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第63話:頑張れる

「それで、俺たちはこれからどうするんだ?」


 ジェットがそうルーナに質問した。


「ラーファルトも記憶が消えて、無口になっちゃってるいるし。」


「ひっ!」

 自分の名前が出るだけでラーファルトはビクッとしている。


 ラーファルト自身、元はただの陰キャである。


 異世界でこそ取り繕っていたものの、こればかりは変えられないラーファルトの本質なのだ。


「この様子じゃ色々成り立たないこともあるだろ。」


「ああ、そうだな。今後のことについては考えたほうがいいだろうな。」


 ルーナが少し考え込んだ。


 暫く俯いてから口を開く。


「では、こうしよう.....」




 ーーー




 私はミル。


 ミル・ルインド。


 一応王家の人間である。


 そんな私は今、


 ——ジェットの地獄剣術訓練をしているのだった.....!!


「腕立ては150回×4セット!」

「は、はい......」


 隣ではラーファルトも一緒に腕立てをしている。


 こんなことになったのもルーナがこんなことを言ったからだ。




 ーーー




「ジェット、お前を師として、ミル、ラーファルトを強くしろ。」


 ルーナがそう発言した。


「俺がこの二人をか?特訓の内容はなんでもいいのか?」


「ああ、いいぞ。剣術、魔術、パーティ戦闘でもいい。だが、条件がある。どんな時でも柱の出現時にはそちらに着いてこい。」


「そうか。分かった。」



 ーーー



「次、スクワット150回×4セット!その後は腹筋150回×4セットだ。」


 めちゃくちゃだ.....


 私の剣術の師匠.....カールでもこんなにきつい指導はしなかった。


 きつい.....特訓きつい.....


「はい.....!!」


 隣から聞こえてきたその声にミルは反応する。


 ラーファルトがつらそうな顔をしながらも真剣な眼差しでスクワットを開始する。


 記憶を無くしても尚、彼は努力し続ける。


 どうしてだろうか。


 なぜ、彼は.....そんなに努力するのだろうか。


 まだ二人で旅をしていた時.....彼は何と言っていただろうか.....



 ーーー



「ラーファルト.....なんでラーファルトはそんなに強いの?」


 寝る準備をして、寝転がりながら聞いた。


 この日はいつだっただろうか。


 ジェットに出会う一週間前程だった気がする。


 いや、旅を始めたての頃だっただろうか。


 その日は夜も遅く、魔物に襲われて疲れていた。


 その頃、いつも魔物を倒すのはラーファルトで、私は助けられてばかりだった。


「僕は強くないですよ?」


 ラーファルトはそう言った。


 信じられないと思う。


 ラーファルトが弱い訳がない。


 ラーファルトをすごくないなど思ったことがない。


 私より年下で、それでも私を守ってくれる。


 どうしてそんなに強くなれているのか。


 私には分からない。


「ラーファルトは強いよ。私にとって.....」


「.....」


 ラーファルトが黙った。


 場に沈黙が訪れる。


 その沈黙で私の瞼は閉じたり、開いたりを繰り返すようになる。


 ふいにラーファルトが口を開く。


「もし、僕を強いと感じたならば.....それは周りのお陰ですよ。」


 その言葉が眠りに落ちる直前の私に深く刻まれる。


「周囲が俺の背中を押してくれるから強くなれる。周囲が頑張っているから俺も頑張らないとと思う。」


 そのままラーファルトは話続けていた。


「俺.....僕は支えられてばかりですから.....」


 その言葉と共に私は眠りについた。



 ーーー



 きつい.....やめたい.....


「腹筋終わったか?じゃあ、次!剣を持って素振り1000回!」


 ジェットが立て続けに鍛錬の内容を語る。


 きつい.....やめたい.....


 ネガティブな言葉が頭を何度もよぎる。


 でも、やめない。


「はい.....!!」


 隣からまたも元気な返事が聞こえてくる。


 記憶を無くした彼を.....ラーファルトを救いたい。


 私の力はちっぽけなものだ。


 私が何を変えられるだろうか。


 王族という肩書き。


 力不足の私が旅に着いて行っている理由はそれだけだ。


「必ず.....助ける.....」


 誰にも聞こえないような小さな声でそう呟く。


 必ずラーファルトの記憶を取り戻す。


 ラーファルトのことが好きだ。


 ラーファルトに救われた。


 ラーファルトが救ってくれた。


 そんなラーファルトの為ならなんだってしてあげたい。


「1000…..!!はぁ.....はぁ.....!!」


 1000回の素振りが終わり私は倒れ込んだ。


 だが、休みは与えられない。


「次は俺と模擬戦だ。ミルからやるぞ。その間、ラーファルトは素振りを続けてろ。」


「はい.....!!」


 ブン.....ブン.....!!


 空気を切り裂く音を立ててラーファルトが剣を振るう。



 確かに.....


「確かに.....ラーファルトの言う通りだ。」


 周りのお陰で強くなれる。


 頑張れる。


 ラーファルトが頑張っているから。


 だから私も頑張れる。


 必ず救う。


 私が強くなって......!!


 5メートル先に立つジェットを真っ直ぐ見つめる。


「よろしくお願いします。」


 そう挨拶して模擬戦を始めた。

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