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14浪生転生記~異世界にいる今、自由を求める~  作者: フィッシュスター
第六章:世界と呪いの森

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第66話:頭の傷み

「それじゃ今日も素振りからだ。」


 ジェットがそう言って特訓開始だ。


 こんな日々が始まっておよそ一カ月が過ぎた。


 ラーファルトの記憶は依然戻らない。


 この一カ月で分かったことといえば世界樹の根の現れる時間帯は様々だということだ。


 朝一、夜中、どんな時間でも世界樹の根が現れれば叩き起こされる。


 結構キツイ生活だ.....



 後は戦闘の際は指揮をある程度任されるようになった。


 なんでもロードリングによって敵の呪いの反動性が分かるのは私だけらしい。


 ルーナによると私たちが来る前は正面からゴリ押しで倒していたという.....


 いや、それは大変よね.....


 あの量を倒すなんてキツすぎるわ.....


 そして、ラーファルトのロードリングは機能していない。


 確か.....ん?なんでだっけ?


『プライバシー保護の為だと考えられます。記憶喪失によりロードリングの装着した者が変化したと誤認した可能性が指摘されます。』


 とのことだ。


 プライバシーの保護ねぇ.....そんな機能あったんだ.....



 なんにせよ、そういうことで私がルーナの代わりに戦闘指揮を行うことが増えた。


 まだまだラーファルトの指示には敵わないかもしれないけど精一杯頑張らねば.....


「ミル!集中しろ!」

「あ、は、はい!」


 ふぅ.....特訓は集中しないと.....!!


 強くなれないし、何よりジェットから怒られる。


 私はこの期間でしっかり成長できているのだろうか.....


 正直分からない。


 が、強くなるしかない。


 ラーファルトを助けるために強くなるしかないのだ.....



『世界樹の根が森の南西部に現れた全員集合しろ。』


 ルーナの声が頭の中に響いた。


 この連絡方法にも慣れたものだ.....


「行くぞ。」

「はい!」

「ええ。」


 ジェットの声に私とラーファルトが反応する。


 今日もラーファルトの記憶を取り戻すために戦う。


 どれほど時間がかかろうとも.....!!



 ーーー



「それでは行くぞ。」


「調停の技」


 《霹空》



 ルーナがいつものように技を使い、長距離の移動を行う。


 この移動も約一カ月。


 慣れたものだ。


 この技は自分のいる空間と行きたい空間の間を超圧縮して移動したように見えている。


 感覚としてしっかり理解できる。


 最も実践とは別だ。


 そして、移動先にあるのは.....柱。


 いや、世界樹の根。


 そして、大量の魔物だ。


「各々散開!ミルの解析の時間を稼げ!」


 と、これも慣れた作業だ。


 最近では出来るだけ魔物を倒さずにいなしながら時間を稼いでいる。


 俺から見たミルは凄まじい成長を見せている。


 反射速度が速くなり、威力も一段階以上あがり、更に様々なことを同時にこなせるようになった。


 今では世界樹の根の処理に欠かせない存在だ。


 特訓して、努力して、強くなっている。


 隣で特訓する俺から見ても凄まじい努力と成長だ。


 何が彼女にそこまでさせるのだろうか.....


 分からない。


 彼女のことも分からない。


 そして、俺自身のことも分からない。


 《バブル!》


 水上段魔術。


 敵を傷つけずに捕えることが出来る。



 分かるのはこんな魔術の知識だけ。


 何もかも忘れてしまった。


 今の俺に価値なんてあるのだろうか.....


 俺の記憶.....


 それはどんなものなのだろうか.....


 知りたい。


 その為にここで戦い続ける。


 記憶を知る。


 それが俺の戦う理由だ。



「呪いの反動性の条件が判明したわ.....魔術で同時に50体.....よ.....」


 …..魔術で.....!?


「な!?魔術!?」

「そんなのラーファルトしか.....」


 俺だけで同時に50体.....?


 できるか.....??


 やれるのか.....??


