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14浪生転生記~異世界にいる今、自由を求める~  作者: フィッシュスター
第三章:新たな歩みへ

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第21話:ぶつかる

「あ、あのどうでしたか?」

 バースとの話が終わり、牢屋に戻ると何人もの人からそう聞かれた。

「うーん。ほとんど何もなかったですよ。」


 脱獄の予定は明日だ。


 明日、俺が敵の足止めをしている間に床に開けた穴から逃げてもらう。


 その伝言を回すように指示した。


 夜には看守にバレないように床を壊さなければならない。


 こういう時に無詠唱魔術は便利だ。

 詠唱で気づかれることがない。


 本当は牢屋を破って正面から逃げたかったが、百人以上でその行動をすると流石に守りきれない。


 これが最善手だ。



「岩を形成する女神よ、我が前にその力を見せ、さらに敵の脅威なる姿を顕現し我が戦場に勝利の印を刻みたまえ」


 《ロックショット!》



 《ウォーターガン!》

 敵のロックショットの軌道をウォーターガンでそらす。


 これはファルゴから学んだことだ。


 多くのことを教えてもらった。


 その力をここで出し切るんだ。


「うおおおおおおお!!」

 相変わらず剣士は突っ込んでくる。


 こういう剣士が一番厄介だ。


 バースも静かに戦局を見計らっている。


「いでよ。炎。その燃ゆる身を我に捧げ、我を勝利へと導きたまえ」

「水の精霊の形成する大河よ。その集積たる水の塊の一部をここに顕現し、我に大いなる力を与えん。さあ、その力を開放せよ。」

 魔術師は詠唱をしている。


 同時に来る敵の猛攻を防ぐためにはどうするか。


 考えろ。頭を回せ。相手の思考を上回るのだ。


 《ファイアーボム!》

 《ライクオーシャン!》

「うおおおおおおおおおおお!!!!」

「.....」


 勝ち筋を探せ。


 水は床の穴に入れてはいけない。窒息死する。


 そのための手段は.....


「土技巧級魔術だ.....」


 《ビルド》


 簡単な構造の物を土で建築することのできる魔術。


「くっ!」

 建築物ですべての攻撃を防ごうと思ったが「ライクオーシャン」の威力が思ったより強い。


 ならば......

 《ソイルハード!》

 技巧級魔術の強度を更にあげる!


 よし、これでしばらくは安心だがいずれ破られる。



「今度は俺が攻撃するか。」


 俺は「ビルド」を解いた。同時に迫ってくる水。


 対処は簡単だ。


 奇しくも、条件が整ってしまった。そういえば、ファルゴと始めて会った時もそうだった。


 これを使って敵の数を減らす。


 《アイスフィールディング!》

 迫ってくる水を凍らせる。


 霧が発生した。


 水と火の魔術を同時に使い、そこにより低温の魔術を発動する。そうすることで霧を発生させることができる。


 仕組みは、地球での自然現象と同じだ。十四回浪人して勉強していた俺には容易く理解できる。


「霧!?」

「前が見えないぞ!」

 相手が混乱している。今が攻めるチャンスだ。


 俺のアドバンテージの一つ。魔力探知を存分に発揮できる環境は整った。


「広がる空気よ、我が魔力の支配下で暴れ狂え!」


 この詠唱は初級風魔術のウインド!?


 霧を散らされる前にこちらが攻撃しなければ.....!


 《ムーブドウインド》

 魔術を放とうとした兵士の前まで飛んでいく。


「ウイン.....うお!」

 放たせない!俺は兵士を押し倒す。


 だが、敵の数は多い。すぐにそこには手や剣が伸びてくる。


 《ムーブドウインド》

 攻撃を受けないように魔術でかわす。


「広がる空気よ、我が魔力の支配下で暴れ狂え!」

 何人もの兵士が同時に詠唱をし始めた。


 霧が晴れてしまう。この人数は止められない。


 では、その前にしておくべきことは.....相性の悪い剣士を少しでも減らしておくことだ。


 《ムーブドウインド》


「くそっ!どこにいるんだ?出てこい!」

「言われなくても!」

「———!!??」


 《ロックショット!》

 命は奪わない。だが、気絶させたり動けないようにしたりする。


「まずは一人!」

「てめえ!」

 近くにいた他の剣士が斬りかかってきた。


 《ムーブドウインド》

 魔術で回避するのも慣れたものだ。


 《ロックショット!》

 今度は二つ同時に放ち、気絶させる。


 無論、相手は霧の中での攻撃なので気付くのは直前だ。


 だが.....


