使えないらしい。
俺が技を使って村の方へ行けたのは、一度ルーナの使っていた時に経験していたからだそう。
つまり、今からの移動は使えない。
森を抜けた後の移動だ。
そんなことを考え、瞬きをすると既に森を抜けた先の景色が見えていた。
「なんか森の外って久しぶりね!」
「昨日、出ていましたけど.....」
「き、昨日ね!昨日!」
ミルはなおも顔を赤くしていた。
確かに俺も気恥ずかしい。
この話はやめにしよう。
よくよく考えれば人生初彼女だ。なんか嬉しい。
『前世から含めてですね!良かったです!』
う、うるせぇ!
Sariめ!調子に乗るな!
そういえば、ここら辺に任務は?
『一切ありません。戦争の影響が確実に大きいです。ただし、冒険者協会施設は結界により守られ、使えるようになっています。』
なるほど。
「今から、冒険者協会の施設に向かいます。任務の報酬を受け取りますから。」
「ええ!分かったわ!」
ミルは勢いよく返事をした。
が、ジェットは何やら考え込んでいる様子だ。
「ラーファルトの雰囲気、変わったな.....」
「え?そ、そうですか?」
まだ、俺とミルとの話はしてなかったのでそんなバレるものなのかと思う。
「なんというか、前より明るくなった感じが。記憶取り戻す前のお前よりな。」
ああ、確かに.....それはらあるだろう。
「まあ、色々吹っ切れましたし。あ、あとミルと交際することになりました。」
そう言うとジェットはミルと俺を交互に見てクスっと笑った。
もちろん俺たちの顔は赤い。
「そうか。」
ジェットの反応はそれだけだった。
なんか、もっと言ってもいいとは思うが、まあジェットらしいといえばそうだろう。
あまり口うるさいタイプではない。
仲間の為には色々してくれるが.....
なんか俺が記憶無くす前に戻った感じだ。
ジェットによると明るくなったらしい。
いい兆しなのではないかと思う。
ミルが俺を少し、立ち直らせてくれた。
蓋をしていた原点を思い出させてくれた。
もう一度、目指してもいいのかなと感じる。
自由を。
ーーー
「着きましたね。」
森を出てから二日。
早くも冒険者協会の施設に辿り着いた。
結界あるって言ってたけど.....
『ロードリングを前に差し出して下さい。』
こうか.....??
『認証中.....完了。結界の一部を解除します。』
うお、すげえ。
結界の一部が開いた。
「これが、冒険者協会か。」
施設の中に入るなり、ジェットがそう言う。
「そういえば、ジェットは初めてですもんね。」
「ご用件は何でしょうか?」
冒険者協会の人が受付でそう言っていた。
まあ、こんな戦争の起こっている地域ということもあり、人が来ないと思っていたんだろう。
制服を適当に来ていて、髪がボサボサだ。
「報酬の受け取りをお願いします。」
「かしこまりました。ロードリングをここにかざして下さい。」
と、なんか前世でのクレジットカード決済で使われそうな感じのやつが出された。
エ◯ペイって言ってそうだ。
そんなことを考えている内に報酬量はでたようだ。
「.....凄いですね。この短期間で金貨25枚分.....??どうやって.....」
え、いつの間にか報酬が溜まってるな。
「こちら、どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
なんだかんだで、金貨25枚あれば余裕で半年は暮らせる。
質素になるがな。
十分な資金だが.....
なんかミルとジェットなら野生の食料で大丈夫な気もする。
武器か魔道具かなんか買ってやるか.....??
「ラーファルト!これ!持ってもいい!?」
そのミルの声にびくっとする。
「ええ。いいですよ。」
なんか、交際初めて間もないから、緊張するな。
誰でも通る道なんだろうか。
「おおー。重いね。」
そう言って金貨の入った袋を上下に移動して遊んでいる。
こう、のんびり出来るのも久しぶりだな。
協会の中は結界で安全だし.....
ここで休息するのも手か.....
「すみません。ここ、一日泊まれますか?」
「ええ、構いませんが、食料が不足している為、そちらは各々で調達することになります。」
「分かりました。では手続きをお願いします。」
ーーー
「ミル!行きますよ!」
宿泊の手続きが終わってもまだミルは金貨の入った袋を上下させて、遊んでいた。
こういう所は子供っぽくてなんか安心する。
そこも好きなんだけどね!
「そういうところ、嫌いじゃないですよ!」
「なっ.....!!」
ミルは俺のことを後ろからぽこぽこ叩いてきた。
「痛い!痛い!地味に痛い!」
ミルは加減知らないからな.....
「おい、イチャイチャするな。行くぞ。」
ジェットに言われてしまったじゃないか!
『元はマスターのせいです。』
はい。すみません。反省します。
それにしても.....
「どっちに行けば獲物がいるだろうか?」
『魔物探知をしましょう。』
「え?」
「どうした?」
思わず声がでてジェットにそう聞かれた。
「いや、ロードリングが魔物探知をしましょうって言ってて。」
「私も言っているわ!」
ミルも同じのようだ。
ちなみに魔物探知って何なんだ?
『その名の通り、魔物を探知する機能です。アップグレードにより手に入れられる能力の一つです。』
なるほど。
なんか魔力探知みたいなものなんだろう。
多分。
じゃあやってくれ。
『了解。しばらくお待ちください.....』
一分後、Sariから返答が返ってきた。
『東へ一キロ進んでください。ドラゴンがいます。』
いや、つよそー.....
「ラーファルト!ドラゴンいるらしいよ!」
ミルも同じ探知のようだ。
これは.....確実にいるのだろう。
「早く!行くわよ!」
ドラゴン危ないから行かない!
などという選択肢など存在してないらしい。
「行きますか。」
そう言うと同時に、俺たちは歩み始めた。
来週の月曜日からは月、水、金に加え、土日のどちらかで投稿にします!
週四回、読みに来て頂けると嬉しいです!