「これは.....流石に.....」

「前のように正面から.....」


 そんな声が聞こえてくる。


「ラーファルト.....」


 ミルも不安そうに俺の方を見ている。


「ラーファルト、どうする?やるか?」


 不安が消えない。


 でも、やらないと.....やらなければいけない。


「やります。」


 同時に50体.....


 できるかじゃない。やらなければならないんだ。


 成功させなければならないのだ.....


 成功を.....!!


「ラーファルト!」


 声が飛ぶ。


 ミルの声だ。


「大丈夫。できるよ。ラーファルトなら。」


 声が飛ぶ。


 不安も飛ぶ。


 ミルだけでない。


 他の者も俺の方を見て大丈夫だと語りかけているように見える。



 なぜ、これだけで不安が飛ぶのだろう。


 どうして、こんなに安心するのだろう。


 声だけで。


 大丈夫と言われるだけで。


 いや、それでいい。


 分からなくていい。


 分からないから、戦っている。


 分かるために戦っているのだから。


 《ムーブドウインド》


 これで動く。


 近くの魔物は.....


 《フローズンエリア》


 凍らせて倒す.....


 そして遠くの魔物は.....


 《マッドスピアー》


 土槍で倒す.....!!


 最後に討ち漏らしを.....


 《ロックショット!》

 《ウォーターガン》


 この二つの魔術で倒し損ねた魔物を倒す。


 これでどうだ.....!?



「ひ.....百五十.....??」



 ミルがそう呟いた。


 魔物が消えていく。


「やった.....倒した.....」


 魔術での五十体の魔物の掃討に成功した.....!!


 成功した.....!!


「ラーファルト!」


 ミルが飛びついてきた。


「うわあ!何するんですか!」

「何じゃないわよ!すごかったじゃない!」

「あ、ありがとうござい、ます.....」


「調停の技」


 《天光(あまのひかり)


 ルーナの技が世界樹の根を焼失させる。



「ラーファルト!あれ!」


 ミルが指さした先には丘が広がっていた。


 森の外約500メートルといったところだ。


「ルーナ!一瞬行ってきてもいいかしら!」

「え?」

「いや、最近森の外に行ってなかったから.....」

「あー、まあいいぞ。すぐに戻ってこいよ。」

「やったー!いくわよ!ラーファルト!」

「え、ああ、はい。」


 元気に走って向かうミルにつられ、俺も彼女を走って追いかける。


 どうして、そんなに俺のことを気遣ってくれるのだろうか。


 どうして、そんなに構ってくれるのだろうか。


 聞きたい。知りたい。


 俺の記憶があった時に何をしていたのか。


 何を成したのか。


「あの.....」

「.....」

「.....ミル.....??」


 ミルが丘の下を見下ろして呆然としていた。


「......どうかしたんで.....」

「下.....見て.....」


 俺の質問を遮ってそう伝える。


 ミルに言われた通り、丘の下を見下ろす。


「.....これは.....」


 村が焼けていた。


 黒く家が焦げていた。


 生活が壊れた様子をしていた。


「戦争.....か.....」


 刹那、ラーファルトの頭に痛みが襲う。


「う.....うう......」

「ラーファルト?!」


 その只事でない様子にミルが駆け寄る。


「かはっ.....はあ.....はあ.....」


 動悸と呼吸が激しくなる。


「ううう.....h......」

「ラーファルト!ラーファルト!」


 頭が割れるように傷んだ。


 ミルの呼ぶ声も(むな)しく、ラーファルトの意識は失われた。

これにて2024年最後の更新となりました。


7月に執筆を始め、トライアンドエラーで頑張ってきた一年でした。


右も左も分からない中、必死に一文字一文字に自分の思いを乗せて書いていたものの、拙い文章、唐突な展開、誤字脱字多発などなど問題も多くあったと自覚しております。


しかし、そのような作品であっても一二三書房WEB小説大賞の一次突破、注目度ランキング二位などの素晴らしい経験も積ませていただくことが出来ました。


まだまだ課題の多い私の作品を読んで下さる方に感謝して2025年も精進していきます。


それでは読者の皆さん2024年ありがとうございました!


来年もよろしくお願い致します!


それでは、良いお年を!

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