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14浪生転生記~異世界にいる今、自由を求める~  作者: フィッシュスター
第六章:世界と呪いの森

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第73話:飢えろ

「全員、私の指示に従って.....!!」


 赤い目の悪魔を倒した直後、ミルはそう声をあげた。


「待ちくたびれたぞ。さあ、この悪魔共をどう倒す?」


 ライオかそう声をかける。



 「うおおおおお.....!!」


 それに呼応するようにそれぞれのミクロス族の者も雄叫びをあげる。


 その様子に微笑み、悪魔の攻撃を避けながらミルは口を開いた。


「赤い目の敵をすべて倒せ。恐らく正面からは攻撃がほぼ当たらない。死角から倒せ。」


「赤い目の奴を倒したら何かあるのか!?」


 そう一人は声をあげた。


「分からない。」

「は?」


 ミルはそう簡単に返答する。


「分からない。でも、何かしないと戦況は変化しない。少なくとも赤い目のやつは強い。だから.....」


「ガルス流奥義」


 《一閃》


 またもミルの攻撃は赤い目の敵を地面へ伏せさせる。


「だから、倒せ。力の限り試し続けるんだ。勝機は掴みに行く。」


 ミルは息を大きく吸った。


「戦え。勝つまで。」


 ミクロス族の者たちの目にミルの言葉で力が宿る。


 「敵は目がいい。動きが読まれる。だから死角からの攻撃を狙って!」


 その指示に返事はなかった。


 だが、心配は全くいらない。

 

 もう戦闘へ集中している。


 全員の、力が、速さがどんどんとあがっていく。


「これは.....」


 ライオもその様子に思わず笑みをこぼしていた。


「反撃開始よ.....!!」




 ーーー




「うっ.....!!」


 派手に吹っ飛ばされたな.....


 こいつはパワーと防御力が尋常じゃない。


 今の俺の刃は通らない.....


「あの時と同じか.....」


 初めてのこの森での戦闘。


 防御力の高いあの魔物に苦しめられた。


 ラーファルトたちが呪いの反動性に気づいていなかったらやばかったかもしれない。


 情けない。


 助けようと思ってこの旅に出た。


 この旅が楽になればと思い、同行を志願した。


 が、蓋を開けてみろ。


 俺が助けられてどうするんだ。


 あの二人は強い。


 間違いない。


 だが、まだ子供だ。


 俺が.....大人の俺が二人を助けなくてどうする.....!!


 導くとか、支えになるとかそんなのは俺の柄じゃない。


 だが、せめて.....せめて勝たなくてどうするんだよ.....!!


「ふぅ.....」


 敵は強い.....


 超えろ。


 肥えろ。


 強さに飢えろ。



 キィン、キィン、キィン!!


 敵の三連撃をジェットが薙ぎ払った。


 その殺気に敵は一歩後さずりする。


「オマエ、ナニシタ。」


 が、その声は既にジェットに届いていない。


 極限への集中。


 己の限界への集中。


 視界と頭がクリアになる。


 次の攻撃、動き、周りの状況。


 戦闘に必要な情報が全て分かる。



 なんだこれ。


 やべえ。


 何もかもが分かる。


 感じる。


 勝機が見える。


 掴める.....!!


「荒野独流」


 《零炎(れいえん)



 敵の動きは遅い。


 防御力と攻撃力をあげるためにスピードを落とした。


 いわば、負けない敵。


 だが、それをジェットを打ち砕かなくてはならない。


 敵に勝るもの、それはスピードともう一つ。


 知性だ。


 敵の攻撃を逆に利用する。


 知性の低さは仇となる。


 単調な攻撃は予想が容易い。


 だから.....


 敵の攻撃がくるところに剣をふるう。


 剣へ自ら突っ込ませる。


 自身の攻撃が返ってくる。



 スパアアアアアアン.....!!


 凄まじい轟音と粉塵が舞う。



 敵の腕が切れていた。


 ジェットの狙い通りだ。


「さあ、決着をつけようか.....!!」

「ウオオオオオオ!!!」


 腕がすぐに再生した。


 両者は睨み合う。



 ドオン.....!!



 地響きと共に先に動いたのは敵の方だった。


 知能が低い故、学ばない。


 どんな攻撃を受けそうなのか考えない。


 ただ敵を倒す。


 それだけを考える者。


「コロス。コロス。」


 それだけに勝利への執念が凄まじい。



 パワーが更に向上していた。


 本来遅いはずのスピードも以前よりあがっている。


「チッ.....!」


 予想外の出来事に一度攻撃を避ける。


 もう一度同じように攻撃を当てるのが難しくなる。


 が、ジェットは冷たい眼差しで前を見据えていた。


 着実に、確実に、勝利を見据えていた。


 勝利への執念。


 それがあるのはジェットも同様。


 知能がある分、ジェットの方が強いとも考えられる。



 敵は更に踏み込む。


 地が割れる。


 空気と空気を切り裂くような音がした。



 敵の速度はもう遅くない。


 見切るなど容易いことでなくなっていた。



 ジェットは覚悟を決めた。


 ジェットの周りに熱が帯びる。


 目に光が宿る。


 その目に写ったのは紛れもない隙。


 敵の首を斬る隙。


 一発。


 この極限の状況で敵の隙を見極められるのは今だけだ。


 集中力の上がっている今。


 何もかも見える今だけ。



 一発で決めろ.....



「荒野独流」


 《醒祓(せいのはらえ)


 音が遅れる。


 遷音速。


 その一閃は確実に敵の隙を突く。


 その余波はジェットの真下の地を割る。


 ジェットが振り返った時、敵の首は割れた地に落ちていった。

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