第70話:熱と闇
「これは.....!!」
この森の中心地に立った火柱。
それはミクロス族の村からでも見えていた。
それほど巨大だったのだ。
だが、これは想像以上.....
「全員、最大限の警戒をして攻撃に備えて!」
私はそう指示を出す。
ルーナに任されたこの大役.....やりきってみせる.....!!
「おい、あれ!」
一人のミクロス族の者がそう声をあげた。
火柱の中に人影が見えた。
「どうして、中に.....!!それになんで火が効いてないの.....?」
『恐らく裂け目が火柱の中に開きかけているものと考えられます。』
開きかけている?今、目の前に人影があるのに.....??
『火柱がまだ立っているため裂け目は完全に開ききっていません。そこにいるのは.....』
「.....!!」
キイン.....!!
剣が攻撃を弾いた。
こいつ、強い.....!!
「聞け。屑共。大人しく平伏せ。そしてこの中にいる、ラーファルト・エレニアを引き渡して貰おう。」
ラーファルトを.....狙ってる.....!!??
「我が神からの命令だ。」
我が神.....??神が関係しているのか?
「その神というのは?」
ジェットが口を開いた。
「それを教える義理はない。さあ平伏せ。私達の方が圧倒的に強いのだから!」
途端に青黒い魔法陣が多数出現した。
「全員警戒!攻撃され次第反撃しろ!」
そう私が叫んだ瞬間魔法陣から何かが出てくる。
「荒野独流」
《怒轟天》
真っ先に動いたのはジェットだ。
目の前まで物凄いスピードで飛んできたそいつを斬った。
「平伏さないか。ならば抹殺するまで。我が神の為に.....」
「神託」
《地潰》
「なっ!」
地面が動く。
足場が不安定になる。
地面から直接攻撃が飛んでくる。
カキイン.....!!
弾くので精一杯だ。
反撃が全く出来ない.....!!
《タワークラフト・改!》
刹那、地面が固定された。
同時に攻撃に隙が生まれる。
ラーファルト.....!!
タワークラフトを地面の下に横倒しにして複数構築。
それにより地面が固定された。
《ロックショット!》
ドオン.....!!
ラーファルトの放ったロックショットは森には合わない音を発した。
砂煙が舞う。
そしてすぐに晴れた。
敵が払ったのだ。
その頬からは血が垂れている。
恐らく魔術が掠ったのだろう。
「お前がラーファルト・エレニアか。」
敵はそう質問した。
「.....ああ、そうだ。お前は?」
「神使・アリエル。」
そう答え、沈黙が出来た。
途端にアリエルが口を開く。
「神託——この世の理と秩序。超越者よ。今、この時新たなる力と定めを生み出せ。ここに敵を打ち砕く力を顕現せん。」
《葬戒》
そう唱えると今度は一つの大きな青黒い魔法陣が出来た。
人型の何かが召喚される。
「これは.....」
出てきた何か.....
それは、肌が赤く、顔を布で隠していた。
身長は優に3メートルを超えている。
体格がどっしりとしていた。
ふいにそいつは手を前に出した。
一瞬の内に剣が生成される。
そいつはそれと同時に剣をふるった。
斬撃がラーファルトの方向へ飛ぶ。
《ウォーターシールド!》
「なっ.....!!」
そのシールドはいとも簡単に突破される。
「ラーファルト!」
今にもその斬撃が当たろうとしていた。
が、そうはならなかった。
「荒野独流」
《凶柱》
ジェットが斬撃とラーファルトの間に割って入り、止めた。
「アイツ、トメタ。マッサツ。アイツ。マッサツ。」
何かはそう繰り返している。
知能は低いのかもしれない。
「ラーファルト。気をつけろ。相手は強いぞ。」
「うん。分かった。」
「ミル。指示をくれ。」
ジェットからそう言われて私は考える。
「ジェットはそのなんかよく分からない奴を止めて。そしてラーファルトは敵のボスを。他は魔法陣から出てくるのを倒す!二人の邪魔をさせないで!」
敵の狙いはラーファルトだ。
だが、現状この敵の攻撃をレジスト出来るのはラーファルトだけ。
そして、あのよく分からない奴。
あれのパワーは凄まじい。ジェットに倒してもらうしかない。
だが、そんな細かいことは説明しない。
私達は互いを信じているのだから。
「ああ、任せろ。」
「うん。倒そう.....!!」
ラーファルトとジェットはミルに呼応した。
この決戦の熱は上がっている。
ーーー
「あと、どのくらいかな?もうすぐかな?もうすぐ復活だぁ。裂け目をもう少しで.....!!」
そして、闇は着々と近づいている。