第53話:呪い
警戒して進んではいるが.....
「敵は見当たらないですね。」
「ああ、まず森との距離が正確ではないからな。本当に攻撃を受けているのかは分からない。」
勘違いの可能性も捨て切れないな.....
「早く森に着きたいんだけど!」
確かに森には早く着きたいけど.....ミルの場合理由が違いそうだよな.....
「ああ、森を満喫したい.....」
「森に満喫する場所なんてありませんよ。」
「なら作ればいいのよ!」
そんなこと出来るのか.....??
ま、細かいことは置いておくか。
早く進みたいのは本当だしな。
「じゃあ、先を急ぎますよ。」
前を向いてそう話す。
「.....」
返事がない。
「.....ミル?」
そこにミルが倒れていた。
「ミル!!??どうしたんだ!?ミル!」
息は.....ある。
「ジェット!」
同じくジェットも倒れていた。
「何が起こっているんだ.....!!」
『呪いだと考えられます。』
呪い.....!!
どこからだ.....なぜ俺は倒れていない.....!!
『膨大な魔力が呪いを阻害したと考えられます。呪いの発生源については現在分析中です。なお、戦闘サポートモードへ移行しました。』
なるほど.....
発生源を潰さないといけないのか。
森に着かないことと何か関係があるのか.....??
くそっ!考えることが多い。
『呪いの発生源をおおよそ特定しました。』
早過ぎだろ!
もう俺は何も考えなくてもいいだろ!
で、どこなんだ?
『無限空間の空間と空間の境界です。』
無限空間の境界.....
どこかで聞いたことがある。
どこだ.....??
思い出せ.....
「無限空間を知っていますか?」
「.....フィックス先生.....??」
ーーー
「無限空間を知っていますか?」
「いえ、知らないです!」
「ある範囲の空間を無限に繰り返し構築する禁忌魔術です。」
「教えてくれるんですか!?」
「禁忌魔術は教えられませんし、私は使えません。」
「えー.....」
「逆なんですよ。無限空間を使う敵の倒し方です。」
「無限空間.....倒せるんですか.....??」
「ええ、それは.....」
ーーー
思い出した.....フィックス先生だ。
いつも、俺の助けになるのはやっぱりフィックス先生なのかもしれない。
それじゃ、実践といきますか.....
まずは.....
〔魔力の乱れる所を探してください。〕
昔のことだ。
完全に.....完璧に覚えている訳でもない。
でも、フィックス先生から教わったことならば思い出せる気がする。
表面的には忘れていても、心の奥底で彼の教えが染み付いている。
「.....乱れた。」
一瞬、魔力が乱れた。
ほんの一瞬だ。
数歩下がる。
もう一度魔力が乱れた。
「ここが.....境界か。」
空間の境界。魔力以外の違和感はない。
〔見つけたらそこで高威力の魔術を使いなさい。〕
ミルとジェットに攻撃が当たらないようにしてから.....
《マグウィップ!!》
〔そこで魔術を使うのは至難の業かもしれない。でも、魔力の感じられるラーフなら.....〕
ーーー
「ラーフは今何をしているんだろうな.....」
空を見上げ、その日々を懐かしむようにフィックスはまた歩き出した。
ーーー
集中しろ.....
信じろ.....フィックス先生が俺ならできると言っていた。
その言葉を疑うな。
耐え続けろ.....!!
刹那、空間が歪んだ。
世界はうねり、曲がり、最早原型を留めていない。
そして、ミミズのような魔物が見えた。
「こいつが呪いと無限空間を......」
『99%の確率でこの魔物です。』
呪いも、無限空間も作り出せる強敵.....
〔ラーフならなんでも出来ますよ。〕
フィックス先生の言葉を信じて.....
《ロックショット!》
ドゴォン!!
凄まじい轟音がした。
…..どうだ.....!!??
シュアアアアアアア!!!
うおっ!!!
弾き返してきた.....!!
一筋縄にはいかないか.....
シュアアアアアアア!!!
ミミズの魔物が液体を吐いた。
…..これは.....
『毒です。回避して下さい。』
この魔物.....本当に相当強いな。
『無限空間や呪いで大勢を殺し、喰べてきたのかもしれません。それにより超強化されている可能性があります。』
なるほど.....
つまり逆に考えればそれで殺した人数が多い.....
『実践経験が少ない魔物の可能性が高まります。』
ならば.....そこに勝機はある.....!!