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14浪生転生記~異世界にいる今、自由を求める~  作者: フィッシュスター
第三章:新たな歩みへ

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第22話:生きて

 ミル・ルインド視点


「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。」

 凄い熱だ。出血が多いからだろうか。



ーーー



 今、私達、避難隊は地面の下にいる。

 早く地上に出たい所だが、そう簡単にはいかなかった。


 地面の下に通路を作ったラーファルト・エレニアという護衛の人。


 彼は凄い魔術師だ。


 無詠唱魔術を使えて、こんな大きな通路を作れる魔力量で、おじいちゃんからも凄い人だと言われていた。


 そして、何より私の命を救ってくれた。


 捕まった私のために護衛という立場の自分の危険を鑑みずに救ったのだ。


 私は彼に、避難民の皆に謝りたかった。


 でも彼は、私に謝罪を要求するどころか虫の居所を良くしてくれた。


 だから、私は甘えたのかもしれない。



 彼が追っ手の足止めをすると聞いたとき大丈夫だと思った。


 彼ならきっと、食い止めてくれると思った。


 だけど、脱走の開始から十分、三十分、一時間が経っても私達に彼は追い付いてこなかった。


 それでも私はその現実から目を背けた。


 大丈夫だと思うようにした。


 今思えば怖かったのかもしれない。


 追っ手ではなく、ラーファルト・エレニアがもし死んでいたらということが怖かったのかもしれない。



 だから、ある人が

「護衛の人が遅いから様子を見てくる。」

 と言って数人で引き返しても私は一緒に行きたいと言えなかった。



 しばらく歩くと行き止まりにぶつかった。


 仕方ないからその場で待機だ。



 随分と長い時間が経った。


 ときおり、不安を感じることさえあった。


 嫌な予感がした。


 でも、それを考えても仕方がない。明るくこれからのことを考えようとした。



 だが、次の瞬間嫌な予感が的中してしまった。


「おいっ!大変だ!」

 引き返した数人が息を切らしながら走ってきた。



 腕の中には傷だらけのラーファルトがいた。


「う、うそっ。だって、その人は。」

 自然とそんな言葉が漏れた。


「ち、治癒魔術の使える人は!?」

 私の後ろにいた人がそう、声をあげる。


 ち、治癒魔術。す、少しなら使える。昔、父さんに習った。


 でも、他に人がいないの?私がやらないといけないの?


 そう思って回りを見渡すが皆、俯いていた。



 私がやるしかない。


 やらなければこの人が。


 命の恩人が死んでしまうのだ。


「あ、あの。少しなら。」


「ほ、本当か!?」

 数名の大人が駆け寄ってくる。


 ラーファルト・エレニアが私の前に寝かせられた。



 私は深呼吸をする。


 彼が私にしてくれたように、今度は私が彼を助けるのだ。


 ボロボロになりながらも私達のために戦ってくれた彼を、私は助けなければならない。



 私の手には人の命という重荷がのっているのだ。


 責任を全うしろ。ミア・ルインドの名にかけて!


「傷つき、歩もうとするかのものへ、その助けなる一歩を踏み出させん!」


 《ハートヒール!》


 初級治癒魔術。その力は微量かもしれない。


 それでも.....

「傷つき、歩もうとするかのものへ、その助けなる一歩を踏み出させん!」


 《ハートヒール!》



 貴方を救おうと、魔力が底をつきるまで何度も技をかけた。


 貴方に生きてほしいから。



 お願い.....


 戻ってきて.........



ーーー



 ラーファルト視点


「サナ?」

 目を開けるとそこにサナがいた。


「あれ?俺は何をしていたんだっけ?」

 そう言った俺に彼女は太陽のような眩しい笑顔を見せた。


「ふふふ。忘れたの?私達は再開したんだよ。」

「そうか。二年ぶりの再開か。」

 久しぶりに彼女の声を聞いた気がする。


「ねえ、ラーフ。」

 どうしたの?


「約束を.....」

 そう言い始めた彼女に俺は一歩近寄る。


「行くな。ラーファルト。」

 ふいに、後ろから腕を捕まれた。



 後ろを見て姿を確認する。


 何人もの人がいた。



 この人どこかで.....と思う顔も知らない顔も混じっている。


 ただ一人、分かった人がいた。



 サナ・ラスファントだ。


 ただ、俺の知っているサナと年齢が違う。



 だけど、こっちにサナがいるなら。


 後ろの.....


 ウォォォォォォ


 物凄い雄叫びが聞こえた。


 何か得体の知れないものがいる。


 すると、俺の腕を掴んだ男性が前に出た。


「ラーファルトお前はまだまだ色々経験する。考えも変わる。絶望も幸福も知る。だが、根本を曲げるな。自由を求めろ。答えが分かるかは分からない。だが、進め。生きろ。その答えを知りたいのならば。」


 そう伝えた男性は微笑み、何かを呟く。


 視界が黒く染まっていった。


 ウォォォォォォ!!!

 何かの雄叫びも聞こえる。


「俺もお前もいずれたどり着く。」



「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!はぁ。はぁ。」


 夢?最後に言葉が聞こえた。


 「俺もお前もいずれたどり着く。」


 どういう意味だ?


 それとも意味なんてないのだろうか。


ふと、横を見ると子供がいた。

「あ、う、ああ、うう。うわぁぁん。」

 え?えーと。この子は.....


 ミア・ルインドだ。


 王族の子ども。ファルゴの孫。


「あ、えっと。大丈夫ですか?」

 とりあえずそう聞くしか無いだろう。


「だ、だって、心配だったからぁぁ。熱も高くてうなされてて。きつそうで、ほんとに心配したんだからぁぁ。うわぁぁぁぁぁぁぁんん。」

 この子は俺のことを看病してくれていたのか。


「その子、君のために頑張ってたんだぞ。」

 一人の男性が俺に話しかけてきた。


「あの、あなたは.....」

「ああ、俺はルイス。」

「あの、ありが......」

「お礼は俺に言うな。その子に言いな。」

 俺の感謝の言葉を間髪いれずに遮ってそう言った。


「その子はね治癒魔術を魔力が底をつきるまで君に使ってくれていたぜ。そのあともしっかり看病していてなぁ。俺たちのしたことなんてこの子に比べればちっぽけなことさ。」


「うう、ひぐっ。ううう。」

 ミアはまだ泣いていた。


 俺はその子の目を正面から見る。


 まだ幼さの残る子どもだ。


 こんな子が俺を助けてくれたのだ。


 さぞ、重荷だっただろう。辛かっただろう。


 だから今は精一杯の。


「ありがとうございました。貴方のお陰で私は今、生きています。」

「ぐすっ。はいっ!」


 ミア・ルインド。


 彼女は涙を弾けさせながら屈託のない笑顔で返事をした。


 その笑顔がなぜか夢で見たサナの笑顔と重なっていた。

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