 キィン!

 ゴン!


 二種類の音がほぼ同時にした。


 一つは人に当たった音。

 もう一つははじかれた音だ。


「迎撃できる技術は持ち合わせているという事かバース!」

「ああ、そうだなあ!それぐらいはできるさ。今度はこっちの番だ。」


 ——————!!??


 剣が飛んできた。


「ムーブド.......ぐっ.......」

 剣が俺の足に刺さった。


 痛い......だが、すぐに回復をすれば.....


「ハート......」


 《ウインド》

 敵がウインドを放った。


 まずい......!!霧が晴れてしまった。


 最悪のタイミングだ。


「怪我をしているぞ!一斉に攻撃だ!!!」

 バースがそう叫ふ。



 《ムーブドウインド!》

 一人の剣士の太刀をとりあえず避ける。


 だが、霧の中と違い姿が見えているのでそのまま攻撃を続けてくる。


 回復の隙が作れない.....!!!


「おりゃああああああああ!!!!」

 ある兵士の剣が俺の肩を捉えた。


「ぐああああ!!」

 肩から血が飛び出す。身動きが更に取りにくくなった。


 俺はその場に尻もちを付いた。


 《ファイアーボム!》

 《マッドボール!》

 《ウォーターガン!》

 《ロックショット!》


 《一閃》

 《無双剣》

 《幻剣》


 魔術師も剣士も怪我をした俺へ向けて一斉に攻撃をする。



 ——それが”俺の作戦”だとも知らずに。


 《タワークラフト!》《ソイルハード》


「な!?ぐがあっ!」


 ドシャン!!


 剣士は天井と俺の魔術の間に挟む。そして敵の魔術はタワーの根本部分でガードした。


 ソイルハードを発動しておいてよかった。固い土にしたことで完全に防ぐことができたのだ。


 さて、回復を.........!!??


「うおおおおお!りゃあああああ!!!」

 俺は咄嗟にしゃがみながら魔術を発動する。


 《ドレイナー!》


 剣筋に水魔術を這わせ水切りのようにカウンターをした。


「ちっ!」

 だが、あまりダメージはないようだ。


 俺に攻撃してきた剣士。バースだ。


 やはり彼は他の剣士とは格が違う。


 先に回復をしなければ......

「うおりゃあああああ!!!」


 《ムーブドウインド》


 だめだ。そんな隙はやはりない。他の奴と同じように考えてはだめだ。集中しなければ。


 次の瞬間俺の魔力探知が反応した。

 《ロックショット!》


「なっ!」

 敵のロックショットが敵の魔術師全員から飛んできた。


 防御を.....


 いや、防御では勝てない.....!反撃だ。

 《コールドウインド!》


 風でロックショットを跳ね返す。


「うお!危ない!」

「うわああああ!」

「いだあああ!」


 反撃は成功したようだ。次はバースを.....


「なっ!!!」

 踏み込んだバースが迫ってきていた。攻撃を食らう!


 俺は後ろに飛びのいて回避を.....


 することが出来なかった。


 足を怪我していたからだ。力が入らなかった。


「俺の勝ちだ。一人も逃がしはしない。」

 バースがそういった。



 一人も逃がさない?


