第67話:自分の感情
「う.....」
目を開ける。
光が差し込んで来た。
「あ、ラーファルト!体調はどう?」
ミルが話しかけてくる。
「ここは.....」
「もうミクロス族の村に戻ったわよ。倒れたラーファルトを運ぶの大変だったんだからね!」
「すみません.....」
ミルが泣きそうな顔になる。
パサッ.....
ふいにミルが抱きついてきた。
「心配で.....ぐずっ.....心配だったんだから.....!!」
必死に涙を堪えようとしながらも声は震えている。
どうすればいいのか分からない。
でも、何故だろうか。
何故か抱きつかれて安心する。
安心という感情を抱く瞬間でないのかもしれない。
でも、起きて目の前にいてくれたことが、そして心配してくれていたことが分かって嬉しく思う。
これが.....ああ、これが好きってことなのかもしれない。
好きなのかもしれない。
だけど、本当に好きかが分からない。
なんで、こんなに自身が持てないんだろうか。
嫌になる。
記憶がないから?
それともそんなの関係ないのだろうか.....
ただの自分の性格なのだろうか。
何も分からない。
だから知りたい。
好きという感情に自身が持てない。
だから、抱きついてきたミルに何をすればいいのか分からない。
ミルが更に強く抱きついてきた。
「.....分からない。」
「え....?」
自分の感情が分からない。
だけど、その時そうするべきだと感じた。
俺は気付けばミルを強く抱きしめて返していた。
ーーー
「それで、なんで倒れたのかが問題だ。」
ジェットがそう言って俺に話しかけてくる。
と、言われても分からない。
「急に頭が痛くなってそれから.....そこまま意識が.....」
「理由は不明か.....とにかく怪我したという理由でないだけ良かった。」
「だが、逆に理由が分からないというのは大変なことだ。」
ルーナがそうして話に入ってきた。
「周りには何があったんだ?」
ミクロス族の一人もそうして話しかけてきた。
「周り.....焼けた村しか.....」
「焼けた村か.....特に手掛かりはないな.....」
何故倒れたのか分からない。
あの焼けた村を見た瞬間頭が痛んだ。
「とにかく何か異変があったらすぐに伝えろ。」
「はい。分かりました。」
これで話が終わるかと思われたが....
「もう一つ伝えたいことがある。」
とルーナが言った。
「どんなことなの?」
ミルがそう逆に質問する。
「世界樹の根についてだ。明日で十個目の円が完成しそうだ。」
十個目.....何かありそうな数字だな.....
「何かありそうだな.....」
ジェットもそう感じているようだ。
「それで.....最大限の戦力で行きたいのだが.....ラーファルト行けるか?」
「え?普通に行きますけど.....」
「いや、そうじゃなくて倒れたから行って大丈夫かということだ。」
行けるか.....
「.....俺は.....自分が分からないんです。」
そう言って少し間を置くが、誰も喋らない。
全員俺の話に耳を傾けている。
「自分がどう生きてきたのか分からない。自分の行動に自信もない。どうやって生きればいいのか分からない。」
そうして、もう一度間を置く。
そして、息を吸う。
「自分を知れるなら。自分を知れるかもしれないのなら。そこへ行かない理由はありません。」
真っ直ぐルーナを見る。
「そうか。ならいい。」
こうして話は終了した。
ーーー
次の日の朝方だった。
『世界樹の根が現れた。』
特訓を始めようとしている所にその連絡が入る。
——記憶を巡る戦いが今、始まる。
あけましておめでとうございます!
去年の自分を超えられる様に精進していきますので応援して頂けると嬉しいです!
14浪生転生記を、フィッシュスターを今年もよろしくお願いします!