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第76話:《ゴーレム》

「神だ。」


 敵からの返答にラーファルトは身構えた。


「お前の目的は何なんだ?」

「アリエルが言っていただろう。お前だ。」


 そう淡々とラーファルトへ言い切る。


「なぜ、俺を狙う。ただの一般人だろう。」

「ただの一般人か。くくく.....!!そうだな、記憶の無くしたお前はそう思うだろうな。」

「.....俺の記憶の呪いはやはりお前か。返してもらおう。」


 警戒を続けながらラーファルトは会話を続ける。


 敵は神と名乗っている。


 迂闊に手を出せば大きな代償がでる可能性が高い。


「記憶ねぇ。戻らない方がいいぞ。お前にとって辛いことも忘れさせてあげてるんだから。」

「もう一度言う。返せ。」

「まぁ、返せないんだけど。」

「は?」


 思わずそう声を出した。


「正確に言えば、俺がお前に敗北した時に自動的に返される。まあ、少なくとも今のお前には負けないからねぇ。」


「結局、お前を倒すしかないってことか。」


「おいおい、神を倒すなんてそんな悠長な考え方でいいのー?」



 《ブロードフレイム》


 無の世界に魔術によって光がさす。


 敵の姿が顕になった。


 仮面をつけた人。


 背丈は普通の大人。


 日常にいても不思議でない姿。



 だが、雰囲気が人のそれとは違う。


 冷徹、残忍、狂気。


 それが滲み出ている。



 魔力だけで分かる。


 この世界の絶対的な存在なのだと。



「お前はここで倒す.....!!」


 実力は敵の方が高い。


 それでも、この神を倒す.....!!


 己というものを知る為に.....!!




 ーーー




「やってくれたな.....貴様ら.....!!」


 ラーファルトは火柱の裂け目の中へ消えていった。


 ラーファルトなら必ず勝ってくる。


 ならば、私たちはそれまで持ち堪えなければならない。



「全員、時間をかせぐことに集中して。無理に攻めたら駄目よ!」


 こいつに隙はない。


「時間稼ぎか.....やれるものならやって見ろ.....!!」


「神託」


 《烈火》


 どんな魔術の攻撃だ.....考えろ!動け!



 同時にこなせ、こなし続けろ.....!!



 パァン。



 風の割れる音がした。


「.....えっ。」


 一度の瞬きの間に剣が頭まで迫っていた。



 キイン.....!!


「敵は魔術だけとは限らないか。気をつけろ。」


 ライオがその攻撃を弾いていた。


 考えず、直感で動いた。


 ただ一人、その攻撃に対して反射した。


「図にのるなよ.....!!」


「ガルス流奥義・改」


 《速一閃!》


 その攻撃はアリエルによって容易にかわされた。


 速い.....!!


 自分の体に何かした.....??


「ミル、指示をどんどん出せ。守っているだけじゃ勝てない。」


 この中で唯一反応できていたのはライオ.....


 不意打ちでなければ恐らくジェットも反応できる.....そして多分、私も.....


 だが、敵の攻撃力は異常に高い。


 リスクが高い.....


 どうすべきか.....


「ミル。リスクを恐れるな。俺が何とかする。指示を出せ。」


 ジェットはそれだけしか言わない。


 考えていたこおを察されたようだ。



「ライオとジェット、私の三人でこの敵の相手をするわ。他の者は囲んで逃げられないようにしておいて。」




 キイン.....!!



 敵はただ剣を振るっているだけだ。


 まだ一人も仕留められていないようだが、攻撃をするたびに誰が負傷している。



「行くわよ.....!!」


「荒野独流」


 《眼析(がんせき)



「.....っ.....!!」


 死角からの攻撃は敵の反応を一瞬遅らせる。


 それにより攻撃をいなすことはできず、剣で正面から受けてしまう。


 敵の攻撃を止めることには成功した。



「ふん。お前たち三人が相手ということか。」


「ええ、遠慮はなしにさせてもらうわ。」


 同時に動き始める。


 敵を囲むように、常に誰かが死角を狙うように考える。


 それが短い時間で事前に決めたことだ。


 敵は強い。


 大切なのは距離と隙のつき方.....!!



「ガルス流(るい)


 《獄断(ごくだん)


 死角からの攻撃だが、当たらない。


 まるでどの位置にいても動きが分かっている様だ。


 何か掴まないとこいつには勝てない.....!!





 ーーー




 《ムーブドウインド》


 敵の攻撃をかわす。


 ボスッ.....ボスッ.....!!


 と後ろから何かの音がする。


 この攻撃は気弾か何かなのだろうか。


 風、魔力、そこら辺の情報から軌道を読む。


「これを避けるか.....見えない気弾は一応技巧級の風魔術なんだがな.....」


 こいつ、俺を舐めているな。


 分かってはいたが.....



