第60話:記憶
「はぁ、はぁ、はぁ.....」
もう、体が全く動かない.....
魔力も殆ど残っていない.....
こいつら、なんなんだよ.....!!
強すぎるだろ.....!!
これが世界二位の種族か。
「思ったより手こずったな。」
そう言ってルーナが近付いて来た。
ここ、までなのか.....!!
いや、まだ魔力は少し.....ほんの少しだが、残っている。
まだ、戦え.....!!
死ぬわけにはいかないんだ.....!!
始めに挑発として飛ばしたウォーターガン.....
それには俺の魔力がまだこもっている。
「魔力探知で.....!!」
再びその魔術は動き出す.....!!
「しつこいわね。」
「調停の技」
くそ.....!!
止められる.....!!
やめろ.....!!止めるな.....!!
当てろ.....!!
止め.....られ.....ない.....?
「ライオ!魔術を止めて!」
「ああ、任せろ。」
ズドオン.....!!
ライオと呼ばれたそのミクロスは素手で魔術を受けてみせた。
おいおい、マジかよ.....
止められた.....止められたが....
ルーナは結局何をしたんだ?
調停の技とか言ってたが.....
「技が発動しなかった。」
「.....え?」
「一方的に攻撃をして悪かった。お前たちには世界の真実とこの森について教えよう。」
世界の真実.....??
この森.....??
どうして.....
その意味を聞こうとした。
だが、ラーファルトの意識はそこまでであった。
ーーー
「怪我人は村へ運んでくれ。」
「この者たちは間違えても殺すな。」
「これが人族ってやつかい。」
「誰か治療を.....」
「我々と戦ってこれだけの者を倒すとは強きものじゃ......」
声が聞こえる。
遠いところからだ。
苦しい。
体中が痛い。
暑い。
治癒魔術をかけたい。
体が動かない。
魔術を使えない。
後ろから光に照らされた。
誰かがいる。
何かがいる。
何だ?
何者かの手が肩と顔を触る。
悪魔のような手だ。
嫌な空気感がする。
呪いが蔓延っている気配がする。
気持ち悪い。
鼓動と動悸が激しくなる。
息遣いが荒くなる。
ーーー
「——は.....!!」
飛び起きたのは知らない場所だった。
「はぁ、はぁ.....」
息遣いが荒くなっていた。
「俺は.....」
「起きたのか。では、立ってこっちに来い。」
一人の魔族がやって来て俺を連れて行った。
有無を言わさずだ。
「あの、ここは?」
「ミクロス族の村だ。ここでは100を超える族の者が暮らしている。」
村の様子は面白いものだった。
自然に囲まれた中、子供も大人も過ごしていた。
自然と共存をしているようだ。
「いいところだろう。森の外の情報は手に入りにくいが何も不便はない。」
確かにその通りのようだ。
必要なものがあれば魔術で生成している。
自分たちで手に入れている。
何も不便はない。
自分たちで自給自足の生活を送っている。
ただただいい生活だ。
「いい村ですね。」
「.....俺たちのことを警戒しないのか?」
警戒?
「なんで、そんなことをする必要が?」
「いや、いい。着いたぞ。」
それは村でも一際目立つ大きな建物だった。
「ここは?」
「村長の家だ。入れ。」
言われるがまま、中へ入る。
大勢の人が集まっていた。
魔族の者が五人。うち一人はかなり歳を取っている。
恐らくそれが村長なのだろう。
他に人族の者が二人。
そして妖精族の者の一人だ。
「座りなさい。今から調停者しか知らない世界の真実を話しましょう。」
と、言われ俺は座ろうして歩み寄る。
だが、それとは正反対に座っていた人族一人の少女が立って俺の方に走り寄って来た。
「ラーファルト!」
そう言って俺に抱きつく。
「おい、ミル。先に早く座れ。」
もう一人の人族はそうして注意する。
それもそうだ。早く座らないと.....
だけど.....
「あの、失礼ですが、どちら様ですか?」




