第77話:光る蝶
「時間がもうすぐ.....もうすぐだ.....!!ここからはギアを一段あげるぞ....!!ラーファルト・エレニア......!!」
来る.....!!
体制を.....!!
気付いた時には拳が眼前に迫っていた。
「くっ.....!!」
「反応遅いぞ.....ラーファルト・エレニア。」
「なっ.....!!」
攻撃を避けても避けても、その先に攻撃が飛んでくる.....!!
かわしきれない.....!!
これが神の実力.....ギアの一段がでかい.....!!
ドン！
後ろで何かとぶつかる。
体制が崩れた。
「ゴーレム.....!!」
「周囲の状況把握など、基礎の基礎だぞ.....!!ラーファルト・エレニアああああ！！！！」
パアアアアン.....!!
鈍く、軽い音を立てて俺は吹っ飛んだ。
ーーー
「荒野独流！」
《気炎斬》
「神託」
《我隴》
技と技。
力と力がぶつかり合う。
ラーファルトは裂け目からまだ出てこない。
こいつは、ラーファルトが裂け目へ行くのを阻止しようとした。
つまり、中には鍵がある。
なんとしても私たちがここでアリエルを倒さなくてはならない。
ラーファルトが必ず元凶を止めてくれると信じて.....!!
なのに.....!!
「ガルス流急手」
《光剣！》
キィン.....!!
アリエルの生み出した剣によりさの攻撃は防がれる。
当たらない.....!!
死角から狙っているのにも関わらず当たらないのだ。
考えろ。
思考しろ。
なぜ、この動きを見ていなくても反応されるのか.....!!
『魔力の動きと考えられます。』
ロードリング.....!!魔力の動きって？
『人は動く際、魔力がかなり微量ながら次の動きへ対応する為、体内で流動します。それを感じとっている可能性があります。』
なるほど。
つまり魔力の流れを読ませない.....動き.....
「大地の神よ。その土を我に与え、目の前の敵を砕きたまえ！」
《マッドスロウ！》
上へ向かって魔術を放つ。
即ち、魔力を放つ。
魔力による感知は困難になる。
そして、私は、それに紛れる.....!!
「ガルス流天」
《空突》
アリエルと目が合う、が、これは.....!!
シャアン.....!!
ミルの突きの攻撃がアリエルの頬を掠める。
当たった.....!!
希望が見え始めた。
アリエルの速度が上がったのは、反応だけだ。
反応速度の違いが私に錯覚を引き起こさせた。
アリエルの動きの速度があがったと.....!!
ならば、不意打ちが一番有効的。
「ジェット！紛れて！」
それ以上の言葉は必要ない。
「大地の神よ。その土を我に与え、目の前の敵を砕きたまえ！」
《マッドスロウ！》
決して規模の大きな魔術じゃない。
ラーファルトのように魔術を自由に操ることなど到底不可能だ。
だが、戦術に組み込め.....!!
例え、小さな現象でも、結果は変わる。
その影響は大きくなる。
「荒野独流」
《黒殲獄豪傑斬！》
大業だ。
威力の大きな、故に好きの大きい一手。
だが、その攻撃を出せるほど、敵の隙が大きくなってきている。
砂埃が舞う。
晴れると、まだそこにアリエルは立っていた。
ギリギリのところで反応が間に合ったようだ。
「神託」
《殲円》
全方位への殲滅攻撃.....!!
これへの対処はもう決めている。
「ライオ.....!!」
「ああ、任せろ。」
「天地陸海全てを知る、この世界の核なる天上の存在よ。今、一度、我への力を増し賜え。」
《命の契約・守》
ドォォォォォン.....!!
アリエルの攻撃が何にぶつかる。
結界だ。
ライオ達、ミクロスの者達は長命だ。
故に命の契約を使う。
彼らが唯一使う技が命の契約だ。
威力は申し分ない。
自身の寿命の代わりに能力を得る。
ライオはミクロスの者の中でもこの技に長けている。
ほとんど寿命を使わず、効果的に命の契約を発動した。
「今よ.....!!」
「大地の神よ。その土を我に与え、目の前の敵を砕きたまえ！」
その詠唱に私の方へアリエルの意識が向いた。
《マッドスロウ》
続けて、惹きつけるように私は動く。
「ガルス流奥義」
《一閃！》
アリエルへそのまま突っ込む。
アリエルは完全にカウンターの構えをしていた。
これでは反応される.....
が、それでいい。
「ガルス流偽剣」
《弾剣》
敵のカウンターを弾く。
完全なる隙。
「あとは、頼むわ。」
「荒野独流」
《黒殲獄豪傑斬！》
ジェットの剣はアリエルを斬る。
血を流し、彼女は倒れた。
止めを.....
その瞬間、火柱が消えた。
同時にアリエルが動く。
「なっ.....!!」
一瞬、反応が遅れた。
油断した.....!!
「神託」
《血銃》
流れた血を使って攻撃....!!??
大量出血から、その威力も.....技巧級.....いや、それを超えるレベルの.....!!
アリエルの攻撃の先にいたのは.....
