第37話:大波のカリウス
《ファイアーアロウ!》
キュエエエイ.....!!
「よし.....!!」
「うおお.....!!ラーファルトすごい.....!!」
依頼としてシュトルムホークを倒した。
空に見えるすべての個体、五匹同時だ。
ふぅ.....!!
「ねぇ、私もそれやりたい!」
「ファイアーアロウのこと?」
「うん!どうやってやるの?」
「詠唱するんだよ。」
「は.....??」
…..??
いや、なんで?
ミルがこいつ何言ってんだって顔をしているのだが.....??
「詠唱するんだよ。」
「は......い......??」
…..??
もう一回言ってみたが変わらない.....
こいつ何言ってんだ顔をしている.....
「ラーファルト詠唱してないじゃん。」
ああ.....
「俺は無詠唱で出来るんだよ。普通は出来ないから気にしないで。」
「えー、ずるじゃん!」
と言ってミルはそっぽを向いてしまった。
いや、俺は悪くないぞ。
まぁ、なんにせよ魔術への興味を無くした様だ.....
まぁ、ある程度剣術もできる様だし大丈夫だろ.....
剣士の方が向いていそうだ。
「ん?いやでもミルって魔術も習ってたって.....」
「詠唱覚えるのが面倒だからあまり知らない.....い、一応習ったから少しは使えるけど.....」
つまり、詠唱なしでできると思ったってことか。
そりゃやりたくなるよな。詠唱覚えたくない派からすれば.....
『確認します。倒した魔物:シュトルムホーク五匹を転送しますか?』
転送.....??
『冒険者協会へ獲物を転送し、後に報酬を受け取ることが可能です。』
それは便利だなぁ。
こいつ優秀すぎるだろ.....
じゃあよろしく。
『了解しました。.....転送中.....転送完了。転送成功を確認しました。』
うん、やはり便利だ。
「ラーファルト早く行くわよ!」
「はいはーい!」
ミルは相変わらず機嫌が悪そうだ。
後で何かしてあげるか.....
ーーー
「はい。これどうぞ。」
「え....!!いいのっ?」
「いいよ。」
と、晩御飯を食べる。
今日のメニューは昼に狩った魔物だ。
ううう、やっぱりこの魔物不味い.....
だから言ったのに.....
「あの魔物狩ろうよ!」
「えー、でも不味そうだよ.....」
「大丈夫よ!行くわよ!」
という流れで狩ったのだが.....予想通りなもんだな.....
でもまぁ....
「おいしーい!」
とミルも言ってるしいっか.....
初めて狩りをしたときは何でも美味しく感じるものだろう。
ーーー
「.....」
「.....」
初めての本格的な野宿。
野宿は危険だ。
一人が見張りをしている間に、もう一人が睡眠をとる。
今はミルが寝始めたところだ。
「ねぇ、ラーファルト。」
「何ですか?早く寝てくださいよ。」
「は、初めての野宿でね、寝れないのよ。」
なるほど。
まぁ、確かに寝れないかもな。
「.....でもまぁ、寝ないといけませんよ。」
「わ、分かってるわよ!」
荒野に静寂が走っている。
寝やすいと思うけどなぁ.....
「ねぇ、ラーファルト.....」
「何ですか?早く寝ない....」
「わ、分かってるわよ!あ、あのさ.....」
うーん。
なんかぎこちないんだよなぁ.....
「どうしました?」
「えっと、あ、あのさ!ラーファルトって好きな人、いるの!!??」
…..??
…..ん?
好きな人.....好きな人.....ん?
「え、ええええーー....!!」
何てこときくんだ.....
「べ、べべ、別に気になるとかじゃないけど.....知っとこうかな.....って.....!!」
「いたよ。」
「い.....た.....?」
「ミル!早く寝ないといけませんよ。」
「.....ええ。」
危なかった.....
ミルに知られてはいけない。
楽しい旅を送るために.....
心配をかけないために.....
この旅をいい思い出とするために.....
この胸の痛みを我慢して進むのだ。
「う.....」
目尻に滲んだ涙を俺は拭った。
ーーー
朝か.....
霧が酷いな.....
霧.....?
「ラーファルト.....おはよう。」
「ミル。この霧、いつから出てる?」
「え?普通に太陽が昇ると同時に.....」
おかしい.....
ここは荒野だ。
雨量も少ない。
霧の発生する条件などないに等しい。
14浪した俺の知識はそこまで浅くない。
何か、引っかかる.....
異世界だからや、魔力の影響と言ってしまえばそれだけだが.....
嫌な予感がする。
「ミル。警戒体制をとって!」
『生物反応を検知しました。』
生物反応.....!!
『背後から攻撃がきます。』
背後.....!!
《タワークラフト!》
ドーン!
敵の攻撃を防いだ音が響く。
「ほう.....防ぐとは.....」
おかしい.....
何故だ魔力探知が反応しない....!!
Sari!Sari!も反応しない.....!!??
今、Sariも反応しなくなった.....
霧の影響か?
ならばやはりこの霧は人為的なもの。
こいつが作り出したことになる。
こいつ手練れだな.....
そして俺たちを攻撃をしてくるということは.....
「ピスターを倒しただけはある。」
ピスター.....あのトリックフラワーか。
つまり.....
「荒野の覇者の手のものか.....!!」
知性も持つ魔物.....
「ほう.....知っているのか.....」
「自分で名乗ってましたからね!」
まずはその姿を表して貰おう.....
《ディバシーウインド》
俺の周りの空気を発散。
全方位へ強風を起こし霧を散らす。
だが、魔力探知やSariは治らない。霧はカモフラージュで効果は残るのか......??
「ふむ.....これを散らすとはあなたは相当強い。その、もう一人のお嬢さんも、隙が少ない。」
…..こいつ喋るのが好きだな.....
だが、隙はない。
まぁ、こちらの分析の時間が作れるのはいいか.....
「だが、私には勝てない.....!!」
《ジェット.....》
早い.....!!
《パンチ!》
あっぶね.....!!ギリギリだ。
こいつ近距離物理型か.....!!??
魔物の身体能力に何かの能力で更に速度が上がってやがる.....!!
《ジェット.....》
また来る.....!!
《コールドウインド!》
《キック!》
よし、モロに攻撃を.....受けない.....いや、受ける.....!!
相手の加速の方が上手なのか.....!!
減速はすれど止まらない.....!!
「はああああ!!ガルス流奥義」
《一閃》
ミルが攻撃を放った。
が、それも容易く避ける。
確かに強い.....が、負けられない理由がこっちにもあるからな.....!!
「まだまだ行くぞ.....!!」
また来る.....!!
《ジェット.....!!》
早い.....!!だから.....!!
《ブロードフレイム!》
「パン....!!うおっ!」
しゅううう.....
と音を立てて炎が消える。
ということは.....
「お前、水の圧力を使ってるのか。」
敵がニヤッと笑う。
「気が付いたか.....大体、バレずに終わるんだがな.....少々、チビだからと甘くみていた様だ。」
「この荒野の覇者の右腕、大波のカリウス、本気を出そう.....」
《召喚!!不死大波の軍》
刹那、周囲に魔法陣が出現する。
辺り一帯から骸骨の軍勢が現れた。