 確か、その魔術の名前は.....



 《エアーボム!》


「ほお、お前はこの魔術はまだ使用できなかった筈....,今も成長している訳だ。中々のことだな。」


「そりゃ、どうも。せっかくだから記憶も返してもらえると助かるんだけど。」


 とりあえずそんな感じに話してみる。


「返すわけないだろう。」


 知っとるわ。



 それにしてもこの無の世界は暗いな。


 かろうじて俺のブロードフレイムで光があるが.....



「では、私も攻撃していくとしよう。」



 《ウォーターフォール》


 大量の水が滝の様に降って来た。


 ライクオーシャンの上位互換といったところか.....!!


「水の技巧級だな.....!!」

「ご名答!それじゃ!」


 トンと俺の腹に手が当たる。


 《ロックショット!》


 まず.....い.....!!


「ほお.....ずらすか.....」

「はぁ.....危ねぇな。」


 咄嗟の後ろへのステップ、そして、魔力探知で敵の攻撃の軌道をずらす。


 距離もあって掠りはしたが、そんな大した傷じゃない。


「まだまだやっていこうか.....!!」


 《ゴーレム》


 魔術の発動と同時に土のゴーレムが発生した。


「これは.....覇闘級魔術か.....!!」


 覇闘級の魔術.....俺が使えない領域の魔術。


「うおっ.....!!」


 《ロックショット!》


 攻撃してきたゴーレムに向かって魔術を放つ。


 が、次の瞬間それは吸収されていた。


「このゴーレムに土の魔術は効かないよ。吸収、成長をするんだ。発動者から魔力供給が切れる、または破壊されるまでその動きは止まらない。」


 ゴーレムは動きを更に早くして俺に迫る。


 くそっ.....!!暗い.....!!


 この無の世界は光がないのが辛い。


 直前にならないと攻撃が来ているのが見えない.....!!


 《ブロードフレイム!》


 光で周りを見る為に火魔術を使う。


「ふん.....させんよ。」


 《ウォーターフォール》


「くっ.....!!」


 こちらの反撃の糸口をことごとく消し去ってくるな.....


 《ウォーターガン!》


 ゴーレムの攻撃をかわし、そのままの体制で魔術を放つ。


「よし.....!!当たる.....!!」


 攻撃はゴーレムめがけて一直線に飛んでいく。


 これなら避けられまい.....!!


 刹那、ゴーレムの腹に穴が開く。


 ウォーターガンはその穴を通って後ろへ飛んでいった。



「は?え?うわっ.....!!」


 混乱する時間も与えずゴーレムは再び攻撃を繰り出してきた。


 暗い。


 攻撃が見にくい.....!!


 敵を捕捉できない.....全く隙がない.....


 勝機が.....見えない.....


「くっ.....!!」


 《ウォーターガン!》


 再び魔術をゴーレムに向けて放つが同じようにして避けられた。


 当てられない.....当たらない.....!!


 せめて、視界が.....



 《ウォーターガン!》


 ゴーレムは尚も避け続ける。


 避けるということは攻撃が通じる可能性があるということだ。


 どうすれば、当てられる.....!!


 どうすれば火をつけられる.....!!


 どうすれば.....!!



「そうか.....!!」


 《ファイアーサークル!》


 俺が、移動する必要などないのか.....!!


 敵は火を消したいが、水に弱いゴーレムで攻撃したい。


 だから自分の周りに火をつけることで、同時にどちらか一方しか同時に起こらせないように誘導する。



 ゴーレムの動きが止まった.....!!



 今.....!!


 《ウォーターガン!》


 再びゴーレムは自分自身を変型させて避けようとする。



 が、今はほんの一瞬だが、光がある。



 見える.....!!


 魔力探知.....!!



 パシュウン.....!!


 そう音を立てて魔術が命中する。



 動きが鈍くなる。


 土が固まっている.....!!


 だから水を避けていたのだ。


 《ファイアーボム!》


 ラーファルトの放った魔術はゴーレムへ命中し、完全に塵とする。



「ふう.....」


 ゴーレムは倒した。


 だが、まだ終わっていない.....!!



 パチパチパチパチ.....



 手を叩く音がした。


「思ったより見事な戦いぶりですねぇ。」


 敵のその声に俺はまた身構え直す。


 こいつにとって俺の苦戦したゴーレムはまだ序の口.....!!


 もっと、調子を上げろ.....!!


 動け.....!!


 考えろ.....!!


 ほんの僅かな勝機を見逃すな.....!!



「時間がもうすぐ.....もうすぐだ......!!ここからはギアを一段あげるぞ.....!!ラーファルト・エレニア.....!!」


 そう言って、ゴーレムを数体呼び出す。


 敵のまとう雰囲気も心なしか強くなっている。



 戦いは佳境へ差し掛かり始めたのだった。

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