第23話:ツンデレ
「いてててて.....」
起きてから中級、上級の治癒魔術を自身に掛け直したとはいえ、まだ、体中が痛い。
それに、まだ熱もある。
こればかりはどうしようもない。
はぁ。きつい.....
「とりあえず地上に出ますか。」
《ロード》
俺は地面に対して斜めに穴を掘っていく。
5分ほどで地上まで到達した。
安全のため、俺が始めに顔を出す。
そこは何もない更地だった。
ひとまず、安全そうには見えるが.....
「何もないですが、とりあえず安全です。外に出ましょう。」
何も無いということはむしろ生存に困難なことだ。
街の郊外が一番楽だったんだけどなぁ.....
「ら、ラーファルトさん.....」
これからどうしようかと考えているとミルから話しかけられた。
「年上なのですから呼び捨てで構いませんよ。ミルさんどうされましたか?」
「じゃ、じゃあラーファルト!は、はい!」
手を差し出された。
「ん?手を怪我したのですか?」
手の平には何も乗っていない。
「ち、違うわよ!!!て、手を繋ぃ.....」
ああ、手を繋いで欲しいのか。まあ、俺も死にかけていたし、怖かったのだろう。
ほい。
「あ、わわわ.....」
「ん?」
「て、手を繋いでなんてあげないわよおおおおお!!!」
ポカン!
「ふがぁっ!」
何故か殴られた。いててててて.....
「な、何をするんですか!?ミルさん!痛いです!」
「し、仕方ないわね。手を繋いであげるわ!あと私のことも呼び捨てで呼んでいいわよ!」
…..話が全く噛み合わない.....また手が差し出されている。
恐る恐る手をもう一度握った。
「ヒィぃ〜.....フゥゥ。」
変な深呼吸(?)をしていたが、今度は殴られなかった。
これがツンデレか.....初めて経験した.....
ミルと手を繋いで地上に出た。
荒れ果てた土地だ。
まずは、状況の整理ってところからかな。
「ここがどこか分かる人はいますか?」
誰も手を挙げない。見知らぬ土地で迷子ってことだ。
とりあえず、今いる場所を考えるか。
俺は、5歳の誕生日にミアからもらった世界地図を広げた。
この世界地図は魔力を流すことで使うことができる。
それ以外の時はただの紙だ。
そのおかげで捕まっても没収されなかった。
さて、見ての通りこの世界は6つの大陸から成る。
まず、大大陸。一番大きな大陸だ。
ルインド王国はこの大陸の大部分で栄え、この世界で一番の大国となった。
そのルインド王国と戦争を始めたのが大大陸の下の方に位置するジャック王国である。
次に中央大陸。
名前の通り真ん中に位置している。
一つの国のみで統治されている為、最も平和だ。
その逆で、最も危険なのが魔大陸。
多くの魔族が住み、何度も戦争が起こった。
魔物の発生率や危険度も高い。
そんな魔大陸の右上に位置するのがムーン大陸。
この大陸には強い人が多く住んでいるらしい。
もし、魔大陸で大きな戦いが起こった時に対処するためだそうだ。
絶対戦いたくない.....
そして、魔大陸の次に危険なのがその下の鬼大陸。
自然環境が過酷なのだという。
最後に未開の地。
数多の冒険者が調査へ行ったそうだが、一組も帰って来ないのだという。
果たして、どんな場所なのだろうか.....
絶対行きたく無い.....
と、地図を一通り見終えた所で、俺たちのいる場所は.....
えーと.....
えーーっと.....
えっとぉぉぉ......
わかんないよなぁ.....
現在地が分からないと地図って使えないもんなぁ.....
「行き先が決まりませんね。」
恐らく、ここはジャック王国の領地だ。
戦線になっていないため、そう考えられる。
では、ルインド王国内へ戻るには北へ進まなければならない。
だが、単純に北へ進むと食糧不足などの問題が発生してしまう。
街の方向へ向かう必要がある。
たが、街へ着いても食料を買う余裕はあるのだろうか?
やはり自主調達する必要があるのか?
サバイバル生活は嫌だなぁ.....
もう一つ手はあるがそれは.....それは最後の手段か。
その時、一人の獣族が口を開いた。
「あっちの方角から街の匂いがするにゃ。」
そう言って東を指差す。
これが獣族の鼻か。どれぐらいの距離まで臭うことが出来るのだろうか。
「ですが、街へ行っても食料が調達できるかは分からないんですよねぇ.....」
ルインド王国とジャック王国は共通通貨のため買い物をする分には問題無い。
だが、全員分となると足りないだろう。
「いいんじゃねぇか?」
後ろから聞いていたルイスが口を開いた。
「とりあえず、現在地の確認が最優先事項だろう?そこでこれからのことは決めればいい。」
それもそうか。
「では、街の方角へ向かいましょう。」
こうして避難隊一行は東へ向かい始めた。
今もミアと俺は手を繋いでいますねぇ.....
殴られませんように.....