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第69話:勝ち取ってこい

「それで、何か分かったことは?」

「特にないですね。魔術の類ですが、その頂きに近い領域の力です。それもこれ程大規模です。」


 ラーファルトにより地面に出来た赤い魔法陣が解析されていた。


 が、依然として分かることはない。


「一体何が起ころうとしているんだ?こんなのは聞いたこともないぞ。」


「世界樹が関係しているのは間違いない。何者かによって世界樹が汚染されている可能性があるな。」


 ルーナがジェットの疑問に対してそう答える。


「汚染ねぇ——世界樹自体が呪われているなんて。まぁ、ないかな。」


 ミルが何気なくそう発言した。


「.....いや、可能性は否定できないな。むしろその確率は結構高いかもしれない。」


 ルーナがそう同意する。


「世界樹が呪われているならばどうやってその呪いを解呪するかですよ。現状何も出来ません。ミル、ロードリングによる解析は?」

「出来てないわ。」


 ラーファルトの問いに対しミルが端的に答えた。


「世界樹自体を見ないと分からないのかもしれませんよ。」


 側で聞いていたある一人のミクロス族がそう発言した。


 ライオだ。


 彼はミクロス族の中でもずば抜けた戦闘力と頭脳を持っているとのことだ。


 ルーナと並んでこの森の二大戦力に数えられている。


「世界樹を直接か.....場所が分からないんからな.....」


「探してみるというのは?」


 ルーナに対しジェットがそう答える。


「事態は急を要する。探している間に敵が動く。それに、何年も探している人がいるんだ。見つからないよ。」


 それもそうだ。


 世界樹は結局どこにあるのだろうか。


 その姿はどんなものなのだろうか。


 この世界の基盤を担う世界樹。


 いつか見つかればいいとは思う。


「それで、どうする?打つ手なしか?」

「いや、そういう訳ではない。私が対魔結界を張る。余程の奴は普通に魔術を使えるが、まぁ気休め程度にはなるだろう。」


 ルーナがラーファルトを見ながらそう発言した。


「ん?何か顔についてますか?」

 当のラーファルトはそんな反応だ。


「いや、お前は魔術を使えるかなと思っただけだ。」


「ああ、やってみましょうか?」


「そうだな。今から張る。」


「調停の技」


 《絶空・対魔》


「.....普通に使えますが.....」

「ああ、ラーファルトはそれぐらいの魔術師ってこと.....」


 刹那、ルーナの顔が曇った。


「.....ルーナ?」

 ミルが心配そうに彼女を覗き込む。


「これは.....!!」


 そう呟いた途端、ルーナが倒れ込む。


「おい、どうした!」

「大丈夫か!」


 皆が心配そうに駆け寄る。


「攻撃だ。警戒しろ!」

 ルーナがそう叫ぶ。


「大変です!」

 ミクロス族の一人がそうして室内に入ってきたのは同時だった。




 ーーー




「これは.....」


 魔法陣は更に光を強め、点滅していた。


 空には黒雲が立ち込めている。


「何かが始まった.....」


「結界を.....乗っ取られたんだ。一種の.....呪い.....で.....」


 ルーナが意識の朦朧とする中そう話してくる。


「そのせいで.....魔力を.....ほとんど.....」


「ルーナ!敵はどこだ?どこにいる?」

「分からな.....」


 ドゴオオオオオオン.....!!


 轟音と共に雷が落ち、火柱が出来た。


「たった今.....分かったな。」


 森の中心方向だ。


 だが、この距離移動が.....


「全員急いで集合しろ.....戦える者全員だ。」

「だが.....」

「急げ!」

「戦える者全員!準備を急いで調えろ!」


 ルーナの気迫に押され、ライオがそう指示した。


 ルーナは依然として意識朦朧としている。


 先程はライオに運ばれていた。


 ルーナの結界を乗っ取り、同時に魔力を吸い取った。


 そして、この黒雲はこの結界によって投影されている。


 元はただの対魔結界だが森に閉じ込められているのだろうか?


 ルーナは確か一種の呪いと言っていた。


 ならば解呪方法はあるはずだ。


「ミル。結界を解析しない?」

「ええ。もうやってるわ。」


 流石と言ったところだろう。


 尊敬だな。


「準備が整いました。」


 ルーナにライオがそう告げる。


「そうか.....時間もないから端的に言う。」


 全員がルーナの声に耳を傾けた。


「まず、戦闘指揮だが.....ミル.....お前がやれ。」


「え?私?ライオじゃなくて?」


「お前は.....呪いの解析後の戦闘指揮をしている。慣れている方が.....いいだろう。任せたぞ。」


「.....ええ、任せて。」


 ミルは何か決心したような間をあけてそう返事をした。


「敵はかなり強い.....恐らく格上だ。」


 そのルーナの言葉に息を呑む。


「やられた身で言うのもあれだが.....必ず勝て。この森を.....守ってくれ.....」


 泣きそうな声と不安そうな目になってそうルーナは願った。



 俺は息を吸った。


 この戦いには必ず勝たなければならない。


 ルーナの頼みでもある。


 そして、恐らくこの戦いには俺の記憶の鍵が隠されている。


 必ず記憶を取り戻す。


 だから勝たなければならない。


 勝つしかない。


「必ず勝ってくる。」

「必ず勝ってくるわ。」


 声が重なった。


 ミルと顔を見合わせる。


 そして笑う。


 ミルが好きだ。


 だが、その感情が本当に好意なのか分からない。


 だからその答えを見つける為に。


 自分を知る為に。


 俺は全力で戦う。


「そうか。頼んだぞ。」


 俺たちの「勝つ」という声と共にルーナの目にも闘志が宿ったようだった。



 ルーナが息が息を吸った。


 いや、全員が息を吸った。


 覚悟を決めた。


「最後の力.....出し抜け.....」


 ルーナがそう自身に語りかける。


 意識朦朧として、フラフラになりながらも立って、最後の力を振り絞る。


「調停の技」


 《霹空》



「森の平和を勝ち取ってこい。」


 そのルーナの声と共に俺たちは森の中心部へと移動した。



 一度瞬きをするとそこには巨大な火柱が立ち込めていた。

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