ーーー
「うっ.....!!」
一瞬意識が飛んでいた.....!!
「まだ生きているのか.....裂け目はまだ俺には通れそうにないな.....早く開いてくれないかねえ.....」
「何が目的だ.....!!」
余裕を持ったその敵に俺は問う。
「目的.....??お前を殺す。そしてその裂け目から出る。ただそれだけだ。」
なぜだ。
なぜ俺を狙う.....!!
くそっ！分からない。
何も分からない。
記憶を無くして、触れて、感じて.....
そうすればするほど嫌になる。
この世界が未知で満たされていると、感じる。
自分も、周りも、何もかも分からない。
だから、知りたいのに.....!!
知る為に勝ちたいのに.....!!
「他に質問は？ないなら殺すけど。」
こいつの力は圧倒的だ.....!!
「お前は何者なんだ.....!!」
「初めに言っただろう。神だ。」
違う.....!!そうじゃない。
神の力はもっと、もっと理解の出来ない程のものだ。
だが、こいつは.....!!
「じゃあ殺すね。」
《雷砲》
《マッドシールド.....!!》
「ぐっ......うああああ.....!!」
「辛うじて致命傷は避けたか。だが、次はない。」
雷砲。
覇闘級水魔術。
こいつは.....俺の理解できる範囲の技を使う。
神.....なのだろう。
たが、その真価を発揮しない。
何故だ.....!!
「.....裂け目が開かれた。終わらせよう。」
その言葉と同時に空気が変わった。
気配が消えた。
無。
この世界は完全に無。
「.....えっ.....」
消え.....た.....
「うっ.....!!がはっ.....!!」
「魔術は使わないよ。気配消す意味がないからね。今までは遊び。」
この世界が何もない。
無の世界。
それはこいつが無に同化するため。
こいつの為に作られた世界。
ここは.....
「精神世界か.....!!」
「やっと気がついたか。」
全方位から声は聞こえてくる。
気配は全くない。
「この世界で俺は負けない。精神世界はその者に最適化された世界だ。」
この世界では勝ち目がない.....!!
「おしゃべりはここまでだ。じゃあ、この世界で永遠に。」
この世界で永遠に.....??
コツン。
気配。
一瞬、気配が戻った。
何なんだ今のは.....
この世界で永遠に.....
この世界から出る方法は裂け目.....
「裂け目は完全に開いた後に通ると消えるんだ。記憶を取られて精神世界を奪われた君に裂け目は作れない。これもまた一つの死だ。」
姿が見えた。
裂け目、手前、5メートル。
間に合わない.....!!
「俺のされた苦行をお前も味わうといい。」
「くそっ.....!!」
俺は走る。
動く。
敵は背を向けた。
勝利を確信した様子だ。
「ふざけるな.....!!」
負けてたまるか.....死んでたまるか.....殺されてたまるか.....!!
まだ俺は何も知らない。
何も分かっていない。
まだ、知りたい。
生きたい。
動け。
もっと早く.....!!
《ムーブドウインド！》
駄目だ....!!遅い！
間に合う速さを.....!!
高速.....移動.....
「調停の技」
《霹空》
敵の前へ出た。
「なっ.....!!貴様.....!!」
敵の顔に焦りが出る。
「貴様あああああああああ.....!!」
記憶が名残惜しいが.....生きる。
生きていれば、何か分かるはずだ。
死ねば、未来はない。
生きれば、分かることがある。
「だから.....また会いましょう。」
《雷砲》
さっき見た敵の攻撃をそのまま敵へ返す。
俺の最大火力。
理解できる技を出した。
調停の技の霹空なんて使えなかった。
俺は戦いの中で成長できているる。
新しいことを知れている。
「き、貴様ああああ....!!ぐっ.....!!」
焦った敵へ攻撃は当たった。
「お前.....!!はっ.....!!これは.....!!」
突如、光が出現した。
いや、光る蝶。
俺の方へ寄ってくる。
「待て！それに触るな.....!!」
何故だ.....なぜ、それを言う。
「.....負けたら記憶が戻るだったか.....」
気配に緊張が出た。
これが、俺の記憶.....
「.....こいつは貰って帰るよ。」
「ま、待て.....!!貴様！俺が何年.....!!ここで.....!!」
蝶に触れ、その声を聞きながら俺は裂け目をくぐった。
ーーー
「神託」
《血銃》
火柱が消え、アリエルの攻撃の先にいたのは.....!!
「ラーファルト.....!!」
《雷砲》
刹那、アリエルが消し飛んだ。
攻撃ごと跳ね返した。
「ら、ラーファルト.....??」
彼は俯いていた。
俯き、絶望に打ちひしがれた顔をしている。
戦いは終わった。
だが、ラーファルト・エレニア。
彼の戦いはまだ終わりを告げていなかった。
「ラーファルト.....!!」
その記憶の残酷さに、彼は倒された。
【記録:人魔暦8年】
ラーファルト・エレニアらが黒根の森の危機を救った。
更新頻度遅くなりすみません！あと一週間後にはかなり安定する予定です！
基本は月、水、金での更新です！