 やれるものならならやって見ろ。


 俺を倒してやって見せろ。


 俺は十四年間浪人に耐え続けた。周囲の失笑に耐え続けた。


 何年間、叶わないことを知りながら意志を持って来た。


 今の俺は叶えられる。


 一人残らず救うということを。俺は全員を逃がす。


 不可能を可能にするわけではない。


 可能なことを当然のようにこなすのだ。


 全員救うという確固たる意志をもって。


「やれるものならやって見ろ!バース!!」


 バースは不敵に笑っている。

「ガルス流奥義!」


 《一閃》


 回避は.....間に合わない。ならば防御を固める。


 《マッドシールド!》《ソイルハード!》

 土で作った盾を最大限固くして防御した。


 だが、彼の剣は重い。速さはない。だが重いのだ。


「くっ!!うがっ.....」

 脇腹の何センチかを斬られた。それでも内臓はやられていない!


「あと少しか......!!!」


 《マッドスピアー!》

 呟くバースに対し、魔術を放つ。盾から伸ばした槍。完全に不意打ちだ。


 しかし、バースは余裕の笑みを浮かべた。勝ちを確信した顔だ。


「この瞬間を待っていた。アリス流終手!」


 アリス流.....!!??カウンターか!


 《反り返し》


 彼の剣は槍の軌道を変えた流れのまま俺の頭の真上から振り降ろされた。




 バース。


この瞬間を待っていたのは”俺の方だ”


 《ウォーターソード》


「アリス流奇手」


 《封剣》


 こんな時のために剣術を宮廷で学んでおいたのだ。


 確実に剣術の腕はバースが上。


 だが、魔術しか使えないと思い込ませることでこの攻撃は刺さる。


 尚且つ、使う剣は魔術で生成するのだ。



 俺は「ウォーターソード」で彼の小手を叩き、剣を明後日の方向へ飛ばした。


 彼は、丸腰で胴ががら空きだ。


「剣術も使えるのかよ。ラーファルト・エレニア。」

 バースが笑いながらそういった。


「お前に敬意を称する。」


 バン!!!


 剣がバースの胴を捉えた。彼は気絶した。


「はあ。はあ。はあ。よし.....」


 戦いは終わった。


 そう思った瞬間だった。



「ば、バースさんの敵は俺が!!うおおおおおおお!」

 柱と天井の間に挟まっている剣士が剣を投げてきた。


 魔術師も詠唱をしている。


 回復が挟めない......出血が多すぎる。


 もう、十分時間は稼いだだろう。


 早く撤退を......


 《ロックショット!》


「ぐがあああああ!!!」

 放たれた魔術が俺の肩に突き刺さる。


 早く、床の穴の中に.....


「行かせねえぞ......!!!」


 とうとう、天井と俺の魔術で挟まれていた剣士が一人、二人とその拘束を解いてきた。


 怪我で拘束が弱まってしまったのだろうか。


「この穴に入らなければお前は撤退できない!」


 穴の前には剣士が立ちふさがっている。

 俺の後ろには魔術師が複数人いる。


 その時俺は逃げる方法を思いついた。

「ふ。ふははははは。」

「何がおかしい。」

「いや、バースに伝言を頼む。次会った時はもっと話そうと。」

 俺の言葉に疑問を浮かべるものもいたが。俺は無視する。


「逃げるならこうすれば良かったんだ。」

「———!?な、何を!!??」


 《ロード!》

 俺は自分の下の地面を魔術で掘る。


「じゃあな。」

 掘った穴に俺は入りながらそういった。


 《ムーブドウインド!》

 二つの魔術を同時に使い、移動と掘る作業を同時に行うのだ。怪我で歩くのはきつい。


「ま、待て!!!」

 兵士が中に入ろうとしてくる。


「やめた方がいいですよ。」


 そういって俺はある魔術を解除する。

 剣士を天井との間に挟むために作ったタワーだ。


「うわああ!!!」

 崩れたタワーは穴を塞いだ!!!!


 床に開けていた穴の通路とも合流をする。


 《ロックショット!》

 十回ほど放ち、入口方向を完全に通れなくする。これで追跡不可能だ。


 よし、あとは進んで合流を.....あれ?


 力が..........


 治癒魔術を.........か、かけないと........




 “バタッ.............”



次回.....倒れたラーフは.....!!??

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